「仮面ライダーのバイク重装備化はカッコ良く、浜辺美波は魅力的も、予想を良い意味で裏切ってきた庵野作品としては意外感に欠けたのは残念」シン・仮面ライダー Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
仮面ライダーのバイク重装備化はカッコ良く、浜辺美波は魅力的も、予想を良い意味で裏切ってきた庵野作品としては意外感に欠けたのは残念
庵野秀明 監督による2023年製作(121分/PG12)の日本映画。
配給:東映
タイトルが出てくるまでの映像はバッチリ、いけてると思った。血飛沫が飛び散るのに驚かされたが、エヴァンゲリオン風のリアリティ付与で、子供向き映画ではない宣言と見れば、新鮮でもあった。
変身と付随して起きる仮面ライダーが乗るバイクの重装備化も、カッコ良かった。重装備化での速度最大化の表現もお見事だった。バイクシーンのスピード感もgood。
仮面ライダーと共に闘うヒロイン、笑顔を見せず用意周到さを口癖とする浜辺美波も、綾波レイ的で、大変に魅力的であった。敵のハチオーグ役・西野七瀬も、妖しい微笑を絶やさず憎みきれないヒロインのライバルを表現し、その可愛いらしさと共に印象に残る演技であった。
池松壮亮演ずる本郷猛も、仮面ライダーとなった際の強大すぎる力と凶暴化を、ウジウジと悩む主人公で、シンジ君的というか、庵野監督的主人公として共感を覚えた。すでに大女優と思う長澤まさみが、サソリオーグの着ぐるみを着て,アクションシーンを頑張る姿も実に健気と感じた。
しかし、CGによる仮面ライダーのアクションシーンが酷かった。ビルの屋上等での闘いで、今時珍しく背景と上手く融合せず、折角の壮大なアクションシーンで、ちゃっちい感が満載となってしまった。
共通して犯罪者の暴力により父親を亡くした経験を有する本郷猛と森山未來の仮面ライダー第0号。そこからの対応、目指す方向性の違い、独裁者への隷属化による苦痛からの解放と苦しみながらの自立化は興味深いテーマではある。それを物語の背景に据えようとする脚本はチャレンジングとは思った。またもう少し上手く映像化したら、面白かった様な気もした。しかし今回は、観念的表現に留まり、あまり成功していない様に自分には思えた。
過去の庵野監督作品には廃墟、高層ビル群、電信柱と電線、真っ赤な海等、意外感のある映像美を感じていた。また、形態を変えていくゴジラには造形的な美しさも感じた。残念ながら今回はその様な美しさはあまり見られなかった。
そして、傑作映画「シン・ゴジラ」「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の庵野秀明監督作という過度の期待もあったが、今までエヴァンゲリオンやゴジラで体験してきた予想を良い意味で裏切られる、意外感がまるで感じられなかったのが、かなり残念であった。
監督庵野秀明、原作石ノ森章太郎、脚本庵野秀明、准監督尾上克郎、副監督轟木一騎、エグゼクティブプロデューサー白倉伸一郎 、和田倉和利、企画紀伊宗之、プロデュース紀伊宗之、プロデューサー小出大樹、ラインプロデューサー森徹 森賢正、アソシエイトプロデューサー川島正規、コンセプトデザイン庵野秀明、デザイン前田真宏 、山下いくと 、出渕裕、撮影市川修 、鈴木啓造、照明吉角荘介、録音田中博信、美術林田裕至、扮装統括柘植伊佐夫、衣装デザイン、柘植伊佐夫、装飾坂本朗、装置設計郡司英雄、ヘアメイク古川なるみ 、会川敦子、アクション監督田渕景也、編集辻田恵美、整音山田陽、音楽岩崎琢、音楽プロデューサー島居理恵 、本谷侑紀、音響効果野口透、助監督中山権正、脚本協力山田胡瓜、VFXスーパーバイザー、佐藤敦紀アクションプリビズスーパーバイザー、鬼塚大輔ポストプロダクションスーパーバイザー上田倫人、VFXプロデューサー井上浩正 、大野昌代、ビジュアルデベロップメントディレクター小林浩康、カラーグレーダー齋藤精二、カースタント&コーディネーター西村信宏、キャスティング杉野剛、スクリプター田口良子、製作担当片平大輔
出演
池松壮亮本郷猛/仮面ライダー、浜辺美波緑川ルリ子、柄本佑一文字隼人/仮面ライダー第2号、塚本晋也緑川弘、松尾スズキSHOCKERの創設者、手塚とおるコウモリオーグ、西野七瀬ハチオーグ、本郷奏多K.Kオーグ、上杉柊平背広の男、長澤まさみサソリオーグ、仲村トオル本郷猛の父、安田顕犯人、市川実日子緑川イチローの母、松坂桃李ケイ(声)、大森南朋クモオーグ(声)、竹野内豊政府の男、斎藤工情報機関の男、森山未來緑川イチロー/チョウオーグ/仮面ライダー第0号。