モーリタニアン 黒塗りの記録のレビュー・感想・評価
全184件中、1~20件目を表示
政治映画ではなく人間性についての映画
ある日突然、911テロのリクルーターの嫌疑で捕らえられたモーリタニア人のサラヒ。
物語前半では、サラヒが潔白かどうかについてはあえて明示しないまま、彼がグアンタナモ収容所に送り込まれるまでの出来事を比較的淡々と描く。
後半で、彼が収容所で受けた仕打ちとその後の顛末が明らかになる。内容のインパクトもさることながら、「自由の国」アメリカの中枢で横行する隠蔽体質と同調圧力に唖然とするしかない。
それにしても、黒塗りで開示したとはいえ、あんな暴虐を一応文書にして残すというのは、褒める気は全くないが内容と事務処理の几帳面さのギャップがすごいなと思う。外に出せない内容と自覚しながらも、内輪の倫理では正当な行為という認識だったのだろうか。
黒塗りの記録なんていうと、日本政府絡みの報道を連想する人は多いだろう。だが結局、特定の国家の特性というより、人間の作る組織ならどこでも起こり得ることではないか。
マクドナルド監督は、本作を「政治映画」ではなく「人間性」についての映画だと述べている。どの立場の人物も、正しいことをやろうとしたんだということは理解しておくべきだと。「無実のテロリストが善で、アメリカ人はみんな悪」というのも違う、現実はもっと複雑だとも言っている。
視点の偏りを減らすよう配慮しながら、エンタメ要素も大切にしたメインストリームの映画に仕上げる。このバランス感覚が素晴らしい作品なのだ。
それを、日本版公式サイトに掲載された識者コメントのいくつかや、リンク先の記事の一部が自身の政治的主張と結びつけ、台無しにしている。こういった題材の作品がそのように利用されることは避けられないが、少々残念だ。
911がアメリカ人に与えた衝撃は、日本人の想像を絶するものがあるだろう。
カウチ中佐はこのテロで親友を失い、スラヒを死刑にするための弔い合戦のような心持ちで裁判に臨もうとした。彼は幸い遺恨を凌駕する良心の持ち主だったが、これはむしろ稀有なことだ。
テリーは、そこまで強くいられない普通の人間の象徴だ。彼女の心の底にも、アメリカ人として911で受けたショックがわだかまっている。だから、弁護する立場でありながら、サラヒが犯人と思わせる文書が出てきた段階で一度は耐えられなくなった。
法律家としてどうなのかという見方もあると思うが、カウチ中佐のような揺るがぬ良心や、ナンシーのような強固な信念を持つ人間は少ない。テリーの弱さは駄目なものとして描かれたわけではなく、この物語を勇者だけのものにせずリアリティを担保する役割を果たした。
テロでアメリカ人が受けた心の傷は深い。それでも、恨みを晴らすために必要だからと無差別に生贄を作り出してはならない。誰もがそういった誤りに陥る心の弱さを秘めているからこそ、一人一人が自戒することでしか負の連鎖は断ち切れないのだ。
エンドロールで流れる、モデルになったスラヒ本人の明るく穏やかな姿に心が和むと同時に、無実の罪を着せることの残酷さに一層心が痛んだ。
なお、ストロボのような激しい光の明滅が結構長く続くシーンがあるので、苦手な人は注意してください。
黒塗りの原作のすごさ
本作の原作は、この映画でグアンタナモに収監されるスラヒさん本人の手記だ。本編中に、その手記を書くシーンが出てくる。政府の検閲によって黒ぬりにされてしまうという描写があるが、実際に出版された本も黒塗り状態になっている。日本語版も発売されているので、是非原作と本作を比較してみてほしい。
本作の主人公は、ジョディ・フォスター演じる弁護士、ナンシー・ホランダーだ。原作には彼女は登場しない。グアンタナモでの過酷な日々を綴った手記なのだから、当然だが、その手記をそのままストレートに映画化しなかったのはなぜなのだろうか。やはり、アメリカの恥部はアメリカ人によって暴かれたというストーリーを必要としたのだろうか。もちろん、ホランダー氏がスラヒさんの解放のために尽力したのは事実なのだが。
今年はタリバン政権の復活もあり、この20年間のテロとの戦いの正当性が揺らいだ年だ。その年にこの映画が公開されたことは意義のあることだ。そして、できれば、原作も一緒に読んでほしい。スラヒ氏の真の崇高さや強靭な精神性とフェアさは原作にこそある。
権力の闇、人道の危機、不屈の信念。日本にとっても他人事ではない
9.11の後、米軍のグアンタナモ収容所でひどい拷問や虐待が行われていたことは日本でもひところ大きく報じられたので、名称ぐらいは覚えている人も多いだろう。本作の主要人物の1人、モーリタニア人(=モーリタニアン)の青年モハメドゥ(タハール・ラヒム)は、同時多発テロに関与した容疑で逮捕され、同収容所に送られる。これはモハメドゥの手記と関係者の取材に基づく実話ベースのドラマだ。
裁判も受けられないまま長期間拘禁されているモハメドゥをプロボノ(公共善のため無報酬)で弁護することになるのが、人権派の弁護士ナンシー(ジョディ・フォスター)。一方、軍属の検察官ステュアート中佐(ベネディクト・カンバーバッチ)は、「モハメドゥをテロ首謀者の死刑第1号にすべく起訴せよ」と命じられる。
カンバーバッチが出てきたあたりで、有罪にしたい検察側と無実を訴える弁護側が争うありがちな法廷劇かとも思ったが、ほどなく早合点だと気づく。ステュアートは、調査に着手して早々に供述書などの資料に不審を抱き、軍属の立場よりも法律家でありキリスト教信者である自身の心の声に従い、真実を求めていくのだ。
ストーリーはこの3人の視点で語られるが、ナンシーとステュアートという、立場は違えど不屈の信念で公正さを貫こうとする2人の法律家の奮闘はリアルタイムで描かれる。一方、モハメドゥのパートは主にナンシーが受け取った手記に基づく回想シーンとして、4:3のスタンダードサイズで区別すると同時に、横幅の狭い画面比率で理不尽にとらわれの身となった閉塞感を強調してもいる。
この劇映画は製作面の主に2点で、公正さを確保できているように思う。第1に、弁護側のナンシーも検察官のステュアートも実在の人物であり、双方から脚本作りの段階で話を聞いていること。つまり、片方の立場から一方的な主張をするプロパガンダではないということだ。
第2は、本作がイギリス映画であること。カンバーバッチが共同経営者を務める英製作会社SunnyMarchが映画化権獲得に動き、監督のケヴィン・マクドナルドも英国人だ。もしハリウッド製作だったら、米軍の黒歴史に光を当てる映画を果たして客観的に作れたかどうか。米主導の対テロ戦争では、ブッシュとラムズフェルドが「大量破壊兵器」の大嘘で始めたイラク戦争に、当時の英ブレア政権が参戦したのは不当だったと、のちに英調査委員会が結論づけた。英国人なりの贖罪と名誉挽回の意識が、カンバーバッチたち製作陣にあったのではないかと想像する。
それにしても、本作を観て痛感するのは、強大な権力を持つ組織が個人の人権を蹂躙する構図という、悲しき普遍性だ。森友学園をめぐる公文書の改竄を指示された財務局職員の赤木俊夫さんが自殺した事件。在留資格を失ったスリランカ人ウィシュマ・サンダマリさんが収容された名古屋入管で死亡した事件。ブラックな労働環境で精神を病んだり自殺したりする人も大勢いる。人権を侵害され、非人道的な扱いを受けた人たちや遺族に対し、公正で誠実な対応がなされない社会でいいのだろうか。日本で生きる私たちにとっても、他人事ではない。
「なぜゴールデングローブ賞受賞の本作がアカデミー賞でスルーされたのか?」という理由を考えてしまうほど【必見】と思える作品!
本作は、今年の第78回ゴールデングローブ賞で主演男優賞と助演女優賞にノミネートされ、ジョディ・フォスターが見事に受賞しています。監督はドキュメンタリーに定評がありアカデミー賞作品でも知られるケヴィン・マクドナルド。「ブラック・セプテンバー 五輪テロの真実」でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞し、「ラストキング・オブ・スコットランド」では、主演のフォレスト・ウィテカーが、アカデミー賞を含め、その年のアメリカの主要映画賞の主演男優賞をほぼ独占しました。
それ故に、徹底的にリサーチし、映画の始まりには「This is a true story」と、あえて通常の「based on a true story」となっていないところが実に意味深です。
さて、本作の弱さをあえて挙げると、タイトルの意味がピンと来ない、という事でしょう。これは、私も同感で、だからこそ映画を見て初めて驚愕の真実を知る事ができるようになっているのです!
まず「モーリタニアン」とはアフリカの地名で、そのモーリタニアン出身のモハメドゥ・スラヒが2001年の9.11の2か月後にアメリカ政府にテロの首謀者の1人として拘束されます。
テロリストを擁護しようとは思いませんが、もし彼が全くの事実誤認で拘束され、キューバに作られたアメリカの収容所で自供の強要などを無理矢理させられていたとしたらどうでしょうか?
まさに、2015年に【検閲によって黒く塗りつぶされたモハメドゥ・スラヒによる「手記」】が出版され、衝撃が起こり、たちまちアメリカではベストセラーとなるなど大いに話題となり、問題視されるようにもなります。しかも、この時点でモハメドゥ・スラヒはまだ収容所に拘束されている状態です。一体、何が起こっていたのでしょうか?
「これこそ映画にすべき題材だ」と本作のプロデューサーとしてベネディクト・カンバーバッチが映画化に向け動き出します。
ちなみに、ジョディ・フォスターはアメリカ政府に戦いを挑む弁護士役で、対するベネディクト・カンバーバッチはアメリカ政府から「有罪にしろ」と急かされる軍の弁護士役を演じています。
本作は、なぜかアカデミー賞ではノミネートすらされませんでしたが、それは何かの意味があるのだろうか、とさえ考えてしまいます。
「アメリカの闇」と言っても過言ではない本事件を、まさに、見て知るべき【必見】と思える作品となっています!
【予備知識】
本作では「MFR」という言葉がよく出ます。この「MFR」とは「Memorandum For Record」の略で、要は、収容所での「尋問の際の記録用覚書き」を指すことを事前に知っておきましょう。
本作は実質的に裁判案件の作品のため、両方の弁護士が証拠の裏付けで必要不可欠となる存在で生命線となるものです。
硬派な魅力を放つ人間ドラマ
硬派な魅力を持つ人間ドラマである。さすがマクドナルド監督。彼が手掛ける実話ベースの物語からは、題材の放出する”地熱”がじわじわと伝わってくるかのようだ。今回はグアンタナモ収容所という今や世界中の誰もがそこで行われていたことを知っている題材へと向き合いつつも、それは例えば「グアンタナモ、僕達が見た真実」(06)とは違い、複数の立場の視点を絡ませながら全体像を構築していくタイプの作品に仕上がった。すなわち、人権派の弁護士と検察側の米軍中佐という立場の全く異なる人物たちが”隠された実態”へ流れ着く過程をあぶり出すのだ。全ての中心にはタハール・ラヒムがいて、ジョディ・フォスターとカンバーバッチが各々の領域にて抑制された持ち味を添えていく。彼らの織りなすパズルのどこが欠けても弱くても、強すぎても、この絶妙なドラマ構造は成立し得なかったろう。非常にスリリングであり、かつ感動的な余韻が残る一作であった。
テリーの必要性がよく分からん
映画にありがちな若者の成長を見守るサブストーリーを入れたかったのか必然性のないテリーがチョロチョロ出てくるけど正直まったく存在意義が見いだせなかった。それほどつまづいてもないし、それゆえそれほど成長もしてない。興行的にかわい子ちゃんを一人入れておきたかったのか、でもそこまでかわいくないしな、とただの雑音。あとちょくちょく出てくるセキュリティクリアランス、今なら日本でも話題になってるからフムフムと思えたけど公開の頃に見てたら訳わかんなかったかも。親切な刑務官もまあホントにいたんでしょうけど、グアンタナモを悪く書きすぎないためにムリヤリ立たせて表現してるようで印象悪し。とまあいろいろ気になるところはあるものの、ストーリーがすごすぎて全部吹っ飛びました。具体的な拷問の描写もおぞましい。無実が証明されてからさらに7年も拘束?しかも人権派に見えるオバマ政権下で?夢も希望もないわよね。でもエンドロールでの本人の幸せそうな映像を見てすべておさまりました。
☆☆☆★★(前半) ☆☆☆☆(後半) ちょっとだけ。 前半は正直な...
☆☆☆★★(前半)
☆☆☆☆(後半)
ちょっとだけ。
前半は正直なところ、何度かウトウトしかけたのですが。後半になり、グアンタナモでの真実が明らかになる場面。
過去に、これまで何回となく拷問場面を映画では描いて来た。
残酷描写には定評のあるマカロニウエスタンであったり、ホラー&サスペンス映画やスラッシャースリラー等。
中でも、若い頃に観たから特に印象に残っている…ってのもあるのだけれど、『時計じかけのオレンジ』のベートーヴェン第九。
キューブリック特有のクセの強さ満点の演出に、異様な光景でありながらもエンタメ感抜群の凄さ。
それと比べてしまうと、いささか分が悪い気もするものの。何しろその拷問は、映画で描かれていた通りに、現実に長期間に渡って行われていた事実。
それだけに。そのリアルな拷問の数々を見るにつれて、「いやいや、これはキツイ💧(特に)アレなんか絶対俺には耐えられん!」と思うこと必至。
そんな後半は、どんどんと目が離せなくなり、思わず見入ってしまった。
しかし、、、実際の人物に似せていたとは言え、ジョディ・フォスターの老け方にはちょっとビックリ。
こちらは何せ、彼女が子役時代からの(こちらの一方的な…ですけど)お付き合いですからねー💦
ところで、、、上映前の予告編には、年末に公開される予定の或る日本映画が…
テレビで人気の法廷ドラマの劇場版。
本編終了後に振り返ったところ、その予告編とは色々な違いがあり過ぎてついクラクラっとしてしまった。
まあ、エンタメ性に振り切って描くのは別に悪いことではないですけど(。-_-。)
2021年10月29日 TOHOシネマズ錦糸町オリナス/スクリーン6
グアンタナモ収容所/地獄からの手記
要は善意の第三者を冤罪から救った実話に基づくノンフィクション。だが残念ながら又新たな冤罪なる被害者が突然逮捕されて刑務所に収監されるのは間違いない。何故かと言えば軍事政権に法治国家の概念が通じないから。軍国主義に法律が通じないのは大日本帝国だけではない。911時代のブッシュ大統領は法治国家では珍しくタカ派の軍国主義でした。
恐ろしくおぞましい
人間は、自分に直接何かをした人じゃなくても、ここまで残酷でおぞましい行為ができるのか…という事実にゾッとしました。
同時多発テロ以降、疑わしきは罰せという雰囲気があったことは疑いようがありません。
教会でのカンバーバッチのキリスト教の祈りのシーンと、主人公たちのイスラム教の祈りのシーンが美しかったです。なんというか、無宗教のわたしからしたら、どの宗教も似たようなこと言ってるのになぜこうなってしまうのか…とも思いました。
釈放された御本人が、これから平穏に生きて行けますように。
人間性を失った獣の集団
前半は少々平坦な感じだが徐々に盛り上がって映画として面白い作品だった。もちろん内容もいい。
タハール・ラヒム演じるスラヒ、ベネディクト・カンバーバッチ演じる中佐、ジョディー・フォスター演じる弁護士、この三人は副題にもなっている「黒塗り」に抵抗した人物たちで、彼らの視点で物語を紡ぐ場合、どうしても変化がなくなる。彼らは状況を動かせる立場にいないからだ。
つまり、ストーリーの部分はどんなことが起こっているのかしか語られず、どうしてもドラマチックな展開を生みにくい。ストーリーがよく分からないというレビューの方もいるが、そりゃそうなのだ。そんなものは見せてもらえていない。
それでも演出によって面白さを生み出した手腕は中々のものだと思う。
スラヒが手記の中で語ったことのシーンでは画面の両端が切れ、昔のこと、過去回想であり、切られた両端の黒い帯は、手記の内容の一部が黒く塗られたことを暗示しているようでもある。
そしてなにより、中佐と弁護士が機密に触れ、交錯するようにスラヒの回想になる後半のカットバックは嫌でも興奮してしまう名演出だった。
こんなカットバック、クリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト ライジング」以来だ。
最後に内容について。
ラストのテキストで、収容者が七百何名、うち起訴されたのは8名と出る。
それだけ、何の証拠もないのに拘束されていた人がいたという事実におののく。
幾人かの人物が、証拠などないのに証拠はあると言い張る姿は実に恐ろしい。誰かを罰しなければならない。その誰かは誰でもいいと言わんばかりだ。もうただ、自分のやるせない気持ちを鎮めるためだけに生贄を求めている。
ナチス政権下の秘密警察のように、怪しいから逮捕、何となく逮捕、とりあえず逮捕、そんなアメリカは自分のことしか考えない人間性を失った獣の集団に見える。
特に理由なくすぐに拘束しちゃう中国なんかは一応、一応、一応自国民なわけで、他所の国の人を勝手に拘束してしまうアメリカはもっとヤバいように思える。
あまりに都合が悪くてアメリカ単独では作れなかったのか本作はイギリスBBCと共同制作の映画だ。
多分きっとアメリカの保守からものすごいクレームきちゃうんだろうな。
恐怖
9.11テロはアメリカにとっては誰かには必ず報復をしないといけなかったんでしょう。
政府が法を超えてたが司法が機能しなかった。
ただ、尋問の記録を残してたり、
人権弁護士によって何が行われてるか世間に晒すことができたことは
一定、アメリカのすごいところだとも思う。
ノンフィクションって結構面白いやつが多い気がする。
ジョディ・フォスターちょっとおばあちゃんになったなあ。
全てのひとに固有の権利を尊重する
憲法には但し書きはない。憲法が人権を保証するのに、terms and conditions はない。
人権は優しさとか思いやりとかじゃないって100万回言っても日本の人には理解されない。このような激烈な人権侵害、それに対する戦い法廷闘争を見ればわかること。グアンタナモに拘留されていた911関連の収容者については断片的に知っていたが今も多くの謎がありその一端を行き詰まるようなこの事実、本そして映画として強く告発されていることに敬意を表したい。、ブッシュとラムズフェルドは論外だがオバマ政権になってもさらに7年拘留延長されていたことへの驚きだと残念さ。文書のシステマティックで厳格な管理、、これも日本にはなさそう。
小さな隙間から見える景色、情報、漏れ聞こえる音を丁寧に時に苦しい中でも逃さず自分の中に取り込んでいたモー。看守ともやがて少しばかりの体温レベルのつながりができる。冒頭のモーリタニア砂浜、テントの中の結婚式、車で連行される夜の街灯に佇む母親、キューバの眩しい空、取り調べ室の冷たい蛍光灯、窓のない独房、房から出た時の眩しさ、ラムズフェルド案件として異常な拷問が始まった時の点滅する蛍光灯、運動場から仰ぐ青空、隙間から漏れる光、、眩しい光の中で思う故郷モーリタニアの海、家族たち。エンドロールで出てくるご本人の映像や写真、明るくて諦めないユーモアも信仰心も忘れない素敵な人自分の人生を切り開きみずからを救った人となりがよくわかる。
助手のテリは最初は思いやり、優しさ、憐憫という感情からモーを信じ支援しようとする。ジョディフォスターえんじる人権一筋な弁護士はその人が有罪かどうか罪を置かしたかどうかに関わらず人権はいかなる場合にも如何なる個人にも等しく例外なく尊重されなければならないないと。
その人を死刑にすること、テロに勝つことを命題に担当するも法律が人権が守らめないことに驚き行動する軍人。
テロとか、人権とか、多分に気分、いや集団的怠慢と狂気により偏った世論や気分が形成される。最初感情に流されがちなテリも、911で友を亡くした軍人も。
それにしてもこのような作品、書籍を映画化し、それをジョディやカンバーバッチのようなスターが堂々とやってくれることがすごくて、日本もこうなってほしい。
そして全く人を人と思わないような酷いことが世界中でアアメリカでも日本でもどこでも連綿と続いていること、なんか映画見ながら、あまりにもダメな社会に好すぎるから死にたくなる。
ジョディフォスターが良い。とても良い。
睡眠剥奪 性行為強要 水責め
グアンダナモで行われたアメリカ合衆国の拷問の実態が明らかになる。
2010年に裁判に勝つが、
オバマ政権は拘束を続け、
2016年10月に釈放
モバメドゥ ウルドゥ スラヒ は
本を出版する
2018年 アメリカ人の弁護士キティと結婚する
民主主義国家を声高に叫び世界の分断を食い止める国の物語。
政府関係者は間違いなくコメントできないだろうけど、もう一方の言い分も聞いてみたい、と思っていたところでの、NHK BS 世界のドキュメンタリー「“復讐”(ふくしゅう)からの解放〜グアンタナモ その後」。
映画とセットで観るべき作品。赦しがダイヤモンドを超える強度であることを、実感。
信じがたい事実の記録
ジョディフォスター扮する弁護士ナンシーホランダーに米国同時テロの主犯として逮捕されたまま戻らないタハールラヒム扮するモハメドゥスラヒの家族から調べてほしいと家族から依頼が来た。米国政府としてはモハメドゥスラヒを死刑第一号にしたいとしていた。
好きな女優ジョディフォスターの名を久しぶりに見てこの作品を観たが、ジョディフォスターもすっかり年配の様相になってしまっていたな。人間誰しも歳取るがちょっとびっくりするほど老け込んでいたよ。
作品はさすがのジョディフォスター主演作として遜色ない問題作だった。事件が事件だけに容疑者の扱いは酷いね。モーリタニアンで特別優秀だったからドイツへ行ったのにアルカイダで訓練を受けたとか尋問されるばかり。一方ベネディクトカンバーバッチ扮するスチュアートカウチ中佐はスラヒを死刑に導く様に立件を義務付けられていた。
信じがたい事実の記録に驚愕したな。こういう作品が世に出るのも勇気の賜物かもしれないね。
この事実もすごいけど、それを映画化する事もすごい
冒頭に「この作品は事実」という言葉にすぐ作品にのめり込んで観ました
よくある「事実に基づいたストーリー」ではなく「事実」、製作した方々の想いが伝わってくるような気がします
ジョディ・フォスター、ベネディクト・カンバーバッチ、タハール・ラヒム、この3人の演技が素晴らしいのは言うまでもなく
こういうアメリカの闇の部分を映画化するところが本当にすごいです
そういう事ができる製作国のイギリスと当事国アメリカ、日本では考えられないような
アメリカにとっては「正義」ではなくて「裏切り者」の扱いをされていた弁護士と軍人さん、正しい事をする勇気もすごいの一言です
あんな拷問をしているグアンタナモ刑務所なのに、お土産屋さんがあったりビールやサーフィン、そのギャップに拷問をしているアメリカ側の後ろめたさが全くない事を感じられて、さらにアメリカの闇の部分を見た気がしました
「正義」とはその人それぞれの視点によって大きな差があるのも当然ですが
人権問題に取り組む人達が必要だと思いましたが、もしモハメドゥが冤罪じゃなくてうまく証拠を隠していただけならどうなるのだろうとも思いました
「正義」の種類
単純に言い表せば
・プリンシパル(原理原則)に基づく正義:法に忠実であるか
・感情に支配された正義:生贄を求め彷徨う行動 の戦いをうまく表現していたと思います。
そういう感想です。
しかし、クーリエもそうですけど、拷問、尋問、独房での表現がエグいですね。日本はいい国ですよ。
ちゃんとした人がいて良かった
恥ずかしながら、こんな話は知らなかった。しかも今も続いてるとは。
日本も冤罪事件が問題になったりするけど、法治国家で間違った方向に行くと本当に厄介。勝訴した後も7年拘束て。しかも正義っぽいオバマ政権の時に。拷問を認めようとしないアメリカ。ちゃんとした人がいないのは怖い世の中。
実話を元にした作品は、本人達の画像や映像が出るとこが好き。明るすぎるのが意外だったけど、でも良かった。
ジョディフォスターはやっぱり歳食ったけど、カッコ良かった。
評価:3.8
全184件中、1~20件目を表示