ONODA 一万夜を越えて

劇場公開日:2021年10月8日

解説・あらすじ

太平洋戦争終結後も任務解除の命令を受けられず、フィリピン・ルバング島で孤独な日々を過ごし、約30年後の1974年に51歳で日本に帰還した小野田寛郎旧陸軍少尉の物語を、フランスの新鋭アルチュール・アラリ監督が映画化。終戦間近の1944年、陸軍中野学校二俣分校で秘密戦の特殊訓練を受けていた小野田寛郎は、劣勢のフィリピン・ルバング島で援軍部隊が戻るまでゲリラ戦を指揮するよう命じられる。出発前、教官からは「君たちには、死ぬ権利はない」と言い渡され、玉砕の許されない小野田たちは、何が起きても必ず生き延びなくてはならなかった。ルバング島の過酷なジャングルの中で食糧も不足し、仲間たちは飢えや病気で次々と倒れていく。それでも小野田は、いつか必ず救援がくると信じて仲間を鼓舞し続けるが……。主人公・小野田の青年期を遠藤雄弥、成年期を津田寛治が演じ、仲野太賀、井之脇海、イッセー尾形らが共演。2021年・第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門出品。

2021年製作/174分/G/フランス・ドイツ・ベルギー・イタリア・日本合作
原題または英題:Onoda, 10 000 nuits dans la jungle
配給:エレファントハウス
劇場公開日:2021年10月8日

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映画レビュー

未評価 <ことしは戦後80年>

2025年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

知的

まず、戦争はいろんな人の人生を狂わせる。
小野田さん発見の報は、まだ私が10歳の小学生だった頃、すでに戦後30年。 日本は高度成長開始(東京オリンピックに新幹線開業)から10年。 もう万国博覧会も終え、戦争の記憶なんかお祖父ちゃんですらもうしなくなっていた頃です。

横井さんに続いて、二人目。ということは、おそらくこの二人以外にも、終戦後も多数の残留兵が東南アジアの各地にいたに違いない。 事実、インドネシアの駐留兵は戦後、インドネシア独立戦争に参加し、オランダ軍と戦い、今でもインドネシアの人々から記憶されている。
 ただ、小野田さんが他の例と全く異なっているのは、いわゆる特殊工作を任務とする陸軍中野学校出身だった事だ。 そして、何度も何度も肉親や国の使節団がルバング島に来て、投降の呼びかけをしていたのも知っていた。早い時期にラジオを入手して、朝鮮戦争や東京オリンピック、アポロ11号の月面着陸や万博なども知っていた。
 それでも投降してこなかったのは、特殊工作隊員として、これらニュースを謀略の一環だと考えていたからで、その考えを裏付ける証拠もあったのだ(もちろん思い込みだが、一度信じてしまうとなかなか変えられないものだ)。
 しかし、その頑なな小野田さんを変えたのは、裸一貫で乗り込んで来た、いわゆるバックパッカーで世界を旅行していた日本人の青年(いわゆる団塊の世代)だった。小野田さんは、何を信じ、何を考え、何のために30年もの長い間、戦い続けてきたのか?
 映画の最後に、中野学校の教官が青年と一緒にルバング島に赴いて、命令解除をすることで、やっと投降に応じたのだが、この教官にとっても、戦争という記憶を忘れ去りたい中、本当に戦争によって狂わされた苦悩が滲み出る内容でした。

映画の話はここまでです。日本に戻る決意をした段階で終わっています。
しかし、帰ってからの小野田さんの苦悩は、それからも続いていたようです。 帰国後数年で、ブラジルへ移住したのも、30年もの長い間、ジャングルで戦い続け、守るべき日本が、こんなにも変遷してしまっている事に、失望したという話も聞こえて来ます。
30年もの間、ジャングルで生き抜くなんて、並大抵の精神力と、日本が勝つと信じている強い強い気持ちが無くては、とてもできるはずありません。 その、守るべき日本がもはや、30年を経てどこにも存在しない事に失望したというのは、そりゃそうだろうなと思わずにはいられません。なにしろ、中野学校での教官ですら、最初は戦争に加担した事なんて忘れ去りたくて、ルバング島なんかに出向くなんて頑なに拒否していたのですから。

鉄砲撃ってドンパチだけが戦争ではない。あらゆる人々の人生を狂わし、狂気に駆り立てる。戦争が悲惨なのは、人が殺し合うだけではない。狂気に向かわせ、狂気に気づかない状況に追い込む事こそが、戦争の悲惨さを物語るんだと思います。

まだ最近の映画だというのに、これを観る事ができる環境は、非常に限られています。ですので、思い切ってブルーレイを買って観ました。3000円。

この映画が、どうして2021年まで製作されなかったのか。
どうしてフランス人監督なのか。
いろいろ、日本はまだ戦後を終えていないと感じさせる映画でした。

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HiraHiraHirappa

4.0 戦争ってほんとうにひどい

2025年1月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

鈴木(仲野太賀)から戦争が終わったことを聞かされる小野田(津田寛治)の表情、
ラスト近く、谷口(イッセー尾形)が命令を読み上げるときの表情、
それを受ける小野田の表情、
なんとも言えない。涙が出てきた。

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くまっち

3.5 旧日本陸軍をフランスの製作陣が描く

2024年10月5日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

どういう流れで製作されたのかはわからないまま、題材がとても興味深かったことと、その題材をフランスの製作陣が描いたということで興味が倍増し鑑賞。
良いかどうかはよく判断つかないが、今まで日本で製作された大戦ものとはずいぶん雰囲気が違い、ある意味でとても観やすく感じた。まったりと言うと聞こえが悪いが、良い意味で淡々と進んでいくこの安定しているが独特な創りは、長尺174分でも決して長くは感じない。このあたりの創り込みがフランス映画人のお家芸なのか。
観終えて特別印象に残ったシーンがあるわけでもないのだが、全体を通してやはり心に残るものがある。
当然映画作品としても良かったが、他の歴史と混同していた部分がすっきりと整理ついたのも個人的にはプラスになった。

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いけい

3.5 見応えある

2024年9月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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ちょび