「どっちつかずの映画」シン・仮面ライダー ドラゴンさんの映画レビュー(感想・評価)
どっちつかずの映画
少々期待しすぎたのは否定できない。私は旧1号から全てリアルタイムで観てきたど真ん中世代。確かに現代に悪の秘密結社が世界征服を企むという設定はつらい。しかしショッカーの恐怖があまり感じられず、ショッカーにはショッカーなりの正義というか、大義がある様に描かれてしまうと、ライダーのヒーロー性が霞んでしまう。もっとショッカーの恐ろしさを過激に表現して欲しかった。一般市民が犠牲になったのはコウモリおじさんに操られた群衆くらいで、生々しい殺人ではなかったので現実感が感じられなかった。
アクションはカット割りで迫力を出す努力は買うが、大野剣友会やJACの関与しないアクションは気の抜けたコーラの様。特に本郷vs一文字の空中パンチ合戦はあまりに力学的に無理があり(空中では踏ん張りが効かないので強力なパンチは打てない)絵空事すぎたし、CGの出来も上滑りしていた。
ただ、ルリ子やヒロミ等女性の肌が実に綺麗に撮れていたのには感心。ただ、我々がライダー映画に求めているのはそこじゃない。
マガジン連載の石森版漫画の一文字の展開が好きな私は、ぜひ「ショッカーライダー達が本郷ライダーを殺してしまい、ショッカーライダーの内の一人(一文字)が本郷の後を引き継ぐ」という展開を入れて欲しかった。映画では、ショッカーライダー達は難なく倒してしまい、本郷と一文字の共闘のあとで引き継いでいたので、意味合いが違う。
二号ライダーとして登場するのではなく、ショッカーライダーが本物の跡目を継ぐ展開が好きだったのだ。
テレビドラマ版第1話や漫画13人の仮面ライダーラストのセリフ等、各所にオマージュが仕込まれてたが、あまりに趣味に走りすぎていた様に思う。それから、ショッカー側にしろ、ライダー側にしろ、もっと「死にたくない」という感情が無いと、ドラマに緊迫感が出ないと思う。みんなあっさり死を受け入れすぎ。私が末期ガンになったからこそ感じるのかもしれないが。
今回の映画はかつて熱狂した世代にとっては肝心のヒーロー的カタルシスに欠け、昭和ライダーをよく知らない一般映画ファンを新規ファンとして取り込む程の吸引力は無く、どっちつかずの印象が強かった。