「鏡とDNAとアイデンティティー」ある男 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
鏡とDNAとアイデンティティー
米田、武元、谷口、武元・・・3回も苗字が変わるという不幸にも挫けずに健気に生きる明るい悠人。そしてバトンは渡された?悠人視点から観ても面白いかもしれない今作品。城戸弁護士(妻夫木)が在日だったという事実とアイデンティティーの苦悩が中心とはなっていますが、父親不在という不幸にもめげない悠人の表情も良かった。
原作は未読なので知りませんが、そもそも戸籍を交換するなんてのは出来るのか?思えば、横溝正史なんかの推理小説では戦後混乱期に戸籍を変えたり成りすましで混乱させるストーリーが多かった。デジタル化の進んだ現代ではどうなんでしょう。そして、窪田正孝が原、曾根崎、谷口と名を変えてまで過去を消したのなら、武元家に入った方が無難だと思うのですが、と疑問に感じてしまいました。
窪田正孝演ずる原誠がプロボクサーをやっていた過去。偶然なのか必然なのか、里枝役の安藤サクラも『百円の恋』で素晴らしいボクシング演技をしていたが、中学時代からボクシングジムに通っていたらしい。また、安藤サクラの夫・柄本佑と妻夫木聡はボクシング仲間であり、窪田ともボクシングを楽しんでいるようだ。ちなみに仲野太賀もボクシングジムに通っているそうだ。
サブストーリーとして、在日外国人に対するヘイトスピーチだとか、生活保護の問題をいかにも社会派作品として盛り込んでありますが、それほどの効果はなかったように思う。義父(モロ師岡)に在日の嫌味を言われても耐え忍ぶ城戸。そこまでの父親なら、普通なら結婚には猛反対していそうだが、細かな点で不自然さがあった。
しかし、過去を消してしまいたい男と、帰化した在日3世を表明している男はある意味両極。城戸の苦悩というよりも、名前を変えてみることの意義深さに共鳴したラストのバーのシーンが興味深い。
何となく小説は面白そうなのですが、映画にする歳にはもっとミステリー色を濃くしたり、スリリングな展開が欲しいところ。ちょっとパンチが足りないといった感じです。
それにしても「ある男」とは誰のことなのかも気になります。本物の谷口大祐ではなさそうだし、偽物の谷口大祐でもなさそうだし、やっぱり登場しない曾根崎か?
おひさです。コメント返しありがとうございます。モロ師岡、僕も好きですよ。変態(笑)今日たまたま見ていたグッドパートナーってドラマでも胡散臭い弁護士役が良かったですよ!癖のある役をやれる名俳優ですよね。
確かにモロ師岡は不自然ですね。そして苦悩するような妻夫木聡が真木よう子みたいなキャラの妻を選んでいるのも不自然だと感じました。でも、人間ってあちこち矛盾してるのが、リアルとも言えますよ。笑
この映画は、谷口大祐が別人であるという事実が判明してから物語がさらに拡大しているわけです。
逆に谷口大祐が別人と判明しなければ、それ以降の物語は作れません。
キーとなっている人物は、間違いなく偽物の谷口大祐であり、「ある男」は偽物の谷口大祐と考えます。