劇場公開日 2023年4月14日

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「成功と転落のジェットコースター(あるいは純情と執念)」幻滅 moroさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0成功と転落のジェットコースター(あるいは純情と執念)

2023年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

浮かれては落ちを繰り返し、どんどん振れ幅が大きくなるジェットコースターのような怒涛のエンターテイメントです。
画的にとても見ごたえがあるので、劇場での鑑賞をお勧めします。

文学青年リュシアン(バンジャマン・ボワザン)は、貴族の人妻と駆け落ち同然にパリへ上京します。
しかし、世間知らずで田舎者の彼は捨てられ、生活のために新聞記者になります。
文学に高尚な夢を抱いていたリュシアンは、都会の混沌に揉まれ、あることないこと誹謗中傷を記事にするため文才を消費し、堕落していきます。

人間の美しさ醜悪さが滑稽に描かれています。
痛々しさはなく、自業自得だなと清々するような、しかしどこか悲しさもあります。

もとより主人公自身が無垢な青年とは言い難いです。
彼は文学で成功したいという野心があり、貴族に対するコンプレックスを抱いています。
上京した彼は、その野心と劣等感を大いに刺激され、堕落の道を突き進んでしまいます。
そこでは人々が連鎖して互いの悪意を増幅しあっているようです。

リュシアンの百面相が非常によいです。
身の程知らずの虚栄心に満ちた顔、金の亡者・悪徳記者の顔、人の良心に触れた純情な青年の顔。
自身の意思で行動しているようでいて、弄ばれているお人形感が滑稽です。

現代にも通ずるメディア社会への風刺たっぷりで、画的に見ごたえもあり、2時間半の長尺を感じさせずに楽しめました。

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moro