「庵野節」シン・仮面ライダー よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
庵野節
シン・ゴジラ、シン・ウルトラマンにどハマりしていたが、今回はそこまでハマらなかった。
これは、僕自身の仮面ライダー自体に対する思い入れが、電王を毎週見ていた程度で初代ライダー達にそこまでない癖に、空想科学読本なんかで仮面ライダー誕生までのバックボーンとかの知識はあるという中途半端な状態だからだと思う。
ここから先の感想は、そんな中途半端野郎が書いてることを念頭に置いて頂けると幸いである。
先ほど仮面ライダーに対する思い入れが少ないと書いたが、実のところ僕はゴジラにもそんな思い入れはない。(ウルトラマンには他の二つよりも思い入れは結構ある)
では、シン・ゴジラはそこまで楽しめなかったかというと、冒頭にも触れた通りかなりどハマりした。
この差はなんなんだろうか。
ひとつはゴジラと仮面ライダーへのアプローチの仕方の違いだろう。
シン・ゴジラは原典を尊重しつつ怪獣が実際に現れた時のシミュレーション映画という全く新しい切り口で見せたこと。
だからこそ原典を知らなくても楽しめたのだろう。
今回の仮面ライダーは監督の原典への強い憧れを感じる。
だから原典への思い入れがある程度ないと「ここをこう作り変えたんだ!!」という高揚感は味わえないし、普通にに楽しむには難しすぎる。
そしてもうひとつは仮面ライダーという作品の特性と監督の相性。
これはあくまで中途半端野郎が聞き齧った知識で勝手にくる先入観なのだが、仮面ライダーは自分の身体を改造された悲しみを背負いながらショッカーと戦うというイメージがあった。
実際今作でも、ショッカー戦闘員に暴力を振るう事との葛藤、(怪人とて人という考え方からくるのだろう)人を殺す事との葛藤、出来ればかつての友を殺したくないという気持ち、仄かな恋模様、絶望からいかに希望を見出すかetc人間ドラマのオンパレードだ。
(話は逸れるが、ショッカーの改造を絶望からの救済と定義したのは原作にもある設定かもしれないが「成程!」と思った。)
そう、人間ドラマと庵野監督の相性は頗る悪いと思わざるをえない。
シン・ゴジラではワクワクした説明口調の台詞も今作ではかなり邪魔をしている。
(シン・ウルトラマンも同じような庵野節の台詞があったが、あっちは役者さんの好演や人間ドラマを極力排除してウルトラマンの物語に全ての焦点を当てた事でそこまで不自然に思わなかったのだろう)
この難しい庵野節を柄本佑さんなんかはうまいことものにされてて凄いなと感じた。
が、それ以外の役者さんは少し苦戦されてたように見受けられた。あ、もちろん竹野内さんや斎藤工さんはシンシリーズ経験者として自在に操っておられたが。
又人間ドラマという点で言うとハチオーグ編が惜しい。
というか、今回出てきた怪人達との闘いの中で1番ドラマ性を掘り下げられそうな所があったのに掘り下げられなかったのが残念。
良さそうな芽があったのにそこに水を与えず放置してしまっているようで本当に勿体無い。
とはいえ、ハチオーグのキャラと西野七瀬さんの奇跡的なマッチングもあってハチオーグ編が1番楽しかった。
こんなことを言うのはあまり憚られるが、ウルトラマンじゃなくてこっちの方こそ樋口監督に監督をお任せしても良かったのでは・・と思ってしまった。
冒頭の蜘蛛男戦のあのBGMがかかった時の「キタキタキタ!」感は異常。
アクションも今までのライダーシリーズのようなショーアップされたものではなく、リアルな殴り合いを演出したいというのはわかるが、にしてはカット割りが多すぎてわかりにくい。
アクションの味以前の問題だと思われる。