「『ソウ』…かなぁ…?」スパイラル ソウ オールリセット 玄間さんの映画レビュー(感想・評価)
『ソウ』…かなぁ…?
賛否両論分かれた前作を相当褒めちぎった俺が言うのもなんだけど、いやぁ…これは『ソウ』では無いね…
本編冒頭映像を見た時点で何か「ん?」って感じはしたよ。2のデス・マスクがそうだったように、普通ジグソウのやり方は「どんなシチュエーションになってもいいように」「自分は最前列で見られるように」「試練を超えれば助かるように」作っているわけで、列車が来ても目覚めない可能性だってある地下鉄であのトラップはおかしいよね。「Live or die, make your choice.」を聞くこともできず、気づいたらバーン…何てことも考えられるよね。作りこみが甘くて、何だかなぁと思っちゃったよ。それに書いていて気付いたけど、ソウ・レガシーでも当のジグソウ本人がこれをやらかしてたね。詳しくは書かないけど。ちょっと評価書き直してくるね。というか「舌と命のトレードオフ」って、それこそデス・マスクの「眼と命のトレードオフ」のモロパクリだよね。どおりで目新しさが薄かったわけだ。デジャヴだこれ。
まあこの時点で予告編の「ジグソウを超える猟奇殺人犯」という言葉には、タンポポほどの重みも、不良債権ほどの信頼も無くなったよ。「まーた無能後継者の再来かな?」と思ったんだけど…
その予想は4分の3当たっちゃった。この一言でシリーズファンの変態諸君は察すると思うから、これ以上は言わないよ。なんなら一番ひどい後継者よりもひどかったよ。
結果として彼はジグソウを超えられなかったわけだ。模倣は模倣。後継者たちですらジグソウの思想、理想、心情を理解することは出来なかったんだから、ただ自分の身勝手な理由…まあジグソウが正しいとは言わないけど…の為に猿真似をしているんじゃ、ただの狂人という誹りは免れないだろうね。だめだ、これもレガシーに当てはまっちゃうな。もうあのレビュー消そうかな。
ただ前作と圧倒的に違うのは、「そのトラップである必要性」と「ちゃんとジグソウの哲学に基づいているか」という二点だね。レガシーのレビューで書いた文をそのまま引用するけど、「俺たちが求めているのは、助かる道のない、デスゲームを騙った単なる拷問じゃないのよ。すなわち、生きるか死ぬかのギリギリの状況で、必死で生き残ろうとするその心理描写が面白いのよ。」死が決まっている殺人装置の何が面白いんだろう。やっぱりソウである必要性は感じないよね。
トラップの質もそうだけど、謎解き要素が薄くなっているのも「ソウらしさ」を薄めている大きな原因だと思うな。これ、察しの良い人なら割と中盤で犯人が分かっちゃうんだよね。もちろん彼は、ジグソウほどのカリスマ性も、格の高さも持ち合わせていないよ。それに、シリーズお得意のどんでん返しと言うか、点と点が線を通り越して一気に面になるあの爽快感、なのに後味は悪い…そんなソウの神話はもう無いんだなって、ちょっと悲しくなっちゃったよ。悪い癖だよね。懐古厨って言われても何も言い返せないね(笑)
だからこの映画は、頭を空っぽにして見るのが正解だよ。はっきり言っちゃうけど、これはソウじゃないよ。登場人物ほぼ満遍なくクズ、みたいな作品はナンバリングにもあったけど、スパイラルの主人公は正義漢で、突っ走り気味なベタな人物像で、演技も凄く良いと、「ソウとしては異端」だけどいい感じの配役だったよ。テイストとしてはこれまたベタな刑事物で、重苦しい雰囲気で苦手だった人でもまあまあ楽しめるようにはなっているよ。でも相変わらず残酷な描写は健在だから、「サスペンス要素は薄いけどグロは健在」っていう味付けになっているみたい。
…普通逆だよね。新参を取り込み、古参も満足させたいなら、「グロは抑えてサスペンスは据え置き」だよね。敷居高くして肝心要の要素を削っちゃうって、本末転倒になっちゃってるじゃん。このバランスの配分には納得しがたいね。
終わり方もなーんか…あっさりし過ぎと言うか…ネタバレにぎりっぎりならない程度に言うと、絶対次回作ありげな終わり方なんだよね。でもあの展開から2って…どうするのかな…ならまだ綺麗に終わったレガシーのほうがいいと思ったよ。
前作でリブートして、今作でリセット…次は何かな?スクラップにでもするのかな?(笑)こんな皮肉で締めちゃったけど、何だかんだ言って並のB級映画程度には面白いから、あまり期待せずに見れば楽しめるよ。ソウシリーズの共通点の一つに、「一作目が偉大過ぎる」というのがあるけど、これはそれを見事に体現していると思うよ。一番壊さなきゃいけない伝統なんだけどね…
それじゃあさようなら。割とボロクソに書いてこんなこと言うのもなんだけど、皆も是非見てね。よろしくね。