「舞台も観たけど映画も良いね」そして僕は途方に暮れる いも煮さんの映画レビュー(感想・評価)
舞台も観たけど映画も良いね
面白く刺激的な舞台を作る人=三浦大輔演出兼監督という印象。
松坂桃李主演の「娼年」では舞台上での生の裸の絡みがこんなに!!と驚きの連続で。裸・裸・裸!
のちに映画化されて見た時はよりテーマに集中して見ることができたのを思い出します。(それだけ舞台の全裸の濡れ場が強烈!)
2018年の藤ヶ谷太輔の「そして僕は途方に暮れる」もドールハウスのような舞台の作りであちらとこちらの部屋の中でそれぞれの人物が呼応して電話をしたり、LINEをしたりする様が描かれ斬新でした。(LINEの画面が舞台上に出るんです)
「そして、僕は…」のほうは大きなラブシーンやヌードもなく、藤ヶ谷太輔のパンイチでの生着替えシーンがあるぐらいでしたが。。。
シアターコクーンという狭い劇場の空間の中では他人の部屋をまんま覗き見しているような作りでしかも同時に複数の登場人物が喋るのでどっちかに集中すると一方を聞き逃すような演出です。それもまたリアル。
舞台のときは前田敦子へったくそだなぁ、怒鳴ってるだけじゃないか、、。と思っていたのですが、映画になったら良かったね。4年で演技力ついたのかしら?
舞台と映画が違うのは映画では裕一(藤ヶ谷太輔)主導で物語が展開していきますが、舞台では(出ずっぱりだと大変だから?)途中で里美(前田敦子)と伸二(中尾明慶)がくっつくパートが描かれます。なのでラストであっと驚かない。
裕一のお父さん役は板尾創路だったので、よりコミカルなダメ親父っぷりでした。
唯一、舞台のほうが良かったなぁ、と思ってしまった配役は裕一の姉。江口のりこが演じてて全然、凄みが違いました。
映像ならではの演出という意味では、裕一が働いてる居酒屋に入ってくる女性客を里美と見間違えたりする描写。ああいうのは舞台では表現が一見では難しいでしょう。
また、裕一の表情の演技などは舞台では到底遠くからは読み取れず、今回藤ヶ谷太輔の微妙な口の開き具合やら虚ろな目つきなど、何を考えて生きているのか測りかねる感じ、よく出ていました。上手いですね、彼。
特にタイトルどおり、“途方に暮れる“感を出すラストシーンが良かったです。