ヴィレッジのレビュー・感想・評価
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楽しい映画を見せてくれ!
藤井道人は今日本で最も技量のある監督であろう。もし私がプロデューサーでどうしてもやりたくてかつヒットさせたい企画を持っていたら間違いなく彼を選ぶ。薪能とシンクロしたスタイリッシュで音もグッとくるMV的プロローグの見事さ、横浜流星と一ノ瀬ワタルの壮絶な長回しバトルシーンの凄さ(このシーンだけはどうしてももう一度じっくり見たい)そして役者のリアルを引き出す演出力よ、あたかも能面と見まがう横浜流星の朝日に照らされたその目その表情を見て震えるのだ。センスはもちろんだが自分でなんでもやるような岩井俊二的監督とも一線を画しおそらくあくまで職業監督として撮影部から照明美術演出部をチームでまとめ上げるコミュニケーション能力に長けているのだろう。観ながら数年前の「デイアンドナイト」をずっと想起していた。モチーフや設定、メインテーマもかなり似ていてあの映画をブラッシュアップしたかのような作品なのだが‥いかんせん脚本がというかストーリーにのめりこむことができない。ずっと一歩引いてスクリーンに映し出されている「映画」として鑑賞してしまった。もっと楽しい映画を見せてくれよと切に願う。
出るべき田舎。
監督のオリジナル脚本なのね、凄い凄い。 初めホラー風味かな?と思ったけど実はもっと怖い田舎の問題山積み。狭い地域特有の排他的で自浄作用の無い、悲しい無限ループが横溝正史的で好みの話だった。 辛い日々が夢なのか? 幸せな瞬間が夢なのか? 片付いたのか? また繰り返すのか? かなり重めですが流星、黒木ががっつり魅せてくれます。黒木の良さは置いといて、流星くんはなかなかおもろい役柄、仕事積極的にこなしていて好感持っている。 今回は少し役に振り回された感があるが好演してるし先が楽しみな役者である事は変わりなし。 もちろん役者陣全員素晴らしかったが、一ノ瀬ワタルと木の花が何気に気になった。 引き絵の山村のゴミ処理施設の合成は怖い感、異物感出てたけどちょっとやりすぎ感あり。
横浜流星さんの演技に圧倒される一級のサスペンスドラマ
舞台となる霞門村(架空の村です)の景色や能面を着けた大勢の人々が松明を持って橋を渡るシーンなど、ほとんどが京都で撮影されたという幻想的・神秘的な映像美に惚れ惚れします 主人公 優を演じる横浜流星さんの演技が素晴らしかった、辛く暗い過去とダメダメな母親を背負い鬱屈した日々に押し潰されそうになっている危うい青年を見事に演じています 主人公の幼馴染み 三咲を演じる黒木華さんもまた、真っ直ぐで健気な女性を見事に演じており、とてもよかったです 希望に満ちた生活に負け、故郷へ出戻った三咲は人が背負う心の痛みを理解でき、優を心から支え・救おうとします 古い伝統を持った村を存続させるために迷走する人々、美しい村と裏腹に彼らが作り上げた闇の世界はその闇から産み落とされた運命によって淘汰されていく、 という深淵なストーリー展開が重厚で見事な映像と共に描かれ、とても見応えがありました
能いる?
霞門村という田舎の集落のゴミ処分場と村で暮らす村から出られない男の話。 パチ〇カスの母親の借金返済の為、全てを受け入れ汚れたゴミ処分場で働く主人公達の前に、東京に出ていた幼馴染みの女性が帰って来て巻き起こっていくストーリー。 家に灯油を撒いて火をつける男に始まって、ぐっずぐずな母親と暮らし陰口をたたかれる主人公。 閉塞感と隠謀というか掃き溜め感MAXな状況はとても良いけれど、犯罪者の息子って突然言われ、まあオープニングの放火男の絡みは想像つくけれど、終盤に差し掛かるまで何故か過去の父親の話しは明確に示されず。 彼女の家でのゴタゴタも想像着くのに、わざわざ時系列をいじって実は…いや普通にみせてもっとわかりやすく落とせば良いのに。 それで結局何が言いたいのかという部分が良く解らず、しかもエンドロール後の映像のリアクションで余計に???そういえば彼女も放置ですか? やるせなさや悲しさは良かったけれど、それだけという感じだった。
一ノ瀬ワタル劇場
横浜流星と黒木華お目当てで公開初日に鑑賞しました。
藤井道人監督&脚本作品。
豪華キャストです。
しかし、脚本が青いというか、頭でっかちで、ず~っと暗いトンネルを進むような話で疲れました。
薪能が伝統芸能の村の夏祭りは大勢の村人が列をなして日が暮れてから同じ能面を着け、たいまつを手に参道を登って行く村。とても気持ち悪い。
ゴミ処理場をアピールして村おこし。
いやいや、常磐ハワイアンセンターじゃあるまいし、そんなんで観光客くるんでしょうかね?
元々、ゴミを引き受ける代わりの助成金目当ての村長以下、クリカラモンモンの立派な反社が仕切るヤバい村。
片山優(横浜流星)はパチンコ依存症
で酒浸りの母親(西田尚美)のためにゴミ屋敷に住んで、昼夜ゴミ処理場で働かされている。自家用車を持っている以外は奴隷同然。父親はゴミ処理場建設の反対派で賛成派の男を殺して、自分の家にガソリンを撒いて焼身自殺したらしい。
優は犯罪者の息子ということで、村で知らないものはいない設定。
村長(古田新太)の長男でゴミ処理場で訳ありの前科者たちを支配するワルは一ノ瀬ワタルで、県警の刑事の次男役が中村獅童。
東京で社会人をしていた美咲(黒木華)が帰って来て、いきなりゴミ処理場の運営陣にコーディネーターとして収まる。なにやら、東京の会社でハラスメント責めにあって精神を病んでUターンしてきたらしいが、それほどやつれた感じもない。パワハラ全開の柄の悪い連中のなかに入って、すぐに適応していた。
片山優とは幼なじみでともに獅童の元で伝統芸能の能を学んでいた美咲(写真のみ)。
獅童は歌舞伎役者だから踊りはすんなりお手のもの。能の歌はおそらくアフレコ。
一ノ瀬ワタルも優、美咲と幼なじみの設定。
小学校の社会科見学の案内役を優にさせるプランを作成する美咲。口下手で余裕のない優ができる気がしませんでした。しかし、イケメンはすぐに評判となり、マスコミが取材に来て、テレビ番組で紹介される。トントン拍子。
美咲は茅葺き屋根裏部屋に優を招き入れ、ほどなく二人は結ばれる。
気にくわないのは一ノ瀬ワタル。
決まってます。
そのための配役。
2022年6月に他界した河村光庸プロデューサーの最後のプロデュース作品。
「宮本から君へ」のプロデューサーでもありました。
一ノ瀬ワタルが黒木華をテゴメにする図式がバレバレ。
しかも、それを自分のスマホで動画撮影するアホ。
駆けつける優。
間一髪で間に合った。
しかし、
極真カラテの使い手の横浜流星はいっさい手出しをせず、ぼこぼこにやられるのみで、ぜんぜん見せ場がありません😭
いったいなにを見せられているのやら。
医療廃棄物を引きとって夜中に一般ごみと一緒に埋める違法投棄が犯罪の設定ですが、県警が一斉現行犯逮捕のために駆けつける案件なんでしょうかね?
水質汚染はどうするの?
エンドロール後の美咲の弟が村を出て行くワンカットも中途半端な感じ。
こんな村に若い人が留まる理由が元々ないです。
黒木華はじめ、豪華なキャストでしたが、一ノ瀬ワタルと中村獅童以外はとくに出演するメリットはあったのでしょうか?と首をひねる作品でした。
肝腎の華ちゃんと流星の心が通い合う流れがとてもインスタントで、優が救われたというよりも、奴隷から広報担当に大抜擢されたから明るい表情になっただけ?みたいな。
結局、血は争えないみたいなエンディングで、能面の効果なし。
優は再生できたのでしょうか???
甚だ疑問。
美咲はひとりで服役したんですかねぇ。
藤井道人監督は単独で脚本書かないほうがいいような気がします。
怪物だ〜れだ?
こんなに救いが無くて暗いのに、スッキリしちゃっていいんだろうか。 自分がもし優くんの立場にいて、あのような状況におかれたら…? そうなんです。ほとんどすべて同じことをしていたはずです。その共感性の高さがスッキリの理由だと思います。 細かいことを言えば…例えば、あの時弟に見られていたかどうか確認したの?とか、美咲さん、あそこのシーンは、まず先にシャワーを浴びさせて、清潔な衣服に着替えさせてからの能面じゃないんですか?とか、まぁ気になるところはそれなりにあります。 それでも、全体の流れの中での優くんとしては、〝だって人間だもの、そうするしかないでしょ〟という納得感がありました。まるで相田みつをのダークサイド版でも見てるかのようでした。 そういえば… このところの予告編では、かなりの頻度で『怪物だ〜れだ?』とやってますが、この映画を見た直後だと思わず、『怪物は古田新太の村長です!』と答えたくなりました😄
ラストはどうなんだろう?
美しい集落・霞門村に暮らす片山優は、村にゴミの最終処分場が建設されることになり、その建設をめぐり反対派の父親が事件を起こし家に火をつけ焼身自殺した事により、優の人生は大きく狂っていった。母親はパチンコと酒に溺れ借金を作り、その返済のためゴミの処分場で働くことになった優は、いじめの標的となり、将来の見えない日々を過ごしていた。そんな時、幼なじみの美咲が東京から戻ったことから色々な事が変化していく、という話。
最初のトオルの事件は正当防衛で仕方なかったような気もするが、ラストの村長のは共感できなかった。
横浜流星や黒木華など出演者は素晴らしかったし、ロケ地の京都の山村部、美山などの景色は美しかった。
優が覗いた穴は
本日から公開なので早速鑑賞しました。 明らかにハッピーエンドは期待できず、重い題材ではありました。 あの、処理場で主人公が覗いた穴は、 人間の業の深さを現したのではないかと解釈してます。 日本の闇を見事に炙り出し 俳優陣の演技に唸る一作です。 作間さんもセリフは少ないものの、重要な役どころで、今後の活躍に期待です。 これだから、やっぱり邦画鑑賞は やめられないのです。
閉鎖的なムラ社会の権力構造と社会正義
本作は、気軽に鑑賞できる作品ではない。閉鎖的なムラ社会の中で苦悩する青年の再生物語を主軸とした、ヒューマンサスペンスである。ゴミの最終処分場などの今日的な問題を織り込んだ見応え十分の作品に仕上がっている。
本作の主人公は、故郷・霞門村で暮らす片山優(横浜流星)。彼は、幼い頃から村の伝統芸能である薪能に興味を持ち、能教室に通っていたが、ゴミの最終処分場建設を巡って事件が起き、村人との関係が悪化してしまう。母親の借金返済のため、優は、ゴミの最終処分場で働いていたが、日常的にイジメを受け、孤独で生きる希望を失った日々を過ごしていた。そんな状況の中で、幼馴染の美咲(黒木華)が東京から戻ってきたことにより、優の人生は大きく変化していく・・・・。
優は、優と同じ会社に就職した美咲によって覚醒していく。美咲の推薦で、優は、広報担当となり、持ち前の雄弁ぶりが開花して、TV放映を任されるまでになる。美咲とも次第に惹かれ合っていく。ムラ社会の権力構造の頂点に君臨する村長にも寵愛される。ムラ社会の権力構造の底辺から頂点に一気に上り詰めていく。
優を演じる横浜流星の表情の変化が劇的であり、劇的変化に対応した演技を巧みに熟す横浜流星に演者としての成長を感じた。もはや、彼は、アイドルではなく、演者になったと実感した。
黒木華は、どんな役柄でも熟す演技巧者振りを発揮している。故郷にバスで帰って来た時の表情に、只ならぬ気配を滲ませている。表情の演技が素晴らしい。
ムラ社会の象徴であったゴミの最終処分事業は、美咲の弟の告発で破綻していく。村長の片腕にまでなっていた優は破綻の阻止に躍起になるが、ムラ社会の権力構造の実態に気付き、自らの手でケリをつける。
エンドロール後のラストシーン。美咲の弟は故郷を去る。ムラ社会と決別する。社会正義を貫いた彼にムラ社会での居場所はなかった。
ムラ社会と社会正義。本作は、日本社会が抱える根本的課題を鋭く問題提起している。
ノイズと似てる
過疎集落に建つゴミの最終処分場で働く片山優は、親の借金の返済のために犯罪活動に身を落としていて…。 横浜流星主演作。祭りや村の風景など田舎の雰囲気を映像では魅力的に映す割に、物語は村社会のクソさに満ちた内容。想像通りの展開なのでイマイチに感じたが映像は良かった。
ずっと囚われ続ける
映画館で予告を見た時に引き込まれた。
そのときはどんな映画なのか想像ができなかった。
優を演じられた横浜流星さんが凄まじいくらいいい。
物語のどのあたりだろうか、暗くて汚れた部屋の中に枕で顔を多い、泣き出すときに【孤独】という言葉がこんなにもしっくりとくる人がいるとは。
ただただ頭の中に【孤独】という字がうかんできた。
そんな彼が幼なじみの美咲との再開から恋人となるんだけど、映画の中では時間が短いはずなのに、物語にたしかに村の流れがあるので、確実に優が人として水を得た魚のように変わっていく。
顔色、表情、声、無口な印象がなくなり、上手に次期責任者としてまとめている。
時折映画の中にある鏡を使う写し方がすごくよかった。自分が自分を見ている印象と鏡の中は写鏡のようでミステリアスに感じた。
映画の中にお能が入ってくるのも印象的でその面についてもセリフがあるのも、すごく心の中に残った。
後半に関しては特に重め。
最終的に現実におこったことなのに、あの幸せの日々は一瞬でつかの間の夢だったのかと思わせるような最後だった。
エンドロール後も少しだけ映像が流れる。
日本のどこかにひっそりとありそうな村の話、あったら怖いけれど…。
重たい
加害者に見えるあの人も、元々悪い人ではなく、環境がそうしただけ。真っ直ぐ生きたいと思っていても、生きる為に犯罪に手を染める。幸せを掴みかけた時、生きる為にしたことに引きづり戻される。詰め込み過ぎというレビューを見たが、それぞれの人生詰まってるんだから当然。全てをみせるのではなく、その余白を自分で埋めるのも、この映画の楽しみ方なのかなと。 藤井監督の作品は、ぎゅっと詰まった中の、余白を楽しむこともできる映画だと思う。 難しいなって思ったら、それはそれで正解だと思う。多くの人が観て、いろんなことを感じたらいいと思う。 私はもう一度見てみたいと思う。
この世は夢のように儚い
暗い雰囲気で、閉塞感を保ちながら物語は進んでいきます。何度か心が震える場面がありました。 優(横浜流星)の揺れる心情を何度も垣間見ることができました。 基本的には、能楽の邯鄲の夢を表現していて、この世の儚さを感じたのですが、同時に能面のように冷静に生きるのは、なかなか難しいことだと感じました。 臭い物に蓋をする等、現代社会でも起きている要素を盛り込んでいて、いろいろ考えさせられます。 優の父親の犯罪が、物語でどう絡んでくるかも注目です。 インパクトはやや薄めですが、物語の世界に浸ることができました。 エンドロール後にオマケ映像があります。
悲しいドラマ
サスペンス風なヒューマンドラマ。面白かった!! ゴミ捨て場が舞台の物語で、陰湿で暗めな映画。 横浜流星、古田新太がなんだか凄かった。 間接で『能』が入ってる。中村獅童の為に入った? あと、あいつ本当ムカついた。 色々感じる。最後ちょっと泣けた。
伝えたかったのは。
藤井監督の作品は主人公だけでなく登場人物みんなの背景が見えてくるから好きなのだが。
今作は登場人物が多すぎて。
美咲は東京で何があったのか。
龍太はどうしてここで働かなければいけなくなったのか。
光吉はどうして村を出て行ったのか。
村長・修作と弟・光吉の確執は。
丸岡と母との関係は。
父はどんなイジメ(村八分)にあって誰を殺したのか。
等々、もっと掘り下げて描いて欲しかった。逆を言えば物足りなかった。(全部描いていたら2時間には収まらないか。)
何が伝えたかったのか。ちょっと欲張りすぎたのかな。
連続ドラマにしてじっくりと描いた方が良かったのかも。いきなり観光地、いきなり人気者になってたのがちょっと。
しっかりと作られた良い作品には違いないが、何度も観たくなるような映画ではない。横浜流星はどんな役でも素晴らしい。よくこんな映画に出たな(褒めてます)。
「最後まで行く」が楽しみ。
能と人と村 これらが乖離してる
脚本の問題でしょうか? 能をいれて言いたかったことは何か? 主人公がそれと融合していたか分かりかねました。 後半は俳優陣の演技力に依存して物語をかいているが、村とは、人とは、能とは?といった点と線が結び付かず。 でも、最後は希望ありのサスペンス。そんな感想です。俳優さんはみなさんよかったです。
【”邯鄲の夢・・。”巨大なゴミ最終処分場誘致により存続している村で、村人たちが長年隠蔽してきた事。社会に居場所の無い若者達の盛衰や、村社会の旧弊的な体質や闇を描いた哀しくも恐ろしき作品。】
ー CGであろうが、山に抱かれた村の上に聳え立つ巨大なゴミ最終処分場が村人たちを見下ろしているようで、不気味である。
そして、そのゴミ最終処分場で行われてきた事は、もっと禍々しい事であった・・。-
■ゴミ最終処分場で働くユウ(横浜流星)は、ギャンブル依存症の母(西田尚美)と二人暮らし。いつも猫背で無精ひげを生やし、覇気のない空虚な生活を送っている。
冒頭、男が涙を流しながら室内にガソリンを撒き散らし、ライターを投げて炎に包まれるシーン。このシーンはラストに同様のシチュエーションで”再現”されるのである。
”負のサイクル”を描いた、作品構成の妙であろう。
◆感想
・冒頭で映し出される村で行われていた能のシーン。
演目は”羽衣”と”邯鄲”である。
ー それをじっと見ている幼き二人の男の子と、女の子。
感の良い人は、このシーンでこの後の展開が予測出来ると思う。-
・徐々に明らかになるユウの父が、ゴミ最終処分場建設の数少ない反対派で、村八分になっていた事。故に賛成派の人間を殺して、自宅に火を放った事。
ー ユウが暗い顔でゴミ最終処分場建設で働いている理由が分かる。母がギャンブル依存症になった理由も・・。-
■恐ろしいのは、村社会の中で、”殺人者の息子”と言う理由でユウが白眼視されている事である。これは、村に限った事ではなく重罪を犯した者がいる家族は、殆ど転居を余儀なくされているのが島国日本の実情なのである。
隣に誰が住んでいるのか分からない様な町に住むのも、嫌なモノだが・・。
・東京から幼馴染のミサキ(黒木華)が戻ってきた事で、ユウの表情に徐々に明るさが戻って来る。役場に勤めるミサキは、ユウをゴミ最終処分場の小学生向けのガイドに推薦する。だが、それを快く思わない村長(古田新太)の息子トオル(一ノ瀬ワタル)。トオルはヤクザともつながっており、且つミサキに恋していたのである。
ー 故に、必然の如く悲劇が起こる。
作品構成で巧いのはミサキをトオルが襲うシーンでトオルがユウを只管殴り続けている所で、シーンが変わる事である。
又、さりげなくミサキが東京に馴染めずに精神を病んでいた事も、劇中で語られるのである。-
・ユウはTVにも出演し、村には多数の観光客が訪れるようになる。ユウの姿を吃音のケイイチは”ヒーロー”として慕っているのである。
ー だが、実際には前半描かれているように、処分場には夜間、廃棄してはいけない”バイオハザード”がヤクザ(杉本哲太&トオル)により持ち込まれ、ユウたちはそれを埋めていたのである。シニカルである。そしてケイイチがある日処分場で見つけたモノとは・・。-
<ユウは、村長が自分の父にした事を知り彼の首を”お前がゴミだ!”と言って、”父と同じように”部屋に火を放つ。
そして、病の為に喋れない筈の村長の母(木野花:今作では一言も話さないが、物凄い存在感を放っている。)は炎が近づく中、”邯鄲”を謡うのである・・。
今作は、村という限られた空間の中で引き起こされる旧弊なる人間関係をベースに、村が抱えた闇や、格差を描いた作品なのである。あな、恐ろしや・・。>
一体、何が描きたかったのだろう?
題名から、日本の「村社会」の閉鎖性や排他性が描かれるのかと思ったが、そうでもない。 美しい村落の上にそびえる巨大な施設の絵柄から、ゴミ処理場でも誘致しなければ存続できない過疎地の窮状を訴え、その社会構造を批判するのかとも思ったが、それもない。 職場でのイジメや不法投棄も、それにまつわる癒着や隠蔽も、決して「田舎」特有の問題ではない。 ジャイアンが大人になったような村長の息子の失踪が、物語の大きなポイントになるが、彼がどうなったのか、どういう結末になるのかが容易に想像できてしまい、ミステリーとしてもインパクトがない。 そもそも、あんなところに、携帯と一緒に埋めるなんて、間が抜けているにもほどがあるだろう。 その一方で、いじめっ子の彼がいなくなっただけで、すべてが好転し、主人公や恋人だけでなく、村全体が幸せになったかのように描かれることにも違和感がある。だったら、最初から彼がいなかったら、何の問題も起こらない幸せな村だったのだろうか?彼だけが、諸悪の根源だったのだろうか? いかにも意味ありげに出てくる「能」も、「人生は夢の如し」という言葉も、最後まで物語に活かされず、一体何だったのだろうという疑問が残る。 主人公の罪が、その父親の罪と重なり合うラストも、親子の「業」は繰り返されるということを言いたいのであれば、まったく納得することができない。 主人公に共感も同情もすることができず、観終わった後には、後味の悪さだけが残った。
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