「逃れれれない運命」恐怖の報酬(1977) りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
逃れれれない運命
当時「すこぶる評判の悪かった」この映画が、オリジナル版だからといって、そんなに作品が良くなるのか・・・
そういう思いで、不安8割、期待2割ぐらいで鑑賞しました。
あ、 日本初公開のときにも観ています。
さて、映画。
映画の中心は、アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督のフランス映画『恐怖の報酬』と同じ。
なんらかの理由で、ニトログリセリンをトラックで運ぶ男たちの物語。
運べるのか運べないのか、ハラハラドキドキのストーリー。
なのだけれど、この映画ではそんなハラハラドキドキは全体2時間のうち30分ぐらいしかない。
もう少し長いかもしれないが、実はそんなところに脚本も演出も力を入れていない(とはいえ、ポスターのメインデザインのつり橋渡河のシーンはハラハラドキドキであるが)。
なので、原本『恐怖の報酬』とはまるっきり違っている
いや、話の骨子は同じなのだが、まるで印象も、製作の狙いも異なっている。
インターナショナル版を観たのは初公開時の40年前なので、まるで憶えていないのだが、冒頭にしつこいぐらいに描かれる「恐怖のトラック」に乗り込まざるを得なくなる面々の話が興味深い。
ひとりは暗殺者。
ひとりはユダヤ人活動家。
ひとりは銀行の重役と懇意にし、それをネタに詐欺まがいの出資を受けている実業家。
ひとりはアメリカのギャング・・・といった、いわばアウトローたち。
いやはや、そんなアウトローたちに同情もへったくれもないのだけれど、そんな彼らの日常行動を丹念に描き、結果、どれもに人死に出る・・・
この前半が映画としてはすこぶる秀逸で、全世界各国各地で撮った人々の、顔顔顔顔顔がカットカットの間に挿入されます。
そして、エピソードのは「死」がまとわりつく・・・
って、米国メジャー映画会社2社が共同で配給する内容では決してなく、現在のエンタテインメント作品重視のハリウッドではありえない。
という、前半1時間はすこぶる興味深いのだけれど、ニトログリセリン運搬になってからは、演出冴えない。
唯一、ポスターにもなっているつり橋渡河シーンがハラハラドキドキなれど、あとの緊迫感はいまひとつ。
なので、この後半中心に編集された(と思うのだけれど)インターナショナル版は、やはりつまらなかった、という評論は正しかったようにも思えました。
とはいえ、個人的には、今回のオリジナル版、「逃れれれない運命」を巧みに描いており、当時の混沌とした世界世情もあわせて絵ききり、「いま観るべき映画」としての価値は高かったです。