「「ポゼッサー」「TITANE」に連なる、身体とアイデンティティーをめぐるサスペンスホラー」ハッチング 孵化 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
「ポゼッサー」「TITANE」に連なる、身体とアイデンティティーをめぐるサスペンスホラー
フランス発の「TITANE」に続き、今度はフィンランドからまたもエッヂの効いた怪作がやって来た。やはり傾向の近いブランドン・クローネンバーグ監督作「ポゼッサー」も英・カナダ合作であり、身体とアイデンティティーをめぐるサスペンスホラーが欧州映画界でちょっとしたトレンドになっているようで興味深い。
スマホ動画を使った私生活の生配信で“リア充”アピールに執心の母親と、期待に応えようと必死で一流の体操選手を目指す12歳の娘ティンヤ。そんな親子の関係性自体は珍しくないが、いかにも北欧らしい明るく洒落たデザインのインテリアと、ティンヤ役の新人シーリ・ソラリンナの天使のようなルックスに、まずたいていの観客が引き込まれるのではないか。
しかし、一見幸福そうな家族の家に、突然舞い込んだカラスが凶兆をもたらす。ティンヤが孵化させてしまう「それ」の造形が、いまどきのCGクリーチャーでなく、手作り風のアニマトロニクスによるものである点にも好感を持った。
冒頭で挙げた他の2作と同様、観客を選ぶ映画ではある。それでも、ジャンルのファンでちょっと変わった作品を求めている人なら、きっと楽しめるだろう。
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