不都合な理想の夫婦 劇場公開日:2022年4月29日
解説 「マーサ、あるいはマーシー・メイ」のショーン・ダーキン監督が、ジュード・ロウとキャリー・クーンを主演に、一見すると理想的だが虚飾と野心に満ちた夫婦が崩壊していく様を描いた心理スリラー。1986年。ニューヨークで貿易商を営むイギリス人のローリーは、アメリカ人の妻アリソンと息子と娘と4人で幸せに暮らしていた。ローリーは大金を稼ぐ夢を追い、好景気に沸くロンドンへ家族とともに移住する。かつての上司が経営する商社で働くことになったローリーは、仕事では周囲から高く評価され、プライベートではロンドン郊外に豪邸を借り、息子を名門校に編入させ、妻には広大な敷地を用意するなど、まるでアメリカンドリームを体現した勝者の凱旋のようだった。しかし、ある日、アリソンは敷地内の馬小屋の工事が進んでいないことに気付く。業者に問い合わせると、支払いが滞っているという。さらに驚くべきことに、新生活のために用意していた貯金が底を突いていることを知ってしまう。「ファンタスティック・ビースト」シリーズのジュード・ロウがローリー、「ゴーストバスターズ アフターライフ」のキャリー・クーンがアリソンを演じた。
2019年製作/107分/R15+/イギリス 原題:The Nest 配給:キノシネマ
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2022年6月13日
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鑑賞方法:試写会
「リプリー」(1999)でアカデミー助演男優賞、「コールド マウンテン」(2003)で同主演男優賞の候補となって以降も、インディペンデント系の作品からエンタテインメント大作まで幅広く出演し、イギリスを代表する俳優として活躍。役者として一層あぶらがのってきた感があるジュード・ロウ。 そんなロウが主演した「不都合な理想の夫婦」の夫・ローリー役は、新たなはまり役と言っていいだろう。同作は、虚飾と野望に満ちた“理想の夫婦”が崩壊していく様を極限まで描いた心理ミステリーだ。 理想の夫婦とは、大金を稼ぐとは、家族とはいったい何なのか。幼少期のトラウマもあって虚飾と野望、歪んだ優越感に侵された男にはわかるはずもない。カメラは物陰からとか、通常の画角よりも一歩引いているようなアングルが多く、まるでこの夫婦、家族が崩壊していく過程をのぞき見したように感じ、それが冒頭の違和感だと気づく。「ファンタビ」のダンブルドアを演じるロウとはまた違った、役者としての本領を堪能できる作品で、中年男の哀しき稚拙さを浮き彫りにする。
ショーン・ダーキン監督といえば、エリザベス・オルセン主演の不気味な心理サスペンス「マーサ、あるいはマーシー・メイ」で名を挙げたフィルムメーカーだが、そんな彼が約10年ぶりに放つ新作もまた心理劇だった。ただし、前作のようなカルトや洗脳という目を引く要素はなく、その構造は至って古典的でシンプル。夫婦や親子という”家族の関係性”を用いて不穏な物語を織り上げていく。また一つのポイントは「80年代」にある。好景気に沸く大量消費時代を背景に、天井知らずの野心が欲望のリミッターを崩壊させ、やがてどんどん崖っぷちに追い詰められる主人公。虚勢を張って他者を圧倒する彼も、それから転落して濡れ鼠のようになる彼も、ジュード・ロウが演じるからこそ、そこにはなんとも言えない人間味が香り立つ。対する妻役キャリー・クーンの存在感も底知れない。観る者を選ぶ作品ではあるものの、舞台劇のような演者の濃密なやりとりを楽しみたい。
2022年4月8日
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鑑賞方法:試写会
Jude Law plays a father trying to bullshit his way to riches. His plight into business is similar to the one confronted by the car salesman in Fargo, so it feels a little familiar. Law and Coon vibe off each other convincingly as a dysfunctional pair; simply witnessing the acting unfold makes the film a fun watch. A movie all about life and not so preachy; a refreshing drama that sticks with you.
2022年9月13日
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鑑賞方法:VOD
■イギリス人のローリー(ジュード・ロウ)は、アメリカでソコソコ成功しながらも、更に大金を稼ごうとアメリカ人の妻・アリソン(キャリー・クーン)と子供たちと共に、好景気に沸くロンドンへ戻って来る。 家は、大豪邸だ。 ローリーを迎える会社の同僚や社長たちの姿からは、ローリーの未来は明るいように見えたが・・。 しかし、アリソンはある日、工事業者への支払いが滞り、さらに貯金が600ポンドしかない事を知る。 ◆感想 ・ストーリー展開は粗い。が、今作ではローリーがアメリカン・ドリームをに囚われ続ける愚かしき姿を、ジュード・ロウが今までのイメージを捨てて、熱演している。 ・アリソンが、ローリーの嘘八百”もうすぐ、大金が入る”と言い続けるも、全然金が入って来ない姿に愛想を尽かしていく姿を、キャリー・クーンが同じく好演している。 ■アメリカから連れて来たサラブレッド、リッチモンドが突然死するシーンは、今作のテーマを暗喩している。 ・ローリーが、深夜タクシー運転手に、”アンタの職業は何だい?”と聞かれ、”金持ちぶる事・・”と疲れた表情で語るシーンは、ナカナカである。 ・子供達も、両親の軋轢を目にして、生活が荒れていく・・。 <今作は、観賞していて決して愉快な作品ではないが、観る側に”地に足の着いた生活を送る大切さを訴えかけてくる作品である。 そして、タクシーから途中で降ろされたローリーが漸く家に付き、妻と子供たちに”アパートに移ろう‥”と言うシーンと、その後家族そろって朝食を食べるシーンには、オハラ夫妻一家の将来の微かな希望が感じられる作品である。>