三姉妹
劇場公開日:2022年6月17日
解説
ドラマ「愛の不時着」のキム・ソニョン、「オアシス」のムン・ソリ、「ベテラン」のチャン・ユンジュが三姉妹を演じ、第42回青龍映画祭をはじめとする韓国の主要映画祭で多数の女優賞を受賞した人間ドラマ。ソウルに暮らす三姉妹。花屋を営みながら元夫の借金を返済している長女ヒスクは、娘に疎まれながらも大丈夫なふりをして毎日をやり過ごしている。高級マンションで家族と暮らす次女ミヨンは、模範的な信徒として熱心に教会に通い、聖歌隊の指揮者も務めている。そんな彼女の完璧な日常が、次第にほころびを見せはじめる。劇作家の三女ミオクはスランプに陥って自暴自棄になり、酒浸りの日々を送っている。父の誕生日を祝うため久々に集まった三姉妹は、そこで幼少期の心の傷と向き合うことになり、それぞれもがき苦しみながらも希望を見いだしていく。
2020年製作/115分/G/韓国
原題:Three Sisters
配給:ザジフィルムズ
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2022年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
長女は夫の借金を返済するために働く毎日、次女は教会に通い、聖歌隊の指揮者を務める優等生。高級マンションに暮らしていて何不自由ない生活のはずなのに、夫には浮気される。三女は売れない劇作家で酒浸り。それぞれの抱える事情は陰惨できつい。彼女たちの実家もまたきつい。父の誕生日に久々に帰省した3人は、それぞれの心の傷と向き合う。なかなかに救いのない、ヒリついた物語なのだけど、最後の解放感は強靭な感動がある。問題が解決したわけでもないのに、このさわやかさはなんだろう。彼女たちのきつい現実はこれからも続くのに、でも3人が力を合わせれば、なんとか乗り切っていけるんじゃないかという希望がみなぎる終わり方だった。
わりとようしゃなくきつい現実を見せてくるのに、苦しくなる人もいると思うけれど、そんな人こそこの映画を観てほしい。苦しんでいるのは1人じゃないし、きっとどこかに救いはあると、説得力を持って描いている。
この映画をうっかり甘く見てると、ふとみぞおち辺りに重い一発を喰らわせられるから注意が必要だ。物語の中央には、各々が結婚し今ではすっかり中年期を迎えた三姉妹がいる。性格は全く違うし、歩んできた人生や経済格差もてんでバラバラ。そんな彼らが日々の悩みや苦しみを抱えつつ、やがて互いに誘い合って帰郷することで、運命はうねるように本流へ注ぎ込むーーー。特筆すべきはその落ち着いた語り口だろう。カメラは序盤から決して先回りすることなく、あくまで三姉妹それぞれの目線と呼吸に立って、堅実に感情を捉えていく。それでいて、いつしか一つの真相が明らかとなる時、例えば三人の性格、抱えている悩み、幼い頃の思い出話といった作品の端々に、ある種の手がかりらしきものが埋め込まれていたことにハッとさせられるのである。切ろうとしても断ち切れない家族という名の鎖。その希望と絶望と、常に差し込み続ける眩い光を描いた、重厚なる怪作だ。
2023年5月10日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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韓国・ソウルに暮らす三姉妹。
ミヨン(ムン・ソリ)は次女。熱心なキリスト教系宗教の信者で、大学生の夫、一男一女に恵まれて、高級マンションで裕福な暮らしをしている。ただし、信仰熱は度が過ぎているようで、第一次反抗期を迎えた幼い娘からは日常、抵抗・反抗されている。
長女ヒスク(キム・ソニョン)は、別れた夫の借金を返済しながら、小さな花屋を営んでいる。客はほとんど来ない、ハイティーンの一人娘からも疎まれていて、日々の暮らしは暗い。
三女ミオク(チャン・ユンジュ)は劇作家だが、あまり売れていない。酒浸りの毎日だが、夫が人が好いのがせめてもの救い。夫の連れ子・ハイティーンの息子とは当然のことながら上手くいっていない。そして何かとミヨンに用もないのに電話をかけてくる・・・
といった物語で、それなりに幸福そうにみえた二女ミヨンにも夫の浮気が発覚し、徐々に暗い影をおとし、終盤へと突入します。
クライマックスは父親の誕生日祝賀の席。
引きこもりだった末弟も参列するのだが、大騒動になってしまう。
それもこれも父親の過去の悪行による。
熱心なクリスチャンだった父。
けれども、酒癖は悪く、女癖も悪い。長女と末弟は妾の子どもだったころもあり、しばしば暴力をふるっていた・・・
ミヨンは宗教二世、彼女の子どもたちは三世になるわけだ。
救いのない家庭でそだった姉妹と弟たち。
ズタボロ三姉妹、ズタボロ四姉弟。毎日が修羅場。
韓国映画特有のとてつもない熱量を感じる映画なのだけれど、個人的には小津安二郎監督『東京暮色』を思い出しました。
それにしても、現在はどうかはわからないが、30年ほど前の韓国の、家父長制度と女性蔑視の社会が、沸々と湧き上がる後半は、驚かされましたね。
三姉妹を演じた女優陣は、いずれも好演です。
都会でそれぞれ暮らす三姉妹。3人とも性格は違う。いつも自分に自信のない長女ヒスク。シングルマザーで元夫の借金を返しつつ娘と上手くいかずガンを患い、なかなかの幸薄。次女ミヨンはお金にも困らず一見幸せそうだが、夫は浮気している。三女ミオクは酒浸りの脚本家。3人とも完璧な人間ではなく、観ていて親しみを感じる。ミオクは中学生の男の子を預かっているのだが、その経緯がよくわからない。いつも酒浸りでイライラして、家は散らかり放題ご飯も作らない。そんなところに何故子供を預けることになったのか?その子も恥ずかしいからと学校の保護者会にはミオクではなく実母を呼ぶ始末。それを知って学校に乗り込みワアワアと捲し立てる。ミヨンに会いに行けば、お菓子をクチャクチャ食べながら平気で姉の知人に握手を求める。あの態度はミヨンとしたら恥ずかしいだろう。人の都合も考えず、大した用事でもないのに電話してきたり。まあ、ミヨンも今は忙しいからと断ればいい事だけど。
3人の父親の誕生日に集まることになり、そこで初めて弟登場。あら、4人兄弟だったのね。で、この段階で初めてこの三姉妹と弟の幼少期が、悲惨なことがわかる。父親の虐待。誕生会でのシーン、弟の驚きの行動で事態は最悪に。いつも冷静なミヨンもキレた。父親に私たちに謝って、と訴えるが父親のとった行動は、、、素直に謝ることはできないんだなあ。
ヒスクが、勿体無い、大丈夫だから食べよう。という場面は笑いどころ。
ヒスクと弟はいつも一緒に父親に虐待されていたようで、大人になって、とんでもない行動をした弟をかばっている。
三姉妹、常に誰かにイラついたりしながらも愛情があり、心配をして、気にかけている。それぞれ抱える問題は深刻だけれど、なんとか乗り越えて、いつまでも仲良くいてほしい。
久しぶりにグロ、怖っではない心臓に優しい韓国映画だった。