アルマゲドン・タイム ある日々の肖像

劇場公開日:

アルマゲドン・タイム ある日々の肖像

解説

「エヴァの告白」「アド・アストラ」のジェームズ・グレイが監督・脚本を手がけ、自身の少年時代の実体験をもとに撮りあげた人間ドラマ。

1980年、ニューヨーク。白人の中流家庭に生まれ公立学校に通う12歳の少年ポールは、PTA会長を務める教育熱心な母エスター、働き者でユーモア溢れる父アーヴィング、私立学校に通う優秀な兄テッドとともに何不自由なく暮らしていた。しかし近頃は家族に対していら立ちと居心地の悪さを感じており、良き理解者である祖父アーロンだけが心を許せる存在だ。想像力豊かで芸術に関心を持つポールは学校での集団生活にうまくなじめず、クラスの問題児である黒人生徒ジョニーは唯一の打ち解けられる友人だった。ところがある日、ポールとジョニーの些細な悪事がきっかけで、2人のその後は大きく分かれることになる。

主人公の母をアン・ハサウェイ、祖父をアンソニー・ホプキンス、父をジェレミー・ストロングが演じた。2022年・第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

2022年製作/115分/PG12/アメリカ
原題または英題:Armageddon Time
配給:パルコ
劇場公開日:2023年5月12日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第75回 カンヌ国際映画祭(2022年)

出品

コンペティション部門
出品作品 ジェームズ・グレイ
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(C)2022 Focus Features, LLC.

映画レビュー

4.5凡庸で甘ったれた子供のささやかな奮起。

2023年5月31日
PCから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
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共感した! 4件)
村山章

4.5ユダヤ系の姓と、階級意識や差別感情の複雑さをめぐって

2023年5月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

本作については当サイトの新作映画評論の枠に寄稿したが、下調べの段階で主にユダヤ系の姓などについて興味深く感じたものの、字数の都合で言及できなかったことを書き残しておきたい。補足説明として、背景を理解する一助になれば幸いだ。

評では、主人公が私立学校に転校した日に「ドイツ系移民の子で白人至上主義団体KKKに所属していたとの噂もあるフレッド(ドナルド・トランプの父親)が、ポールがユダヤ系だと気づいて見下した態度をとった」と書いたが、あのやり取りのニュアンスは日本の観客には少しわかりづらいかもしれない。名前を訊かれて答えたポールに対し、フレッドが「What kind of name is Graff?」(グラフって何だその名前は)と小馬鹿にしたように問い、さらにポールがおどおどしながら「元はグライザースタイン(Greizerstein)でした」と明かす。ちなみに本作の脚本・監督ジェームズ・グレイの祖父母の元の姓が実際にグライザースタインで、ロシアから米国に移民した際に改名したのだという。語尾に-steinが付く姓はユダヤ系に多く、有名どころではアインシュタインやバーンスタインがそう。グラフ家での祖父母を交えた食卓のシーンにも、アメリカの社会に溶け込めるように姓を変えたというやり取りあった。

序盤の公立学校で、授業態度がよくないポールと黒人生徒ジョニーに厳しく当たる白人教師の姓はターケルタウブ(Turkeltaub)。こちらは-steinほどメジャーではないが、やはりユダヤ系に多い姓のようだ。教師の姓をわざと言い間違えてふざけるジョニーに過剰に反応するのは、ターケルタウブ氏もまたユダヤ系として差別されたり名前をからかわれたりした経験があるからだろうと推測できる。だからこそ、彼の意識では下層であるはずの黒人の子から姓をいじられるのが我慢ならないのだ。

俳優業の頃には赤狩りに積極的に協力し、タカ派の政治家に転身して1980年に大統領になったレーガンが「アルマゲドン」を口にする不安な時代。その前年には、原子力発電所の重大事故として世界初のスリーマイル島原発事故がペンシルベニア州で起きており、評でも言及したザ・クラッシュの「ロンドン・コーリング」には「メルトダウンが起きそうだ」という歌詞がある。そうした時代背景に加え、移民国家アメリカの階級意識と差別感情の複雑さもまた、グレイ監督の少年期に暗く重苦しい影を投げかけたのだろう。

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高森 郁哉

0.5何じゃこの映画?

2024年6月15日
Androidアプリから投稿

見どころがどこにもない。登場人物の誰にも共感できない。アンソニー・ホプキンスおじいちゃんか黒人の友達ジョニーかなと思うけど、人物描写が薄すぎて人間としての実態が見えてこない。何を言いたいのか分からない。

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三毛猫泣太郎

4.5高潔に生きろ

2024年4月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

知的

難しい

ストレートに痛いところを突かれた気分になった。
そして突かれたままで終わる。
ゆえに後味は悪く、だからこそおろそかにできない責務を、
忘れたくとも忘れてしまえば薄情なのだから、
一生抱えて生きる仄暗さを思い起こさせる。
それは誰しも、何かしら持っていそうな十字架だ。

目に見えぬプレッシャーからどうにか逃れ、
自由になろうと、生き延びようと主人公たちはしている。
だがどれほど知恵を、勇気を絞り出そうとかなわない。
なぜなら相手は不公平が公平な家庭であり、社会だからだ。

しかしながら高潔に生きろ、と説いて去った祖父の凄味がキモか。
金や名誉、名声をつきつめるのではなく、
おそらく誰しも真っ白ではいられない、
なら汚れてからこそが生き方の勝負だと言わんばかりに。

校風に染まらずさ迷う主人公の描写で本編は締めくくられる。
この胸のすくご都合主義では終わらない潔さに感服した。

アンソニーホプキンスが主人公と言ってもいい気がするが、それは禁句なのだろう。

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N.river