劇場公開日 2021年10月29日

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「黒塗りの原作のすごさ」モーリタニアン 黒塗りの記録 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5黒塗りの原作のすごさ

2021年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作の原作は、この映画でグアンタナモに収監されるスラヒさん本人の手記だ。本編中に、その手記を書くシーンが出てくる。政府の検閲によって黒ぬりにされてしまうという描写があるが、実際に出版された本も黒塗り状態になっている。日本語版も発売されているので、是非原作と本作を比較してみてほしい。
本作の主人公は、ジョディ・フォスター演じる弁護士、ナンシー・ホランダーだ。原作には彼女は登場しない。グアンタナモでの過酷な日々を綴った手記なのだから、当然だが、その手記をそのままストレートに映画化しなかったのはなぜなのだろうか。やはり、アメリカの恥部はアメリカ人によって暴かれたというストーリーを必要としたのだろうか。もちろん、ホランダー氏がスラヒさんの解放のために尽力したのは事実なのだが。
今年はタリバン政権の復活もあり、この20年間のテロとの戦いの正当性が揺らいだ年だ。その年にこの映画が公開されたことは意義のあることだ。そして、できれば、原作も一緒に読んでほしい。スラヒ氏の真の崇高さや強靭な精神性とフェアさは原作にこそある。

杉本穂高