クライムズ・オブ・ザ・フューチャー

劇場公開日:

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー

解説

「クラッシュ」「ビデオドローム」などを手がけた鬼才デビッド・クローネンバーグがビゴ・モーテンセン、レア・セドゥら豪華キャストを迎え、「人類の進化についての黙想」をテーマに描いた異色ドラマ。

そう遠くない未来。人工的な環境に適応するため進化し続けた人類は、その結果として生物学的構造が変容し、痛みの感覚が消え去った。体内で新たな臓器が生み出される加速進化症候群という病気を抱えたアーティストのソールは、パートナーのカプリースとともに、臓器にタトゥーを施して摘出するというショーを披露し、大きな注目と人気を集めていた。しかし、人類の誤った進化と暴走を監視する政府は、臓器登録所を設立し、ソールは政府から強い関心を持たれる存在となっていた。そんな彼のもとに、生前プラスチックを食べていたという遺体が持ち込まれる。

モーテンセンが自身の体内から臓器を生み出すアーティストのソール、セドゥがパートナーのカプリースをそれぞれ演じ、2人を監視する政府機関のティムリン役でクリステン・スチュワートが共演。2022年・第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品。

2022年製作/108分/PG12/カナダ・ギリシャ合作
原題または英題:Crimes of the Future
配給:クロックワークス、STAR CHANNEL MOVIES
劇場公開日:2023年8月18日

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(C)2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A.

映画レビュー

3.0視覚で感じるアートと痛み、クローネンバーグが観客に仕掛ける前衛的プレイ

2023年8月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 クローネンバーグ作品は「M・バタフライ」くらいしか見ていない私、いかにもシュールそうなあらすじを見てハードルの高さをMAXにして観に行ったら、意外と退屈せず話を追えたので(その意味するところを理解できたというわけではありません)、そういう意味ではちょっとホッとした。

 とはいえ、案の定の癖つよ映像。
 痛みと感染症がない状態に進化した結果、臓器摘出や人体改造のショーがアートとして流行る。プラスチックを食べる子を母が殺し、父は遺体をそのショーに提供する。性的なプレイの一環として、相手の肉体を切り刻む。
 腹部が切開されるシーンなどは、あえてなのか分からないがいかにもなCGっぽさや作り物感がありグロさが緩和されている。どちらかというと、オディールが頬に刻んだ傷をグリグリされるシーンの方がむずむずした。
 それでもグロ耐性低めの私には、変態的な世界観と子供の臓器摘出など含めてR15+でも不思議ではないくらいに思えたのだが、映倫的には「簡潔な肉体損壊の描写(映倫サイトより)」なのでPG12ということらしい。この作品を小学生が観る時、親はどういう指導・助言をするのだろう。私は指導出来る自信がないぞ。

 エイドリアンのショーに出てくる、目と口を縫い合わされて身体中耳だらけのダンサーは「ゴールデンカムイ」の江渡貝くんを思い出した(江渡貝くんは人皮コスチュームを着ているだけで自分に直接縫い付けているわけではないし、そもそも感性の源泉が違うが、アウトプットが似ていたのでちょっと笑ってしまった。すみません)。
 しょっちゅうハエの羽音がしていたのは、感染症がない世界なので清潔を保つ意識が低くなっている、ということだろうか。
 痛みがない世界と言いながらソールが何らかの痛みを感じているらしかった理由、彼をスパイにしてコープ刑事はラングを捕まえようとしていたが(子供を解剖させようとした罪で?)結局その顛末がどうなったのか、その辺はよく分からなかった。
 一番分かりやすかった要素は、ひたすら渋カッコいいヴィゴ・モーテンセンと完璧な裸体のレア・セドゥ。一方で痛そうな(設定上本人は痛くないんだけど)映像の乱れ打ち、もう飴とムチという感じである。本作の鑑賞自体がある意味その手のプレイなのかも知れない。

 テーマのひとつはやはり環境問題なのだろう。オープニングでの、廃墟のような構造物が浮かぶ海辺。ラングは自分の体を異食が可能な体に改造し、常人にとっては毒である紫のチョコバー状のものを製造して食べる。息子のブレッケンはプラスチックを消化する体で生まれる。この辺りは廃棄物による環境汚染や、マイクロプラスチックの問題を連想する。
 人々が痛みを感じなくなるという「進化」を遂げるのは、人間が環境の危機に対し頑ななほど鈍感であることの暗喩にも見える。実際は監督の趣味、というか表現方法が、見る側に痛覚を意識させるものに偏っていて、痛そうな場面を盛るための設定なだけなのかもしれないが。

 プロダクションデザインは、有機的でとても魅力があった。サークのリモコンの、ガマガエルみたいにぶにゅぶにゅした感じの不気味さが絶妙。
 ただ、あのブレックファスターチェアだけは、どういうメリットがあるものなのかよく分からなかった。食べにくいだけやん?

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ニコ

3.5懐かしくも進化しぶっ飛んだクローネンバーグ節全開

2023年8月28日
PCから投稿

いったい俺は悪い夢でも見ているのかーーー何度も目を疑ったが、それはつまりかつてのクローネンバーグ節がめでたくカムバックを果たしたということだ。むしろ00年代に入った頃からの心理をえぐるような人間ドラマの数々の方が変拍子だったのであって、80歳近くなった巨匠が唐突にこのグチャグチャっとした領域に戻ってきたことは歓喜すべき事態だろう。もちろん、巨匠のフィルモグラフィーの流れを全く知らずにここにいきなり飛び込んだ人にとっては、頭掻きむしるレベルの内容だとは思うが。かつて人々を驚かせた肉体系、内臓系の映像世界に加えて、『クラッシュ』的な異常な性的衝動もある。つまりいちばん濃いところのクローネンバーグがてんこ盛り。耳慣れないワード満載のセリフの応酬も多く、一度観ただけで全てを理解できる人はごくわずかだとは思うが、「椅子」や「装置」などのビジュアルを見ているだけでも脳がヒリヒリするほど惹きつけられる。

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牛津厚信

4.0クローネンバーグが深化と洗練を経て、久々のオリジナル脚本で悪夢的ボディホラーに原点回帰

2023年8月9日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

興奮

しばしば“鬼才”と称されるデヴィッド・クローネンバーグ監督は、自ら脚本も手がけた1980年代の「スキャナーズ」「ヴィデオドローム」およびその前後の作品で、暴力や事故による身体の損壊、自発的な人体改造、グロテスクなクリーチャー、奇妙な生き物のような形状の道具や装置などを好んで描き、ボディ・ホラーというサブジャンルの確立に大きく貢献した。83年の「デッドゾーン」以降は小説等の映画化(「戦慄の絆」「裸のランチ」「クラッシュ」)やリメイク(「ザ・フライ 」)が増え、オリジナル脚本作としては99年の「イグジステンズ」が最後に。21世紀に入ってからは原作ものが続き、テーマとしても暴力や狂気を通じて人間の精神の深淵に迫ろうとする傾向が強まり、それが作り手としての深化であり洗練であるにせよ、なにやら変態趣味全開の悪ガキが上品な大人になってしまったような寂しさを感じていたのも正直なところ。

だが実に20数年の時を経て、クローネンバーグ監督がまたオリジナル脚本をたずさえボディ・ホラーの世界に帰ってきた。「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」のタイトルが示すように、時代は未来。人類から痛覚と感染症がなくなり、タトゥーや人体改造がカジュアルになった。体内で新たな臓器が生み出される病を持つアーティストのソール(ヴィゴ・モーテンセン)は、タトゥーを施した臓器を摘出するショーで人気に。政府は新臓器の生成が行き過ぎた進化だとみなし、臓器登録所という影の部署を通じて監視している。そうした人体の進化に対する監視や規制を嫌う反政府組織の男がソールに接触してくるが、ソールには“裏の顔”があった。

監督のファンなら、コンピューターと触手型インターフェースを備えるエイリアンの繭(まゆ)のようなポッド型ベッドや、人骨を大型化して組み合わせたような食事支援チェア、巨大な甲虫とその体内を思わせる解剖マシンなど、グロテスクだが異様な魅力を放つ造形物の数々にクローネンバーグ特有のフェティシズムを再確認できて歓喜するはず。マシンを使った開腹手術や遺体の解剖などのシーンがリアルに描写されるので、万人受けする映画でないのは確かだが(初上映された昨年のカンヌでは途中退席者が続出したという)、ずっと悪い夢を見続けているような感覚を好むマニアックな向きには待望の御馳走だろう。

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高森 郁哉

冷めたシーン1つ

2024年9月9日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

難しい

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maru

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