劇場公開日 2021年10月15日

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「サンカヨウとは可憐で秘めやかな白い花の名前です。」かそけきサンカヨウ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0サンカヨウとは可憐で秘めやかな白い花の名前です。

2022年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

サンカヨウの花と陽(よう=志田彩良)の清純さが重なる、美しい映画でした。

サンカヨウは陽が、生まれて最初の記憶に残る、母と一緒に見た花。
サンカヨウは雨に濡れると花びらが半透明になる可憐な花。
まるで陽みたいに儚く幽けく(かそけく=消えるように)美しい。
(それは少女の頃の一瞬の、純白と純真の汚れなき日々・・・)

3歳の時に、画家の母が陽を置いて出て行った。
以来、父親(井浦新)の直と陽は2人暮らし。
幼い頃から父の食事の世話を引き受けて、中3まで父と二人三脚で穏やかに暮らしていた。
陽に父は、
「早く大人にしてしまったな・・・」と辛そうにつぶやく。

そんな生活が変化する。
父が再婚することになり、美子(菊池亜希子)が幼いひなたを連れて、
同居することになる。
急に3歳で生き別れた水彩画家の母親・佐千代が恋しくなる陽。
どうして母は陽を置いて出て行ったのだろう?
私は捨てられたの?

陽には美術部で一緒の陸(鈴鹿央士)という友達がいる。
陸には何も告げずに母親・佐千代(石田ひかり)の個展に出かける陽。
だけど母は陽の顔を覚えてなかった・・・。
ショックから、落ち込んだ陽は、陸につれなく当たり、遠ざける

2021年。今泉力哉監督作品。原作は窪美澄の短編小説です。

とても繊細で美しい映画でした。
人と人が、一定の距離をとって、他人の心の領域に踏み込まない・・・
そこから生まれる「思いやりや、優しさ」
そんな心の上澄みを今泉力哉監督はそっと繊細に演出しました。

志田彩良も鈴鹿央士も、とても《ピュア》な女の子と男の子。
母親の佐千代の水彩画の世界を、映像で表現したと思える映画でした。

継母の美子が印象的。
相手を本当に想う・・・それができる人。
陽に新しい家族ができて、本当の家族になるまでが、
丁寧に誠実に描かれています。

志田彩良さんの繊細な演技と美しさが魅力でした。

琥珀糖
kossyさんのコメント
2022年7月15日

琥珀糖さん、コメントありがとうございます。
俺もこの花は知りませんでした。ただ、映画の前に同業の知り合いがこの花の名を屋号に・・・
高山植物もそうですけど、初めて見る花ってのは世界が変わったような気もして不思議な気分になるものですよね。最近では青い薔薇を見たとき!

kossy