茜色に焼かれるのレビュー・感想・評価
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映画とはこれほどの力を持っているのか
本当に素晴らしいものと出会ったときは言葉として消化されない。
ストーリーが積め込みすぎだとか、ラストが勿体ないだとか色々あるんだけど、そんなことが本当にどうでもいいと思えるくらい圧倒的な映像表現。
シネスコスクリーン一杯に映し出される理不尽な現実と、ジェットコースターの如く浮き沈みする状況に感情を操られ、スクリーンから溢れ出す怒りと熱量が、"言葉として表せないもの"となって全身に、心臓の鼓動と共に、血液と共に、流れ出す。
コロナ禍の映画、と一口で分類されてしまいそうだが、この作品は芸術としての力を秘めている。演技とか撮影とか音楽とか色々あるんだけどいくら語っても野暮だ。
刺さる人は刺さるし、刺さらない人には刺さらない。
ただ鬱のなりかけみたいな状態の自分はこの映画に救われた。映画で救われるなんて本当にあったんだ。滅多に泣かないのに何故だか涙が溢れ出した。
「まあ頑張りましょう」なんて虚無な言葉が印象的だけれども、映画自体はとてつもない励ましのメッセージを孕んでる。明日からも頑張って生きてみよう。そんな勇気を与えてくれる。
映像ってこんなに凄まじい力を持ってるんだ。傑作。
やっぱり尾野真千子が好き
尾野真千子さんが好きなので、尾野さん分を多量に摂取できて幸せだった。深夜ドラマの「おかしの家」が、全ドラマで十指に入るぐらい好きなので、たまらんものがある。いいなあ、いいなあ。
こういうので早くに死んじゃった人ってだいたい聖人キャラなんだけど、この映画のオダジョーはそうでもないのがどんどん分かってきて、それでも愛をそそぎまくってる母ちゃんのかっこよさにますますシビれる。
クズい人が次から次へと出てくるので、友達とビール飲みながら協議してクズ王を決定したい。早くコロナ終わらないかな。
片山友希さんも好き。『君が世界のはじまり』もよかったんだよ。次も楽しみにしたい。息子の人もよかったけど、途中で急に筋肉ついて日焼けしたのがわざとなのか、映画のつながりを無視した俳優個人の青春が撮影期間中にあったのか、どう見るのが正しいんだろう。
最後急にポップな感じに締めてくるの何なんとは思うけど嫌いじゃないです。
単なるフィクションでは終われない。
世界の9割は理不尽
息子のすっとぼけた感じに救われた
金曜日のスタンプ会員デー昼過ぎの回にいつもの映画館
客は10人くらいかな
本日は休暇だったので鑑賞前に公園のベンチでビール
家からこっそり持ち出したおつまみとともに
保冷剤も持ってきたので缶ビールの冷たさを保持
マスクを外しラジオを聴きながら たまらなく幸福なひととき
で 映画の話 期待通り 素晴らしかった
コロナの話も織り込まれていて
監督の社会の理不尽さへの怒りが投影されている
監督自身が編集も行っていて
エピソード毎のバランスがとれていない印象があったが
そういうところがむしろ好ましく感じられた
きっと膨大な映像量をどうにか2時間半に収めたのでは
老人の暴走事故とか子宮頚ガン 肉親からのレイプとか
シリアスなエピソードも多いが作品全体にはユーモアがにじむ
息子のすっとぼけた感じに救われた
息子が床に股間を擦り付けているところを
淡々と見る母の画はなかなかだ
旦那の昔のスケベなバンド仲間 教師 尾野真千子の初恋相手
花屋の店長 風俗の客 死んだダンナの元愛人
息子をいじめる連中…
どいつもイヤな奴らだが記号的な役割でなく丁寧に描かれている
それぞれの理屈で生きていることがうかがえる
そして酷い目に遭うこともない(あ 初恋相手は遭ったか)
息子の成績が良すぎるエピソードの意味合いは
よく分からなかったが その後の尾野真千子の表情が幸せそうで
そういうところを描きたかったのかと
風俗嬢を演じた女優よかった 居酒屋のシーンがいい
ろくでもないオヤジとかヒモを結局かばっているところは
映画ながらつらいものがあった
映画の中だからこそ救ってほしかった
永瀬正敏はカッコよすぎ さすがに最後はありえないかと…
でもまぁ全てを許せるいい映画だった
出演者のプロフィールとかレビューを見るのが楽しみだ
プロデューサーに竹内力 リキプロダクションの名
ここでもニヤリ 出てもよかったのに
尾野真千子に魅せられた144分
頑張れが命令口調で駄目なら「まあ頑張りましょう」でいいじゃん
2021年映画館鑑賞53作品目
6月21日(月)フォーラム仙台
尾身会長や玉川徹が観たらニッコリの徹底的なコロナ対策
思わず笑ってしまう
日本の現代劇といえばここ数年東日本大震災を絡めることが多かったがこれからはコロナを取り上げるのがトレンドになりそうだ
石井裕也監督の代表作と言っても過言ではない
個人的にはインディーズ時代の『ガール・スパークス』が1番好きだが
全体的に胸クソ悪い
とても不愉快
不幸の連続でも笑えるコメディー映画は過去にいくらでもあるがこれはそういった種類の作品ではない
それゆえに神社の乱闘シーンは痛快だし田中良子の一人芝居はインディーズ時代からの石井裕也監督らしい笑い所
教室での先生と良子の距離も笑える
冒頭の斜め下にたしか「田中良子は芝居が得意」という字幕が出てくるが映画のタイトルではない
本編で家賃とか時給とか食事代とか生活に纏わる値段がしょっちゅう登場するのがこの映画の特徴の一つ
具体的で親切な情報でも年月が経てばいずれ夏目漱石の『坊っちゃん』のようにわかりにくいものとなるだろう
交通事故で夫を亡くした妻と中学生の息子の奮闘記
良子は元女優で元カフェ経営者で今はホームセンターの生花部門と風俗店従業員の掛け持ち
尾野真千子の芝居がとにかく素晴らしい
怒りや悲しみの表現がやっぱり非凡
特に居酒屋のシーンが好き
息子純平は読者好き
特殊な環境で本を読む
全て父の遺品のようだ
塾にも行かず家で勉強するわけでもないのに成績はトップクラス
『エスパー魔美』の高畑さんみたい
風俗店の同僚ケイを演じた片山友希も素晴らしかった
彼女の出演作品は何本か観たはずだが記憶にない
スレンダーな高岡早紀という印象
弁護士役の嶋田久作の憎たらしさもたまらない
世の男性にとっては朗報
尾野と片山のオッパイがちょっとだけ拝める
キャラクターの言動に共感できないと映画を楽しめない人には向いていない
僕は必ずしも共感は必要だとは思わない
だって世の中みんな違って当たり前じゃん
みんな同じだよねって教育受けてきたのかもしれないがそんなもの嘘っぱちだよ
純平を虐めた挙句に放火するよう連中はそういった人たちのなかでも最低最悪の部類かもしれない
床に擦り付ける自慰行為はおすすめできない
なんか痛そう
防弾ガラスも突き抜ける冴羽獠のタフなチンコのようならともかく
親に見つかったら匍匐前進してたと誤魔化せるかもしれないから案外いいかも
僕は潰れるのが怖いのでやりません
尾野真知子の凄まじさ
女優、思い切り吼えろ
2021年ベストムービー!⭐️⭐️✨
この世に生きている意味が見出せなくなった人たちが、自らの命を絶つことも、その人の自由な選択なのかも知れない…。
でも、それはあまりにも悲しい選択だと思う。
こんな世の中だから、仕方が無いのか?
いや、そんなことはないはずだ。
まぁ、頑張りましょ…ってハナシよ
平日の夕方、貸し切り状態の劇場で観賞。
石井裕也監督、「青色」の次は「茜色」か。
尾野真千子がアッパレな体当り。
事故の加害者側が謝らないから賠償金を受け取らないとか、夫が外で作った子供の養育費を夫の死後も払い続けるとか、普通できることではない。
頑張りましょ…の範疇を越えているのだが、尾野真千子演じる田中良子は頑張り続けるのだ。
息子の純平(和田庵)が母の行動の意図を図りかねて、やり場のなさから貧乏ゆすりをする。
ところが、その癖は母親譲りだったことが後に分かる。
居酒屋でケイ(片山友希)相手に遂に思いの丈をぶちまけた時の尾野真千子の貧乏ゆすりには凄みすらあった。
これは、強烈なキャラクターである田中良子が主人公だが、「いい男」の少年とダメな大人の男たちを対比して我ら男の観客に突きつける、男のための映画だった。
市営住宅の家賃が安いのは税金のお陰…だとするとそこで暮らしている人たちは税金から生活費を得ていることになるのか?
中学校の不良先輩に言われたことを純平が気にするのも分かるが、恥じることはない。
あの不良たちにそういうことを吹き込んだ大人がいるはずで、子供たちのイジメは結局のところ大人たちの価値観が産み出しているんじゃないか!
教師が態度を一変させるほど純平は高い学力の持ち主だった。
頭がいいなら純平は将来偉くなって、あの不良たちの上に立つ存在になってほしい。
そうなっても、きっと純平は彼等を見下さず、手を差し延べるんだろうな…
「純平くん、いい男」とケイに言われなくても、彼は彼女を本気で守りたいと思っていた。でも、中学生の男の子なんて、社会ではたいした力はない。シータを守るパズーになんかそうそうなれないのだ。
純平の悔しさや無力感こそが、男の子が男の子である証。我々かつての男の子の胸にしみるではないか。
一方で、良子の周囲の男模様はある意味辛辣だ。
死んだ夫(オダギリジョー)だけがファンタジーで、ほかの男たちは皆リアルでダメだったり悪だったりな男たち。
よくもまぁ、これだけダメ男のパターンを並べられたものだと思う。
そして、このダメ男たちのどれかに自分が当てはまりやしないかと胸に手を当てたなら、まだ心がある証拠かな?
♪また一つ、女の方が偉く思えてきた。
♪また一つ、男のズルさが見えてきた。
(by河島英五)
痛々しいほど自分に素直。文句なく尾野真千子の代表作!
メラメラと青い炎のように燃える尾野さんが「今」を描きます。
大好きな女優さん尾野さん主演作。観ないわけがない、、、、ってことで鑑賞です。
本作は楽しい作品じゃありません。爽快感も溜飲が下がこともなし。もちろん、全米も泣きません。「負の現実」が怒涛のロイヤルストレートフラッシュで迫ってくる作品です。今の日本の中における不条理を、社会的弱者の現実をこれでもかと見せつけてくれます。
同じ法、ルールの中で生きてるのに、強者はより強く、力なき者たちは集団となりマイノリティを挫く。弱者はただただ耐え忍ぶ。さらにこの時期だからこそ描けるコロナ禍が引き起こす負。女性という立場がもたらしてしまう負。食べきれないほどにテーブルに「今の日本」が並びます。本当にこれでもかと。さらに、その弱者が選ぶ未来まで提示します。
こんな社会でいいんですか?あなたたちが生きてる世界ってこれですよ?と監督が問いかけてきているようです。ただ、どんなに不条理でもどんなに打ちのめされても生きるしかないのが我々なんだと思いますが、なんとも悲しい話です。不条理に叩きのめされ、自分を押し殺し、感情を鎮め、ただただ辛い社会の中生きる意味を見出し生きて行くなんて・・・辛いですよね。
そんな辛い社会に生きていく者は、暗黒の夜と昼間の狭間を漂っているのかもしれません。綱渡りのようにふらふらと落ちそうになりながら、なんとか夕焼けの中バランスをとって生きているようです。そこに留まるか、暗い世界を選択するのか?。バランスと取り落ちずに食い止まっているのは「生き甲斐」あってこそなのでしょうね。生き甲斐が有りさえすれば、夕焼けの茜色の空の色に染まりながらもなんとか生きていける、人生の暗い夜に落ちていくことないはずだと・・・。そんな応援歌の作品であってほしいと思いたいです。
と、思う反面。本作は監督からの痛烈な「皮肉」も込められている気がするんです。ずっと引っかかってるのは、冒頭画面右隅に出る文章です。
「田中涼子は演技が上手かった」
この演技とはなんぞや?と。この不条理が立ち込め、弱者を痛ぶる世界で生きていくには、自分の本心を演技で欺きながら、心配する周りの人達に演技で安心させながら、このくだらない社会を生きているために「あなたは演技して生きているんですよ!」と。そう田中良子は僕たち自身の姿なのではないでしょうか?「まぁ、頑張りましょう」はおまじない。ホントの気持ちは抑え込み、生きていくために大丈夫な自分を演じ切るための。良子に対して持つイライラ、違和感は実は自分たちに対してのものだったのではないだろうか?と。「変える努力せずに乗り切る演技をしてるよね?それでいいの?」って監督がシニカルに言ってきている気もするのです。
こんな2つのメッセージが込められているんじゃないかな〜?って勝手に思ってますけどね。
本作は強い描写と強いメッセージがふんだんに盛り込まれ、それを尾野さんはじめ、演者さん達のの魂が込められた演技で、説得力200%で届けられる作品です。観たら何かが解る、何かが変わるというものでは有りませんが、日々の生活の中で、人生で大きなアクセントをつけてくれる一本ではないでしょうか?
本作ではそんな不条理社会をクローズアップしていますが、ちょっとだけプラスも描かれます。それは人間関係の中で生まれるものです。ほんのちょっとですが。それもまた今の世界ですよね。
ただ一点、良子がなぜに自ら不幸を選んでいくようなストーリーになってしまったんだろうか?という点だけが、納得行かなかったんですよね。これほど生きることに、息子と生きることに全身全霊をかける人物が、経済的な部分で自我を通すかなぁ?ってのが僕にとっては疑問で、それがずっと鑑賞終了まで腑に落ちなかったんです。この不幸って、良子さんが選んだ不幸ですよ?もっと考えて、他力を頼って行動した方が良かったんじゃない?って。ストーリー作るための不幸の連鎖感が、僕としてはフィットしなかったんですよね。その点加味の評点です。
どれが本当の自分か。
最後が、、、茜色なんとかならないのか
なんとか観ることが出来ました。
タイミングが合わず、公開スクリーンも少ないので、これは観られないかもと思っていましたが、評判が良いのでなんとか鑑賞しました。
尾野真千子さんの最高傑作ですね。
言葉にできない怒りや不満や幸せが滲み出ていました。
また、片山友希さんも良かった。
交通事故やコロナなど、とても現実的な題材で心に来ます。また、どうしょうもない男が沢山出てきて、別の意味で心に来ます。
なんて酷いことを言うのか、なんて酷いことをするのか、、、と。切ない。
可哀想とか強いとか幸せとか、一言では表せない、微妙なところが良かったです。
先生に息子を褒められるシーンが良かったな。その後の夕食で子供に望むことは、、、やっぱりそこだよね。と。
ポスターにもあったので、ある程度は覚悟していましたが、「茜」色の不自然さが気になってしまった。天気のことなので限界があるのでしょうけど、最後の最後、ここぞという場面であの光は辛い。急に別撮り感というかスタジオ感というか、、、
あと、最後はちょっと意味不明でした。
でも、いい話にもしない、悪い話にもしない、そこにリアルを感じた。
めちゃくちゃよかったです尾野真千子
好き嫌いは確実に分かれそうな作品。
ネガティブ派は相当過激に叩きそう。
でもよかったんだよなぁ。
荒削りながら強烈に心に刻まれる映画。
良子と純平とケイが愛おしい。
何をおいても攻守ともに完璧な尾野真千子の映画。
引くところは引いて主演にありがちな独りよがりの芝居にならず、
まだ蒼さが残る片山友希や和田庵ら若手の良さも引き出す「受け」の芝居も素晴らしい。
日本の「今ここにある危機」
現実にあった事故をなぞらえた理不尽な交通事故により、夫をあっけなく亡くした主人公。中学生の一人息子を育てるため、さらには亡夫の父親の老人ホーム代を払い、亡夫の愛人の子供の養育費まで払うため、昼はホームセンターのパート、夜は風俗嬢として働く。
社会の理不尽さ、コロナ禍の閉塞感、薄ら笑いに象徴される他者への共感力の欠如といった、日本の「今ここにある危機」が描かれている。
「まあ、頑張りましょう」という主人公の口癖は、自分の感情に蓋をする呪文に聞こえる。居酒屋で風俗の同僚ケイに、自分の思い、怒りを噴出させるシーンには、胸を揺すぶられる。
出演者だけでなく、行き交う人々が皆マスクをしているという、今の日常でありつつ、将来振り返ってみたら異様な姿が、劇映画として作品化されたことが貴重。
映画としては、後半の、息子の純平がケイに憧れ、主人公が幼なじみの熊木と出会うあたりから、雰囲気が変わり、軸がぶれる感じはある。撮りながらシナリオが出来上がっていった面はあるのだろう。ユーモアを交えだすのは、石井裕也監督らしいとも言える。
尾野真千子の憑依ぶりはもちろん、片山友希の真摯さ、永瀬正敏の味わいも印象に残った。
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