ニトラム NITRAM 劇場公開日:2022年3月25日
解説 1996年4月28日、オーストラリア・タスマニア島の世界遺産にもなっている観光地ポートアーサー流刑場跡で起こった無差別銃乱射事件を、「マクベス」「アサシン クリード」などで知られるオーストラリアの俊英ジャスティン・カーゼル監督が映画化。事件を引き起こした当時27歳だった犯人の青年が、なぜ銃を求め、いかに入手し、そして犯行に至ったのか。事件当日までの日常と生活を描き出す。1990年代半ばのオーストラリア、タスマニア島。観光しか主な産業のない閉鎖的なコミュニティで、母と父と暮らす青年。小さなころから周囲になじめず孤立し、同級生からは本名を逆さに読みした「NITRAM(ニトラム)」という蔑称で呼ばれ、バカにされてきた。何ひとつうまくいかず、思い通りにならない人生を送る彼は、サーフボードを買うために始めた芝刈りの訪問営業の仕事で、ヘレンという女性と出会い、恋に落ちる。しかし、ヘレンとの関係は悲劇的な結末を迎えてしまう。そのことをきっかけに、彼の孤独感や怒りは増大し、精神は大きく狂っていく。「アンチヴァイラル」のケイレブ・ランドリー・ジョーンズが主人公ニトラムを演じ、2021年・第74回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した。
2021年製作/112分/G/オーストラリア 原題:Nitram 配給:セテラ・インターナショナル
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2022年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
犯罪者を語ることの難しさをひしひしと感じる作品だ。そして、その難しさは誰かが引き受けねばならないのだという作り手の責任感もひしひしと感じる。発達障害と思われる主人公が大量殺戮を犯す、このことだけで本作を語るのは難しい。差別的感情を抱かせずに犯人の心のあり様に迫るという難題を、挑まなければいけない。 この映画を観る時、主人公のマーティンをどのように理解すべきか。本作は、理解と共感を分けながら、注意深く鑑賞する必要がある。友人のいないマーティンの孤独、破綻した親子関係、唯一彼に救いをもたらす母親と同世代の女性ヘレンとの関係を否定されること。同情ではなく、彼を追い詰める社会の構造や常識のメカニズムを理解していかなくてはならない。社会に適応して生きることはそんなに偉いことなのか、この映画を観ているとよくわからなくなっていく。社会は実りのない場所だ、実りはないけど、みんなが生きるプラットフォームだから壊すわけにはいかない。しかし、どんな社会にも馴染めずに排斥されてしまう人はいるのでこうした暴発は社会を維持する必然として、時折発生してしまう。とてもしんどい気分になるが、直視するしかない社会の実像がここには描かれている。
'96年にタスマニア島で起こった銃乱射事件の犯人をめぐる物語である。個人的なことを言わせて貰えば、テーマがテーマなだけに鑑賞時かなり覚悟が要った。だが実際に見始めると、不思議と映像から目が離せなくなると言うか、この主人公が犯行に及んだ心の内側を知りたいという想いが湧いた。本作は決して残虐性をあらわにした物語というわけではない。むしろその直前までの過程を紡いだ作品。主人公の精神性は凪の海面のように穏やかな時もあれば、不協和音を爆発させて手のつけられなくなることもある。そこに付随する両親との関係性、追い出された学校、土地購入の問題、ふとしたことで知り合う男友達、そして謎の女性。主演のケイレブの演技は繊細かつ観る者の心をかき乱すヒリヒリした感触で一杯だが、その一方、謎の女性を演じたカーゼル組の常連、エッシー・デイヴィスの存在感が秀でている。彼女は一体何者だったのか。いまだに気になって仕方がない。
2022年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
There is virtually no joy to be pulled from Nitram, an account of the man who committed a mass shooting in Tasmania. His mental illness is singular, an untreatable recluse who mows lawns and plays with fireworks in the bush. The movie is a linear descent into the unfortunate historical moment, which surprisingly is skipped altogether. At best will have you saying, "I didn't know about that."
1996年にオーストラリアで実際に起きた銃乱射事件の犯人の事件を起こすまでの映画。 なかなか周りに馴染めず、孤立した青年マーティン。イジメにもあっていただろうし、大人になっても、近所の子供にまで揶揄われてしまっている。同年代にも相手にされず、仕事にも就いていない。 たまたま出会ったヘレンという女性と仲良くなり、お金持ちでもある彼女から車をもらったり、お金も残してくれた。それで銃も買えてしまった。彼のことは街中が知っているだろうから、銃を買えてしまうことがよくないし、免許もないのに車の運転を許している父母や他の大人たちもどうしたものか? ヘレンのお金で海外は行ったのか?パスポートは取れたの?と疑問が残る。 ラスト、この事件をきっかけにオーストラリアでは全ての銃を政府が買い上げて破棄したと伝えていた。他の国も見習ってほしいものだ。でも、現在は当時を上回る銃が出回っているとのこと。なかなか銃のない世の中にすることは難しいようだ。