「愛した男はいったい何者なのか?ただの謎解きものではない良作でした。」ある男 焼肉定食さんの映画レビュー(感想・評価)
愛した男はいったい何者なのか?ただの謎解きものではない良作でした。
Amazonプライムで視聴。第46回日本アカデミー賞にて最優秀作品賞を含む同年度最多の8部門受賞作品とのこと。
簡単なあらすじとしては、宮崎の田舎に暮らす寡婦の女性里枝は、ある時移住してきた「温泉宿の次男」と語る男性大祐と恋に落ちる。幸せな数年を過ごすも大祐は仕事中の事故で他界してしまう。一周忌で温泉宿の長男が訪ねてきたが、そこで愛した男性大祐は全くの別人だということが分かり・・・。いったい自分が愛した大祐は誰なのか?ってのが大まかなストーリー。
一見主人公は安藤サクラ演じる寡婦の女性里枝かと思いきや、里枝から大祐の身元調査を受けた妻夫木聡演じる弁護士の城戸が主人公。調査を進めていく中で、大祐が死刑囚の息子であったり、プロボクサーであったりと徐々に謎めいた人物像が解き明かされていく流れ。
単に謎解きモノではなく「死刑囚の息子」という呪縛に苦しむ大祐の姿や「在日三世」という自身に悩む弁護士の城戸、「戸籍のなりすまし」という問題に絡めて色々と考えさせられる作品。
特に良かったのが、主役級の妻夫木、安藤の演技は勿論素晴らしいのだが、脇を固める助演陣、特に途中で出てくる服役中の詐欺師柄本明の演技が素晴らしかった。「差別的発言をストレートに行う嫌な人間」っていうのが、これでもかというくらいに見せつけられる。
なお、劇中最後の依頼解決後数年たったバーのシーン。シーンの意味がよく分からなかったが、他の方の考察等を拝見し、あの時城戸が「何と名乗ったか」というのを考えさせるシーンであったと理解。自身の理解力の無さに呆れるばかりだが、なるほど、確かに面白い。
ついでに知ったことだが、作品の最初と最後に移る絵は画家ルネ・マグリットの「複製禁止」という作品らしい。上記の考察とともに、作品の内容と照らし合わせると色々考えさせられる、見た後の余韻がとても良い作品でした。