劇場公開日 2023年4月14日

  • 予告編を見る

「真実のない世界で」幻滅 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0真実のない世界で

2023年4月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2021年。グザビエ・ジャノリ監督。バルザック原作の小説を映画化。王政復古後のフランスで、田舎の文学青年が貴婦人との不倫の末にパリへ。恋にも文学(詩)にも敗れた青年は、ゴシップ系新聞に記事を書くジャーナリストとして台頭していく、、、という話。
説明的なわかりやすさやしつこさが続いて、小説を読んでいた方が感動できそうだと思う瞬間が多かったが、それでも物語自体の面白さとジャンヌ・バリバールとセシル・ドゥ・フランスのなつかしさで見続けることができる。年を重ねてもそれぞれがそれぞれにふさわしい役柄を演じているのがうれしい。
新聞というメディアが急速に発達していく中で、真実よりも大衆に受けることを優先する小新聞の世界が赤裸々に描かれる。王党派と自由主義派の戦い、自由主義派への弾圧があるので、1830年の七月革命より前の1820年代だろうか。真実を求める青年が破れていくのは、結局は王党派と自由主義派のそれぞれから「異端」とされ、策略をめぐらされたからだが、策略が功を奏するのは、真実を知る層が少ないこと(格差の存在)と、限られた少数の関係者の思惑でことが動くこと(コントロール可能性)が条件だ。すべての人が参加するゲームであれば、一部の思惑が計算可能な形で実現するとは限らない。
この作品が2021年に映画化される意味を考えると、現代の格差社会、ポスト・トゥルゥースの時代への警鐘なのだろうが、コロナ禍で国民的団結を思い起こそうとするフランス人のための映画のようにも見えてくる。

文字読み