幻滅のレビュー・感想・評価
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話はおもしろいのだがー
どうにも説明が多い。ナレーションはもちろんのこと、説明がかったセリフも多くて、そんなに綿密に理解させなきゃダメ?せっかく映画なんだからもっと画に語らせればいいんじゃないの?と思ったら何と原作はバルザックなのですね。もちろん読んだことはないけれど、数百年後の東洋人でも名前を知ってるくらいだからさぞ素晴らしい文学者なのでしょう。とにかくもったいない、美術もステキ、役者も過不足なし、この説明の多ささえ何とかできたらもっと満足度高くなってたと思う。フランス語ってのもネックでずーっと字幕見てなきゃなんない、これが母国語ならここまでストレスなかったのかも。でもまあせっかく映画作るのに言葉でぜんぶ説明するのは野暮だわな。講談じゃあるまいし。
誰が何をしてる人なのか、利害関係が何なのか、よく理解できないまま物...
誰が何をしてる人なのか、利害関係が何なのか、よく理解できないまま物語は突き進んでしまった。
でも華やかな世界、スマホのない昔の娯楽、こういった世界観は好き。
他人の不幸は蜜の味
詩人は、日々事象心情を表現する的確な「言葉」を見つけることに腐心しているので、キャッチーな批評記事を書くのにとっても適性があるような気がする。
なので、野心も併せ持つリュシアンには、記者は「天職」と言っていい仕事だった。
転落は、奢った瞬間に始まるようだ。
人の悪意は底知れない。
時代の寵児となり絶頂を極めたところ、足をすくわれて一気にどん底、そういうパターンは今だって同じ。
そして人々はそういう転落劇が大好物。昔も今も。
餌食になるのは「浮かれていい気になっている」のが目につく、うざいやつ。
リュシアンを例に、痛い目をみたら、なぜそうなったのかそこから学習しましょう、というとってもシンプルな教訓がありました。
ナレーションはルストーの声とのこと。
彼みたいに本来の目的を貫きつつ上手くやれる人もいて、そういう人に私はなりたい。
音楽が割りとポピュラーなクラシックで馴染みがあり、豪華な装飾品や衣装に美しい人々、おとぎ話の実写みたいで目に麗しかったです。
作品は、その出来不出来良し悪しに関わりなく金次第で持ち上げられ葬られ、「芸術」の命運を握っているのは徹底した拝金主義のマスゴミ! と一瞬呆れたけど、現代でも不可思議なことはある。
秀作と思った映画がマスコミにスルーされ、評価のやたらに高い映画、権威ある賞を獲った映画が、実際見たら????というのはよくあることです。
セシル・ドゥ・フランス🤩
オノレ・デ・バルザックが19世紀前半のフランスで社会に翻弄される人々を描いた小説、人間喜劇の一編「幻滅―メディア戦記」の三部の前半二部の映画化。
私の興味は地方都市アングレームの男爵夫人ルイーズ(セシル・ドゥ・フランス)と詩人デビューしたい若い青年の恋のゆくえ。
地元で芸術サークルを主宰するルイーズは狩猟と犬にしか興味のない歳の離れた夫への反発で、詩を書く印刷工の青年リュシアンにいれあげる。彼はルイーズにあてた詩を自分で印刷し贈る。パリ旅行にルイーズはリュシアンを同行させるが、パリの社交界は田舎の青年を笑い者にし、従姉にあたる侯爵夫人に恥をかかされたかたちになったルイーズはアングレームに戻ってしまう。ルイーズに愛想をつかされたと思ったリュシアンは酒場で知り合った新聞記者の男(ヴァンサン・ラコスト)に詩集出版や印刷所紹介の相談をするうちに、記者の誘いに乗って、芝居のゴシップ記事担当記者として名をあげ、大通りの劇場の若い女優と付き合い、放蕩三昧の日々。そうすることでルイーズへの復讐を果たそうとする自己欺瞞がますます虚飾の栄華を極めさせ、破滅の道をたどることになるのだった。
セシル・ド・フランスの醒めた冷静さを装った演技にほんとはどうなのよ~って思いました。
ヴァンサン・ラコストはとても魅力的なキャラでした。助演賞なんですね。納得。
当時のパリの演劇界は大勢のサクラを使い、褒めたり、ヤジを飛ばして、進行を妨げたり、まるで総会屋のような黒幕がいたり、新聞の記事次第で興行収入や俳優の将来が左右され、メディアがより多く金を払ったほうに有利な記事を書く風見鶏気質にはフランスならではのアイロニカルなコメディ要素が満載で面白かった。
成功と転落のジェットコースター(あるいは純情と執念)
浮かれては落ちを繰り返し、どんどん振れ幅が大きくなるジェットコースターのような怒涛のエンターテイメントです。
画的にとても見ごたえがあるので、劇場での鑑賞をお勧めします。
文学青年リュシアン(バンジャマン・ボワザン)は、貴族の人妻と駆け落ち同然にパリへ上京します。
しかし、世間知らずで田舎者の彼は捨てられ、生活のために新聞記者になります。
文学に高尚な夢を抱いていたリュシアンは、都会の混沌に揉まれ、あることないこと誹謗中傷を記事にするため文才を消費し、堕落していきます。
人間の美しさ醜悪さが滑稽に描かれています。
痛々しさはなく、自業自得だなと清々するような、しかしどこか悲しさもあります。
もとより主人公自身が無垢な青年とは言い難いです。
彼は文学で成功したいという野心があり、貴族に対するコンプレックスを抱いています。
上京した彼は、その野心と劣等感を大いに刺激され、堕落の道を突き進んでしまいます。
そこでは人々が連鎖して互いの悪意を増幅しあっているようです。
リュシアンの百面相が非常によいです。
身の程知らずの虚栄心に満ちた顔、金の亡者・悪徳記者の顔、人の良心に触れた純情な青年の顔。
自身の意思で行動しているようでいて、弄ばれているお人形感が滑稽です。
現代にも通ずるメディア社会への風刺たっぷりで、画的に見ごたえもあり、2時間半の長尺を感じさせずに楽しめました。
才能豊かなのに、分断社会を転がっていく若者の正に「メディア戦記」。
映像表現が豊かで感心した。個人的にはいわゆる歴史物コスチュームプレイは遠慮しがちなのだけど。一つ一つのカットが宮廷画家が描いた油絵のようだし、一人一人の俳優の表情が其々の階層を代表するように雄弁だった。(そして正直、美しい青年のお姿はやっぱり見応えあります)
しかし、一番の名優はあの「サル」かな笑。
純粋な文学界で挫折した若者が最後たどり着くのは化粧品の広告コピーって、広告制作業界の人、どんな思いでしょう。そんな時代の変化も存分に感じる一方、当局による報道規制など、現代社会に置き変えてぞっとするところも。優れた文学作品を書ける作家というのは無意識のうちに未来までお見通しなのだと思う。
自分の人生に幻滅したことがあるか
オチがわかるようなタイトル、19世紀フランスが舞台なのだが、中身は現代にも通じるストーリーだ。
真実なんてもっともらしい嘘でしかないというようなマスメディアの醜悪さ、才能はあるが賢さはなく都会で堕落する若者、フェイクニュースに踊らされる大衆の愚鈍さは現代でも変わらない。
自分の人生に幻滅したことがある者にこそ、ラストのバルザックの引用が響くのかもしれない。響かない人はそれなりに幸せな人生だろう。
映画は様々なクラシックの寄せ集めなのだが、とりわけ映画のテーマ曲のように奏でられるVeronique Gensの「Hippolyte et Aricie, RCT 43, Act 3 Scene 1: Prélude」がとても作品の雰囲気とよく似合っていた。
とにかく画面が綺麗でした!内装、衣装、そして俳優さんがイケメン揃い!
バルザックの小説が原作。セザール賞主要7部門受賞の王道の文芸大作。
メディアと政治によりねじ曲げられた報道。対抗する大衆紙に勤める記者。正義感を持って腐った報道を糾弾していたはずなのに色んなものに巻き込まれていきます。
(ネタバレあり)
詩人になるのが夢の主人公。貴族出身のお金持ちの奥方に援助してもらい名士の集まりで詩の朗読をするが何せ学のない田舎の人間の集まり、彼の詩が理解されることはない。
自信を失う主人公を奥方は励まし、やがて主人公と恋仲に。それがご主人にばれて二人はパリに駆け落ち。元々貴族出身の奥方の従妹たちに住むところを手配して貰った。
だが、貧しい出自の彼を従妹たちは気にいらず別のホテルを手配される。従妹の一人は悉く彼を邪険に扱い邪魔にする。
ある日二人は社交界の集まりに出かけるがここでも従妹は嫌味を彼に言い意地悪。また別のある日はみんなでオペラを見に行くがここでも主人公は正しい振る舞いが出来ず奥方に恥をかかせてしまう。奥方は何も言わず彼を残して帰ってしまう。奥方に見捨てられた彼はお金が尽きてしまい、路頭に迷う。
そんな彼を助けてくれたのが大衆紙の記者。大手メディアがねじ曲がった記事ばかり書いているのに反発して民衆に本当のことを伝えなければと理想を語る。すっかり傾倒した主人公は記者見習いとして記者について学ぶ。元々詩人を目指していただけあって主人公の記事は人の心を捉えて大ヒット。一躍人気コラムニストになりお金を得る。オペラ歌手の恋人もでき順風満帆に過ごす。
権力者たちは彼の居る大衆紙が人々の不満をあおるのでつぶしにかかる。そこで権力者たちは主人公にある提案を持ち掛ける。
実は主人公の母は貴族の出身だが父は貴族ではないので主人公は貴族の姓を名乗ることはできないのだが主人公は貴族の姓が名乗りたくって田舎にいるころから母の旧姓を名乗っていた。しかし至る所で貴族じゃないと言われるので貴族として認めて欲しいと王様に嘆願書を出していたがそれを権力者たちは利用して主人公に権力寄りの記事を書けと言ってきたのだ。
主人公が路頭に迷った時助けてくれた人たちを裏切るのか、それとも権力者に媚びて貴族になるのか...?主人公が出した結論は?
すべては泡沫の夢。
(感想)
ナポレオン時代の貴族や社交界が舞台なので内装や衣装などとても美しかった。そして主役と助演男優さん揃って美形。眼福。主役は全裸シーンが3回もあった。フランス映画ってどうしてこんなにエロいシーンが多いんでしょう。これぐらいしないと観客が満足しないのか?笑
80年前に書かれた小説ながら現在にも通じる内容。メディアの闇が描かれます。身分制度が壊れる少し前の世界を余すところなく描いています。
理想があったはずなのに現実に潰れて落ちていったり、お金を待ったら持ったで贅沢三昧な生活をしてしまったり、身分制度に苦しめられてるはずなのに身分が欲しくてしょうがない。エゴや自尊心や色々なものを内包しえいるのが人間だとバルザックは言いたいのか?そんなことを考えてしまった。
お金をかけて丁寧に作った映画とはこういう映画を言うのだろう。バルザックの小説の世界を見事に再現した映画。本当に美しい画面でした。映画が終わった時、こっそり拍手をしたら隣の女性も小さく拍手していたのが嬉しかった。
美しい映像と人の悪意
音楽も装飾も衣装もとても美しく、お伽話か夢の中にいるよう。
それに比して、悪意に満ちている人の心。
ゆっくりストーリーは進みますが、そんなに長さは感じませんでした。
なのですが、伯爵夫人が途中から片桐はいりさんに見えてしまって…
ラストシーンの美しさは、彼の純粋な心を表現したのでしょうか。
『バビロン』を彷彿するけど…
中世ヨーロッパの世界観が苦手な僕です。
原作がオノレ・ド・バルザックと知って観てみましたが、
睡眠導入剤ならぬ睡眠導入映画(笑)
落ちてくるマブタと必死に戦い、寝落ちしかけては起き、寝落ちしかけては起き、の繰り返し(笑)
よりにもよって、時間が長く、2時間30分(笑)
好きな方は好きな世界観なんでしょうね…
僕はダメです(笑)
映画自体のクオリティは高いので、中世ヨーロッパの世界観が好きな方は楽しめるのかも?
『バビロン』っぽい話ですかね…
もっとシンプルに伝えればいいのに、こむずかしく装飾して分かりずらくするから、よけい眠くなる(笑)
セシル・ドゥ・フランスが出てるトコは良かった(笑)
痛烈な風刺映画
19世紀のフランスで印刷工場で働く青年リュシアンには2つの夢があった。1つは貴族であり人妻のルイーズと結ばれたい気持ちと、もう1つは、自分の書いた詩集を出版することだった。
そこで彼は、欲望と狂乱が渦巻くパリへ上京する。働いていたレストランで出会った記者ルストーに出会い、自身も記者になることで、メディアの闇にどっぷりと飲み込まれていくことになる。
上映時間が約150分と長いですが、大いに楽しませてもらいました。リュシアンの栄光と転落が絶妙に描かれていて、フリに対する答えがスパーンと映像で表現されていて残酷だけどスッキリする展開で飽きることなく鑑賞できました。
人物は個性とクセの強いキャラクターばかりですが、リュシアンとライバルのナタンとの友情は素晴らしかった。お互いライバル視していたが、文学に対する熱意を素直に打ち明けるナタンには感無量。
文学青年が栄光と転落を描いたヒューマンドラマでもあり、19世紀の混沌としたフランスを映像化した文化的に価値のある映画でもありました。
とても結核患者には見えん
ジャーナリズムの道徳的脆弱性について当初から警告を発していたバルザックは偉い。まさに慧眼というべき。
報道のあるべき姿は,事実を積み重ねて本質に迫る,という点で学術研究に似ているそうだから,そこに欲が入り込んではいかんのである。この作品の登場人物も欲に駆られて仲間割れした挙句,弾圧の口実を体制側に与えてしまう。この欲の対象はカネと名声だった訳だが,報道そっちのけで意見を押し付けるばかりの新聞、偏見むき出しルポを連載する週刊誌、記者会見場で自己主張にのみ熱心な記者など現代日本の困った報道者達を駆り立てるのは自己顕示欲か承認欲求か?…てなことを考えながら画面のシックさなどを楽しませて貰った。
主演のボワザンはなかなかの逸材とお見受けするし,ドパルデューは相変わらずいい味出してる。ルイーズ役の女優(初見です)も好演。
ド・バルザックの「ド」は、 貴族を気取った自称であり、正に映画の主役の有り様だ。
19世紀フランスの文豪オノレ・ド・バルザックの小説「幻滅 メディア戦記」を映画化。
フランスというよりパリ文化、思想の成形の歴史を垣間見たような展開は、日本の明治維新の様な喧騒であり、
復古王制時代などはとんと分からんが、
当時の建物や風俗などのロケーションに、
それらの撮影も見事な作品で楽しませてくれた。
特に出版と新聞と文学の関係がよく分かり、現在も新聞社が社主で成り立っている歴的背景が知れ、
芸術の都がパリであるところも知れるバルザックの文化歴史観が実に意義深った。
^^
19世紀前半。フランスでは恐怖政治が終焉を迎え、宮廷貴族たちが自由と享楽的な生活を謳歌していた。
詩人としての成功を夢見る田舎町の純朴な青年リュシアンは、貴族の人妻ルイーズとパリへ駆け落ちするが、
世間知らずで無作法な彼は社交界で笑いものにされてしまう。
生活のため新聞記者の仕事に就いた彼は、
金のために魂を売るマスメディア関係の同僚たちに影響されその寵児に成りがる。
そして、当初の目的を忘れて虚飾と快楽にまみれた世界から社交界へ、更に爵位を求め始める。
真実のない世界で
2021年。グザビエ・ジャノリ監督。バルザック原作の小説を映画化。王政復古後のフランスで、田舎の文学青年が貴婦人との不倫の末にパリへ。恋にも文学(詩)にも敗れた青年は、ゴシップ系新聞に記事を書くジャーナリストとして台頭していく、、、という話。
説明的なわかりやすさやしつこさが続いて、小説を読んでいた方が感動できそうだと思う瞬間が多かったが、それでも物語自体の面白さとジャンヌ・バリバールとセシル・ドゥ・フランスのなつかしさで見続けることができる。年を重ねてもそれぞれがそれぞれにふさわしい役柄を演じているのがうれしい。
新聞というメディアが急速に発達していく中で、真実よりも大衆に受けることを優先する小新聞の世界が赤裸々に描かれる。王党派と自由主義派の戦い、自由主義派への弾圧があるので、1830年の七月革命より前の1820年代だろうか。真実を求める青年が破れていくのは、結局は王党派と自由主義派のそれぞれから「異端」とされ、策略をめぐらされたからだが、策略が功を奏するのは、真実を知る層が少ないこと(格差の存在)と、限られた少数の関係者の思惑でことが動くこと(コントロール可能性)が条件だ。すべての人が参加するゲームであれば、一部の思惑が計算可能な形で実現するとは限らない。
この作品が2021年に映画化される意味を考えると、現代の格差社会、ポスト・トゥルゥースの時代への警鐘なのだろうが、コロナ禍で国民的団結を思い起こそうとするフランス人のための映画のようにも見えてくる。
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