ある男のレビュー・感想・評価
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カテゴリー分けと先入観から開放されたい
自分ではない誰か他人の人生を生きたいと思ったことのある人は意外といるんじゃないか。でも、それはただの夢みたいな妄想だ。現実的に元の自分とは違う人間になるために戸籍を買ったり、別の名前で生活するってことは相当な気遣いが必要。犯罪にかかわっていたり、多額の借金から逃れるくらいの理由がないとそんなことはなかなかできない。
亡くなった愛する夫は別人で、なぜ彼は自分とは違う人間になりすましていたのか。その夫の過去を探る話と思っていたが、予告編のミスリードであった。実際の主人公は妻夫木演じる弁護士。いや、もちろんあの夫婦もメインの話ではある。でも帰化した在日韓国人の弁護士が(無意識にではあるが)自分の出自とからめて、ある男(X)の調査にのめり込んでいく話だと感じた。でもだからこそ面白かった。
ある男(X)が何者でなぜ他人になりすましていたかの真相はあまり重要ではなく(とても重く感動的ではあったが)、その人がその人であるための要素ってなんだろうということを問いかけてくるメッセージの方がより強かった気がする。人は、人をカテゴリー分けし、過去や血縁関係等といった先入観で判断しがち。昔から様々な作品で問いかけられているメッセージではある。でも未だに重い。とても深みのある物語だ。
でも、最後のシーンはどうなんだろう。彼が抱える闇の深さはその直前の家族での外食シーンからもうかがえるのだが、あのバーでのやりとりはそこまで必要なシーンだったんだろうか。妻や子どもとの関係もどうなったのかもこちらの判断にゆだねるということなのかもしれないが、若干消化不良になってしまった。
秀逸でした。
内容的に難しかったので感想
生い立ちが人生を不幸にさせるのはやるせない。差別がない世界になって欲しい。
ラストのよるラストのための映画
先日公開された「母性」で感じたかった胸のゾワゾワが本作にはありました。ものすごい感触...。公開から3週間経ってようやく鑑賞できたわけですが、こりゃ見物。韓国ノワールのような作品です。いや、凄かった。
妻夫木聡、窪田正孝、そして柄本明の怪演。
本作一番の見どころは、間違いなくそこです。
柄本明の登場から物語の雰囲気はガラッと変わり、それと同時に妻夫木聡演じる城戸の様子が変貌。「死刑にいたる病」で味わった狂気に似たものが感じられました。柄本明のおぞましさは流石で、やはり日本映画には彼が必要。そして、妻夫木聡の正気を失ったその姿は「来る」以上で、見ている側も頭がおかしくなりそうになるほど、緊張感溢れる演技を披露。窪田正孝の泣き演技にはとてつもなく胸を締め付けられ、やはりこのような役柄が似合うなと感心。他の役者も良いですが、特にこの3人の演技には圧倒されっぱなしで、高評価に繋がったかと思います。
前半は物語として致し方ないとは言っても、なんだか色々と弱く、飽きはしないけど物足りないってのが正直な感想。妻・里枝の夫に対する思い、夫・大祐の妻に対する思いが全然描かれておらず、この人でなきゃダメだったんだ、こうしてまで君と一緒にいたかったんだ、というのが無い。そのため、サスペンスとしては非常に出来がいいものの、恋愛・家族愛としての質は低く、感情移入が出来ない。もっと長くしてよかったから、そこはきちんと書いて欲しかったな。
しかしながら、後半に差し掛かってからエンジンがかかり、急速に面白くなる。在日、戸籍、死刑問題、それに対する反対運動や反対言動など、色んな要素を盛り込んでいるせいで裏テーマとしては何が言いたかったの?とはなるけど、表面的に見れば単純にめちゃくちゃ面白い人間ドラマだし、伏線回収も上手い。話自体は分かりやすいから支障は無いっちゃ無いんだけど、もっとシンプルでサスペンス一筋!だったらより良かったかも。だけど、ストーリー展開は素晴らしく、今年の日本サスペンス映画ではベスト級に面白いです。
この映画の上手いなぁと思うのは予告。
あの予告じゃ、本当に何も分からない。この結末が予想できるはずがない。特に特報なんて、妻夫木聡がなんの人なのかすら分からないし、すごくよく出来ている。おかげでラストの鳥肌は半端じゃなかった。一つの絵が、一つの映画を見て、全く違うものに見える。お見事な着地点でこりゃ面白い!!!となること間違いなしです。ラストを先に考えて、そこから話を膨らませていったんじゃないかと思うほどに、秀逸な締め方でした。
もっと面白い作品にできた気もするけれど、個人的には大満足。「初恋」ぶりに窪田正孝ボクサーが見れたのも最高に嬉しかった。今年、「さがす」に次ぐ衝撃ラストの日本サスペンス。この機会にぜひ、劇場で。
『誰かの心に残る』ということ
安藤サクラ
誰でも 時には ふと"違う人物"に成りきってみたいものです。
謎めいた映画題名とそれに伴う 予告編 は 人を引き付ける魅力があって、
僕は映画館に自然と引き寄せられるように、この映画を鑑賞しました。
ミステリー・サスペンス調の映画に成っているが、実は在日弁護士から描く"在日問題"を考えさせる映画にも なっていた。
"親ガチャ"から得られる自分のアイデンティティを良しとせず、
隣の芝生ならば、青く見えるのだろうか?
男たちは 何も背負っていない処から、人生を再出発したいと考えた。
そんな過去を抱えた2人の男と違い、
肩書ではなく、"今"を大切にしている ある男 の妻子は「真髄のみを大切にした」違いは考え深いものであり、本作の答えであり、誠のテーマとなっていた。
どんな人生でも、それなりの厳しさがあり、「けして蒼くはない」って事
だから、誰かが捨てたアイデンティティでも、他から観れば、魅力的だと言う事。
自分の人生 自分なりに楽しみましょう。
この映画を観た後に、映画「万引き家族」と見比べると面白いかもしれない。
「流浪の月」でも良いかも。
自分とは
ラベルと中身。何が真で、何が偽なのか。 張り替えると偽なのか。そもそも真とは何か。
映画はたんたんと進み、終わる。
ミステリーとして観ても、人間ドラマとして観ても、胸にとどめておきたいような珠玉のシーンはあるものの、大きなカタルシスに向かってドラマが進むわけでもなく、ラストの意表をつくようなシーンはあるものの、どんでん返しというほどではない。
役者の演技で及第点ではあるものの、すべてが薄まった、帯に短し襷に長し、今一つのうまみが足りないもどかしさに、映画館を後にした。
なのに、なんだろう。後からじわじわ来る。
里枝と、自称大祐、里枝の母も含めた5人家族が、頭の中でかってに動き出す。
悠人が父の面影を追う姿。
城戸夫妻のそれから。
城戸自身の生きざま。
谷口のサイドストーリー。
小見浦のサイドストーリー。
そして、曽根崎のサイドストリー。
原作未読。
かなりはしょって映画化したのだろう。エッセンスだけを集めたように。
ラベル。
合法・違法な手段でラベルを変えることで、変わるもの・変わらないもの。
なりすました自称大祐。
帰化という形で、国籍というラベルを付け替えた城戸。
親の離婚・再婚によって、姓が変わる悠人。
自身の結婚・離婚によって、姓が変わる里枝。
ラベルこそ変えないのに、ラストに鵺の様相を見せる城戸の妻。…あなたは何者なんだ。
そして、その妻の真実を知って、城戸はカオナシになる。
城戸が被った仮面…。心の安らぎを求めたのか。
自分とは?
小見浦も言っていたが、その人がその人である証って何なのだろう。
他人が認める自分だけではなく、自分が認識する自分。
人生にいくつもある「たら、れば」
こうありたい自分と、こうである自分。
母であり、妻であり、子であり、女である里枝と城戸の妻は、それぞれにそれぞれの顔を見せる。
父であり、夫であり、子であり、男である城戸と自称大祐も、それぞれにそれぞれの顔を見せる。
そこにも、「父である」とか「弁護士である」とかのラベルが存在する。
戸籍を変えることで(帰化という手段で国籍を変えることで)、自称大祐や城戸が手に入れたかったものは何なのだろう。そして、手に入れられたのか。
自称大祐に関しては、手に入れられたのだと思いたい。
ラベル(名前)を付けることで、不特定多数の対象が、誰でもない特別なものになる(A manから The man)。そのラベルを付け替えたら…。
でも「ぼくのお父さん」というラベルの付け方もあるんだな。戸籍上・血縁関係がどうであろうと。
ステップ・ファミリーや事実婚の関係性。何を本物とし、偽物とするのか。心のつながり。制度のつながり。
「分人主義」
原作者の平野氏の講演を聞いたときはわかったような、「面白い発想」と思ったものだ。
だが、この映画を観てよくわからなくなった。
結局、自称大祐が手に入れたものは、それまでの人生で培った人間性によるものではなかったのか。彼の悩み・苦しみ・絶望が、人への優しさ・慈しみに昇華されたからこそ、手に入れられたもの。「ラベル」こそ変えて、リセットできたから、その優しさ・慈しみを素直に表現できたのではあるのだが。そして、それは悠人に受け継がれていく。
反対に、瓦解していく城戸。息子が名付けた金魚の名前で困惑。息子と同じものが見られない城戸。象徴的なシーン。
時間がたつにつれ、様々なことが頭に・心に浮かんでくる。
余韻がいつまでも響く。
★ ★ ★
しかし、原誠のトラウマは半端ない。
死刑囚の息子という境遇。
友達のうちに遊びに行ったら、まさかの場面に遭遇。その現場を見ただけでも、トラウマ必須なのに。その犯人が父だなんて。その父から手渡しされたもの。
なぜ、彼は顔を変えなかったのだろう。
余計な装飾を加えない俳優陣が素晴らしい
天才同士の融合
内容的には面白さを感じたものの・・・
世間の闇の部分
「映画」版『ある男』が、視覚を通して思考させる、傑作!
ミステリー小説『ある男』の、映画版!
(映画化ではなく、映画版)
石川監督は、「人が生きていく中で、かかわる人たちとの関係性をつなぐ個々人の真実」とは、何なのか?
「事実を全て知ることが(は)、生きる上で、最善、最重要なのか?」
映画(映像で)を通じて、私たちに分かりやすく、突きつけてくる。
素晴らしい俳優陣が、作り出したこの作品では
主役の妻夫木さん、安藤さん、窪田さん、
さえも、作品の一つのピースでしかない
(それほどに、よくできた作品)
オープニングの一枚の絵
の意図する答えが
ラストカットに明かされる!
深い深い映画です。
*生い立ち、親族、国籍、宗教、仕事、収入、身体、体型、外観 etc.
きっと、私たちは、どこかで、何かを差別している、させている・・・。
ラストは不倫ですか?
象徴的な絵
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