「ベタ過ぎるロードムービー」クライ・マッチョ shinさんの映画レビュー(感想・評価)
ベタ過ぎるロードムービー
驚くほど意外性のない映画。嫌々引き受けた役割のなかで思いのほか価値を見いだすというよくある話。
まず少年との出会いが急過ぎる。出会いの背景はわかったけれど、すぐに少年の居場所を見つけて、すぐに意気投合して、じゃあ一緒に行動を共にしましょう、なんて展開になるの早すぎない?って感じ。
そもそも少年がいい子過ぎる。ちっとも不良じゃない。
この手のストーリーで大事なのは、やさぐれて箸にも棒にもかからない救いようのない悪ガキを、人生経験豊富な大人が人生諭しながら心通わせていく過程に感銘を受けることにカタルシスがあると思うのだけど、その辺が端折られ過ぎているのか、ちっとも共鳴出来なかった。
旅が始まってからも、その過程で起きることがぜーんぶありきたり過ぎて…。トラブルに巻き込まれて、なんとかそれを回避して…、たまたま寄った所でいい人に知り合ったり…、その出会いに心奪われて、当初の目的から外れそうになったり…とか。
ほんとにこれ、あのミスティックリバーとかグラントリノと同じ監督なの?イーストウッド作品に憧れた新人監督が真似て作ったんじゃないの?って疑いたくなるくらい、なんの含みも深みもなかったよ。
なんとかクライマックスを持たせようとしたのか、パトカーに追われて尋問されてたけど、ちっともハラハラしなかったし、あの奥さんの手下だか家来だかに追い詰められてカーチェイスしてピストル突きつけられてたけど、闘鶏に反撃されたくらいで拳銃落としちゃうって情けなさ過ぎだよ。なんなんだあいつは。
それでも何か起きるんじゃないか、何かどんでん返しがあるんじゃないか、あのイーストウッドの映画なんだから、って期待して観ていたけど、最後お父さんとハグして終わりとか、ほんとーーーに意外性のない映画でした。
これで「真の強さとは」って言われても何も伝わってこないですよ。同じロードムービーなら、比較するのも良くないけど「菊次郎の夏」のほうがよっぽど面白いよ。
いろいろ深読みしてこの映画に意味や意義を見いだそうとするのも結構だけど、期待値が高過ぎたのか、本当に残念な映画でした。