死刑にいたる病のレビュー・感想・評価
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スリリングではあったが もう少し話として分かりやすいオチと ストー...
スリリングではあったが
もう少し話として分かりやすいオチと
ストーリー性が欲しかった。
阿部サダヲの黒い目が印象的だった。
悪趣味なグロ描写に力入れ過ぎな、リアリティの無い偽物サイコパス妄想ドラマ
初日に観に行ったのですが、のっけから予想以上の客入りの多さに驚きました。
GW週だったのと、人気俳優が揃ってホラー系に出ている話題性の高さゆえでしょうか。
それと広告宣伝サイドの上手さもあったのかもしれません。
私は実在する殺人鬼の実話本をたくさん買って読むのが昔から好きなのですが、
この映画に出てくるのは妙にリアリティに欠ける、偽物サイコパスという印象です。
物語の進行も都合が良過ぎて、無理やり頭の中で作り上げた妄想ホラーという感じ。
必要以上に見せつけたがる悪趣味なグロ描写が多いのも、気になりました。
それにしては真の怖さは余り感じられず、怖いというよりも、気持ちが悪い。
キルケゴールの名著「死に至る病」をパクったタイトルにも、センスが感じられません。
前半は俳優達の魅力ある演技や、犯罪者の異常極まりない行動に引き付けられて、
多く散りばめられた謎の伏線がどう回収されていくのか?という、期待感が高まります。
しかしながら、宣伝されていた「衝撃のラスト」というのが期待外れで、中身が無い。
それまでの伏線もきちんと回収されず、謎の解明もされずに、尻切れトンボで終わります。
驚きも無いし、想定外の展開というのも、特にありません。
結局、作り手側にこれといった深いメッセージは無いので、心に残るものがありません。
実際にはなかなかいない、凄く親切で良い人がいたとして、「実は殺人鬼かも」なんて
失礼な目で見るような悪い思考を観客に植え付けそうで、その点も不快です。
岩田剛典が出ているので、彼目当てで観に来た女性ファンも多かった気がするものの、
不自然なカツラ感と出番の少なさで、岩田の無駄使いというか、単なる客寄せ的な印象。
この監督が以前作った「孤狼の血」が面白かったので、今回は期待し過ぎました。
ラストであっと言わせてほしかったのですが・・・、いい所で監督に逃げられた感じ。
映像表現の妙
監督の代表作の一つ 凶悪 に近いテイストを感じて鑑賞。
実際見てみるとプロットの構造も凶悪に似た流れで進んでいくが、登場人物の感情の流れは違った印象。
まず、阿部サダヲの食えないサイコパスな演技は流石。
あの目でジッと見られるだけで不安が押し寄せてくる笑
個人的には浦沢直樹の モンスター のヨハンに少し近いかなぁ あとは言わずもがなハンニバルレクターとか
人の心を蝕み支配していくタイプのサイコパス
正直、最近この手のサイコキラーが出てくる映画が多いので若干見飽きた感はあるが阿部サダヲのパワーでキッチリ仕上がってる
そのほかの若手俳優の方達は初めてみる人ばっかりだったけどいい感じ!
3代目の彼はちょっと浮いてた感もあったけど…
※演技の質の話じゃなく3代目としての佇まいが見てる側として少しノイズに…笑
と、役者陣についていろいろ書いてきたが今作の最大の特徴は役者の演技ではなく映像表現の部分にある。
主人公が大学内を歩く場面、周りは動きがスローなのに対して主人公のみ通常の速度で動いていたりとキャラの立ち位置とか心情が映像表現面で演出される場面が多数。面会室で主人公と阿部サダヲが映像上文字通り 同化 してるように撮られたり(この演出は是枝裕和の三度目の殺人でもあったが)終盤は 脳内映像 みたいなものがそのまま映し出されたりと、結果凶悪の時とは根本的なアプローチの方向性が違う印象。
まぁ映像表現として バッキバキに垢抜けてたか? と聞かれるとそこまででもなかった気もするのが残念な印象もあったりはするが‥
結局阿部サダヲの演技に映像表現が喰われていた感は否めず。
もう少しカメラワークとか構図の面で特徴が感じられたら全般的に筋の通った質感になったのかもしれない
ラストのオチ?については
そう言えばこの子傷ペロペロする女の子だった
という事踏まえると納得感もあったし、キレも良かったけど… なんか別の着地欲しかったようか気もする
白石監督の映画は最近なーんか 無い物ねだり 的な消化不良感があるんだよなぁ
方向性とかは完全に自分好みなのに振り切れてない感というか…
まぁ今後も追い続けますが!
文句なしの背筋が凍るサスペンス
劇場予告で観たいと思っていて、やっと念願が叶いました。緻密な脚本を丁寧に撮った良作で、現時点では今年No.1です。
阿部サダヲさんの怪演はもちろん、岡田健史さんも全然負けてません。グロに弱いので序盤は厳しかったですが、見応え抜群。
不自然な展開や強引な流れもあるものの、わかりやすい伏線が想像の少し上で回収されるので、気持ちよく観てられます。
ラストも展開だけなら予想の範囲内ですが、宮崎優さんの存在感と小道具がそれを引き立て、サイコパスが張り巡らせた罠の大きさを想起させ、背筋が凍ります。
目を覆いたくなりつつゾクゾクの連続でした
好みは分かれるところだろうけど、白石監督の作品は、いつも目を覆いたくなるが、それでいて見て見ぬふりはできない、心に突き刺さる作品だと思っている。
サイコパスって、大小の差はあるにせよ多くの人が持っている2面性じゃないのかな。実行に移すかどうか、理性によるブレーキが掛けられるのか、まあ、それができないのが異常な人と認識されるんでしょうけどね。
それにしても、残虐なシーンを撮らせるのは、今なら白石監督というのを、改めて思いました。
阿部サダヲをはじめ、キャスティングもドはまりでしたよ。
ホラー・サスペンス
脚本が確りとしており、役者さんの好演怪演が光る一作。
阿部サダヲさんの活き活きとしたサイコパスな演技もそうですが、岡田健史さんの演技に驚かされました。始めは下手だと思って見ていたのですが、劇中ストーリーにあわせてどんどんと変わっていく演技を見ると一概にそうとはいえない、少なくとも好演していると私は感じました。
ストーリーも最後まで楽しんで見られましたし、エンドロールのBGMも素晴らしかった✨
何か暇な人のエキセントリックな交流
狂気殺人ミステリー。
殺人犯と知り合いだった青年が、ある事件の真犯人を見つけるようそそのかされる話。
グロ描写あり。
良い点
・相手の心理を掌握する話し方やオーラ
・自己肯定感という素材
・父より似てる
悪い点
・映画館で遭遇するためのコストやいかに
・髪はぼさぼさなのに岩田の血色が良い
・オチがやや安っぽい
その他点
・何か暇だから仕掛けるし、何か暇だから付け込まれる。
瞳孔という闇の中へ
この手のやつの面会室描写って痺れますよねぇ。白石監督、今回も見事におしっこチビリそうな映像に仕立て上げてくれました。現実と虚構、一枚隔てているアクリル板の反射等々、素晴らしく不穏でした。
阿部サダヲ氏は勿論、登場するほとんどの人達が何かしら「気持ち悪い」ものを持っているので、そんな演技合戦を愛でる映画としては最高です。
ミステリーとしては…。個人的には、中盤以降から失速というか迷走(?)してる様に感じてしまい、ちょっと入り込めなくなったのが残念でした。原作なのか脚本なのかはわかりませんが、折角のナイスなラストのシーンまで「ん?」を引きずってしまった為に、意図していないんだろうけれど、最終的に犯人が小さく見えちゃいましたね。
サイコキラーも怖いけど、尿意も怖かった!でも久々に100点満点の映画キタァァァ!
キタァァァ!
久々の100点満点映画キタァァァ!
エンタメでコレを期待していたのに、まさかこんな感じで100点来ちゃうとはなぁ。
実はこの映画の二日前に前立腺炎を患いまして。
高熱とともに、頻尿に見舞われました。幸いなことに発熱は早期に改善いたしまして。
問題は尿意!おしっこ!
なので、トイレのことがめーっちゃ気になりまして。
ですが、地元の映画館でも舞台挨拶中継付きの上映がありまして。
これはシッコモラーを覚悟してでも行かないと映画ファンじゃないと思いまして。
そういう無駄な使命感にかられて、携帯トイレ持参で(笑)観に行きました。
できれば大人用紙おむつでも武装しなきゃダメなのかな…とか思いつつ(笑)
あっ、使命感云々言うんやったら、さっさとレビュー書け!って話ですよね。
閑話休題
何しろ1mmたりとも目の離せない、ある意味ジェットコースタームービーだったのね。
オープニングの美しさに魅入られたまま(メインテーマの音楽も秀逸でした)早くも45分過ぎたあたりから、物語の核心に向かおうとしてるっぽく撮ってるの!ゲロいシーンで!
後でほんっとに怖くなったのが、オープニングの“アレ”が、まさか人体の一部だったとはね!
ガク((( ;゚Д゚)))ブル
そうなの、この映画マジでゲロくなるシーンが多いのよ。
三つ離れた隣の席の女性なんて。手首を折られた女性が惨殺されるシーンで「おえっ…」って言ってましたもん。
私もちょっとです。
(ネタバレ舞台挨拶で知ったのですが、あのカットって、特殊撮影でも何でもなく、女優さんの手首が本当にあそこまで曲がっていたそうな)
とにかく犯行シーンの全てがゲロいのなんの。
で、主役はてっきり阿部さん演ずる榛村かと思ってたです。
ところがどっこい、真の主人公は岡田さん演ずる筧井だったんですね。
でもアクリル越しに、いいように操られていたのだから、やっぱり主役は榛村か。
この榛村を演ずる阿部さんの演技がすごいの何の!
ちょいと小首をかしげながら、あんなに綺麗なパッチリの瞳で見つめられたら、きっと誰でも魅入られてしまうでしょう!
私もちょっと“ぐぐっと”来ましたもん。←それがどういう感情なのかは、全く不明なのですが。
榛村ずるい!あんな綺麗な目をしているサダヲさんずるい!
そこまで人心掌握できる?する?
結局榛村の掌で踊らされていた筧井を中心として、キャラクターの誰もが、いいように操られていたのな!もちろん観客も含めて。
こいつ、ただのサイコキラーってだけじゃなくて、生粋の人たらしだよ!始末が悪いよ!
こいつはくせえッー!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーーッ!!
で次々と衝撃の展開になっていくわけですから1mmたりともスクリーンから目を離せないの!
ジェットコースターさながらなの!
衝撃の真実だと思われたことさえ、榛村の仕組んだ罠だったわけですよ。
なんじゃそりゃ。
榛村と筧井のバッテリーに翻弄されて、四打席連続三振喰らった気分だよ!
で衝撃のラスト。
ここが一番意味深だったし、捉えようによっては一番怖かったよ!
ガク((( ;゚Д゚)))ブル
あの後、あの二人が行ったのは、きっと地獄なんだわー!という余韻を残したままの気分でスクリーンが暗転しました。この余韻こわい。
結局“病”に侵されていたのは、そのまんま榛村のことなのか、それとも操られた(感染)させられた筧井なのか、かなりの謎を残したお話しでした。
頭が抜群に切れる上に、人たらしのサイコキラー最高にこわい。
監獄に閉じ込められたまんま全てを操るとか、ほんっとスタンド使いみたい。
次回はあまり精神的にも頭使う的にも厳しくない痛快なエンタメ映画を観てみたいなぁ。
候補としては『キングダム2』とか、4DX上映があれば『トップガン:マーヴェリック』あたりもよいかな。
ちなみに幸いにも尿意は訪れませんでした。シッコモラー回避よかったね!(笑)
なので、舞台挨拶中継も大変美味しくいただきました。
映画に気圧されて、尿意どころじゃなかったのかな?
なんなん、こんなゲロレビュー…( ´•д•`; )
淡々と残酷
白石監督の「凶悪」と確かに共通点は多いし、主人公が通りがかりのおじさんを殺めようとするシーンは、リリーフランキーさんの「凶悪」登場シーンまんまで、(笑)。多分パロディなんだろうけど。
結局、大和の壮大な暇つぶし、って理解で合ってますか?
でないと、他の殺人は認めてるのに、ひとつだけわざわざ嘘ついて主人公を翻弄する理由が分からないし。
観客は、だからその一つをやったのかやってないのか、わざわざ主人公に依頼するんだから、やってないだろう、なら真犯人誰なの?とヤキモキするわけですが、
結局やってたんなら、主人公振り回すだけの暇つぶしですよね?
リアリティがどうとか言ってる人いますが、そういう人は犯罪史でも読んでたらいいと思います。映画は面白くないと。
しかしながら、北九州監禁事件とか、埼玉愛犬家連続殺人事件のように、カリスマ性を持つ殺人犯は存在します。
また、特に子供への支配力を持つカリスマは、見た目フツーのことが多いだけに、淡々と残酷なことを繰り返す阿部さんはわたしにはリアルに見えました。
「自分で決めれない」母親もまた、大和の支配下にあるんでしょうね。
ピエールさんが、「凶悪」で見せた殺人鬼の片鱗は、この映画には一切表れません。ただただ、冷静に理詰めでくる阿部さんはまるでレクターのようでした。
なので、これは目をつけていた主人公に執着した壮大な精神的虐待なのでしょうね。
合ってますか?
若干スプラッタ
基本サスペンスものは見ないのだか、CMにやられて鑑賞。
殺人やら拷問のシーンがなかなかスプラッタでびっくり。
話は伏線回収もなかなかで最後まで楽しめました。
4はいかないが、3.8ってとこ。
メインの二人の演技が良かった。
心理戦を忠実に描いている
原作を読んでいたので、おおよそのあらすじは知っていた。
正直、小説がかなり犯罪心理学のような内容を含んでいたので、
映画化するにあたって、ストーリーにはめ込んでいくにはどうするのか、と
思っていたが、なかなか巧く作られていたと思う。
阿部サダヲ演じる凶悪犯・榛村と岡田健史演じる大学生・筧井の心理戦がよく表現されていた。
特に筧井が榛村を知れば知るほど翻弄されていく姿は見ものである。岡田健史よく演じていた。
よくを言えば筧井の母親のキャラクターをもう少し掘り下げてくれれば、と思ったが、
尺の関係などもあるだろう。
白石和彌監督の作品は全作品観てきているが、正直本作は目を塞いでしまったシーンがあった。
激しい暴力などはないが、この榛村の心理描写が、白石作品で一番恐ろしいものだった。
見終わったあとなんか溜息出た。
パン屋を営む犯人が24人もの人をライフスタイルの如く拷問し殺していく。うち9件が立件され一審で死刑判決。しかし最後の1件は自分ではないと主張するところから始まる...。
コワイコワイ、ツライツライ。
最初から目を覆いたくなり様なシーン、異様な光景。
出てくる発言を信じ、疑い、疲弊していく。
最初っからの伏線が最後に回収される様。からの最後の最後に
ヒェ!(´ºωº`)
ってなって終わる。
レイトで見るんじゃなかった...。(。-_-。)
阿部サダヲ怖すぎる!!
宮崎優の変わりっぷりも怖い!
岡田健史が時折松山ケンイチに見えた(^ ^)
そして
中山美穂が、、、普通に普通のお母さん役をやっててチョット哀しい(褒め言葉)。
気持ちが暗い方向へ持ってかれる映画でした。
凄く面白かったですよ。
ゾッとするサスペンス、ホラーと言っても過言ではない、名作
阿部サダヲには難しくない役だったのではないか。淡々と日常を過ごす、優しそうで愛想の良い人。人に寄り添ってるように見えるけど目が冷たく光っている。その演技は秀逸。そして見ているこちらも何か、騙されてはいけないと身構えつつ見ることになる。あまりに残虐で恐ろしい殺害方法は本当に映像で説明されており、怖くて目をそむけてしまったシーンもあった。白石監督、バイオレンス描写にいつも容赦なく、今回は病的猟奇的殺人の凄まじい描写と、阿部サダヲの穏やかに語る獄中での姿との対比で一層不気味さが強調されていたと思う。そして最後まで気が抜けなかった話の展開はもはやホラーだと感じた。
キャストが皆それぞれはまっていて、とても説得力あり。岡田健史頑張りました。
怖い!でも見る価値ありの唸る一本です。
執着心
一見善良なパン屋の男が、実は高校生連続殺人の犯人として収監されているが・・・しかしそのうち1件の殺人は自分の犯行ではないとして、知人の大学生に真相の解明を依頼することから巻き起こる物語。
あまり邦画を観ないワタクシだが、重厚でダークなミステリー作品ということで非常に楽しみにしていた作品‼
さっそく序盤からゲェ吐きたくなるようなエゲツない描写。元々得意ではないが、最近さらにこういうのに弱くなった気が…(笑)
さておき、自身も少なからず影を抱える主人公、雅也が真相の解明に奔走していく。
弁護士事務所のガバガバさや、名刺効果とは言え何でも教えてくれる皆さんにツッコむのは無しですかね(笑)?そんな細かい点は色々あるものの、静かな流れの中にも衝撃の展開の繰り返しで、時間が経つのも忘れる程。
登場人物たちの考えはよく理解できなかったし(その方が良いのかもだけど)、榛村の選定の嗜好も筋が通っているようで通っていないような…って感じもしたが、話の内容も思いの外分かり易かったし、榛村が心に入り込んでくる描写の上手さ、重苦しい雰囲気とBGMも相まって終始のめり込めた。
何より、連続殺人犯を演じる阿部サダヲさんの怪演っぷりが素晴らしいですね‼
ワタクシの中では笑う犬に出てた芸人さんのイメージのが強いので、そのギャップに、それでいて自然なサイコっぷりに驚きました。
☆4の高評価でも期待値は大きく超えてはこなかったし、ちょっとやり過ぎな感もあったけど、とにかく善人と悪人の顔を見事に使い分ける阿部サダヲさんに心を奪われた作品だった。
…成程、私も彼を好きになってしまったようだ。
観客も、阿部サダヲの狂気に取り込まれる
予告編からして面白そうで、公開されてからの評判もかなり高い。地元の映画館では上映していなかったので、片道3時間掛けて隣県の映画館にて鑑賞いたしました。
結論ですが、狂気に満ちた映画でした。観ていてキツかったです。
阿部サダヲ演じる連続殺人犯・榛村大和が大学生の筧井雅也に冤罪の証明を依頼するという内容ですが、阿部サダヲさんの醸し出す狂気性に、主人公の雅也だけでなく我々観客も当てられていきます。
そして待ち受ける衝撃のラスト。ラストシーンは原作と映画とで若干異なるらしいですが、本当に素晴らしいラストでした。
ただ、爪剥ぎやアキレス腱切断のようなゴア描写が容赦なく登場します。PG12というのが信じられないレベルの、目を背けたくなるような描写がたくさんありますので、そういうのが苦手な方にはオススメできないですね。お気を付けください。
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高校で落ちこぼれてFラン大学に進学したことで学歴主義の父親から疎まれ、鬱屈した日常を送る大学生の筧井雅也(岡田健史)。彼の元にある日1通の手紙が届く。手紙の差出人は、24件の殺人事件を起こし、うち9件の事件で立件されて死刑判決を受けていた凶悪殺人犯の榛村大和(阿部サダヲ)であった。中学時代に榛村の営むパン屋の常連で彼と面識のあった雅也は、東京拘置所に収容されている榛村と面会することにした。面会室で榛村は「立件された事件のうち、一つだけ自分の起こした事件でないものがある」として、雅也に冤罪の証明を依頼するのだった。
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阿部サダヲさんの芸名の由来は阿部定という女性です。彼女は愛人の男性を殺害し、その男の局部を切断して大事に持ち歩いていたという所謂「阿部定事件」を起こしました。なんだか本作に登場する連続殺人犯の榛村と似てますよね。榛村も被害者に拷問を行ない、剥いだ爪を瓶に入れて大事に保管していました。「好きな人の一部を自分の手元に置いておきたい」という台詞も、劇中の終盤に登場しますので、どことなく阿部定事件を思わせるような部分がありますよね。
本作の主演である阿部サダヲさんの演技は本当に素晴らしかったです。彼の名前の由来からしても演技からしても、他の人が演じるのが全く想像できないですし、ベストのキャスティングだったと断言できます。
細かな描写も素晴らしかったですね。他のレビュアーさんも挙げていますが、取調室のシーンで仕切りガラスに反射する雅也と榛村が段々と重なっていく描写とか、本当に良かった。個人的には雅也の母親も岩田剛典さん演じる金山一輝も、自分で物を決めることができずに相手に委ねるようになっているのが榛村の影響が強く残っているからだということが分かります。主人公の雅也に関しても、自宅でオレンジジュースを飲む様子が描写された直後に、中学時代に榛村のパン屋でオレンジジュースをサービスしてもらったという描写が出てきます。雅也もまた、榛村の影響が今でも残っているのだということが分かります。
また、雅也と付き合うことになる灯里と仲良くなったきっかけであるサークルの飲み会。あれこそまさに「疎外感を与えてから近づく」という榛村の人心掌握術です。もしかしたらあの時点で既に灯里は榛村に完全に操られていたのかもしれないと考えると、本当に恐ろしくなりますよね。
そしてストーリーも素晴らしかった。
榛村と面会を重ねるごとに彼の狂気性に当てられ、自覚もないまま榛村に陶酔していく雅也。最初は凶悪連続殺人犯である榛村に対して警戒していた雅也が少しずつ榛村に飲み込まれていく描写は本当に素晴らしかったし、そして恐ろしかった。印象的なのは赤ペン瀧川さん演じる榛村の担当弁護士と雅也の対比構造。佐村弁護士の下でアルバイトとして働きながら捜査を進めていくことになる雅也でしたが、独断での強引な捜査によって佐村弁護士と対立することになります。榛村の言うことを完全に信用している自尊心の強い大学生の雅也と、過去の経験と積み上げた知識によって榛村と一定の距離を置く佐村弁護士の考え方やスタンスが対立的に描かれているシーンです。
佐村弁護士が言う「彼(榛村)の言うことを信じすぎてませんか?」という台詞は、雅也の視点で事件を調べていくうちに、「榛村の言う通り最後の事件は冤罪だったのかもしれない」と考え始めた我々観客に向けて放たれたものなのかもしれませんね。
そして、ラストに待ち受ける驚異の展開。全く想像もしていなかった展開ですが、決して唐突ではなくてしっかり伏線が張られているので納得感があります。「日本映画史に残る衝撃のラスト」というキャッチコピーは伊達ではありません。私は完全に騙され、「やられた!」と心の中で叫びました。
今年は日本ノワール映画が豊作ですね。先日鑑賞した『さがす』も歴史に残る名作でしたし、本作も紛れもなく名作です。コメディ色の強い俳優である佐藤二郎や阿部サダヲがシリアスなキャラクターを演じることでギャップもありますし、単純に演技力が高いです。
グロに耐性があるのなら、観ておいて損は無い名作です。オススメです!!!
全552件中、281~300件目を表示