走れロム

劇場公開日:

解説

サイゴンの裏町を舞台に、孤児の少年が夢をかなえるために巨額の当選金が手に入る違法宝くじに挑む姿を描いたベトナム映画。サイゴンの路地裏にある古い集合住宅。詐欺師の債権者からの借金を背負っている住民たちは、アパートを維持するため大金が当たる違法宝くじに熱中している。14歳の孤児ロムは宝くじの当選番号の予想屋で生計を立てていた。ロムは地上げ屋から立ち退きを迫られている住民たちを救い、生き別れとなった両親を捜すため、危険な違法宝くじで一獲千金をもくろむが……。監督は本作が長編デビュー作となるチャン・タン・フイ。「青いパパイヤの香り」「ノルウェイの森」のトラン・アン・ユンがプロデューサーを務めた。

2019年製作/79分/G/ベトナム
原題または英題:Rom
配給:マジックアワー
劇場公開日:2021年7月9日

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映画レビュー

4.0スピード感と空間設計に秀でた異色作

2021年7月26日
PCから投稿

かつてベトナム映画のイメージを決定づけたトラン・アン・ユンが、若き才能のプロデュースに回って築き上げた躍動感あふれる一作。そこでは”違法くじ”に翻弄される市井の人々の悲喜こもごもが描かれ、その社会を少年らが隅々まで駆け抜け、すり抜け、飛び越えていく。この平面に立体移動を掛け合わせた空間設計が本作の何よりの魅力。特に主人公の寝ぐらは集合住宅のボロボロの屋根付近にあり、そこからはすべてが俯瞰でき、どこでも瞬時に駆け付けられる一方、雨風や陽光をもろに受けてしまう難点もある。でも一日中走り続ける彼にとって住処はもはや”寝るだけ”の場所。彼には夢がある。それを叶え「ここではない何処か」へ脱出したいという思いこそ、79分間を躍動させる強靭な原動力となっていく。惜しいのはクライマックスが釈然としないところ。本作には検閲を受け修正した箇所があるというが、もしやこの部分だろうかと、詮索してしまう自分がいた。

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牛津厚信

4.0給料の半分をデーにつぎ込むらしい

2024年9月10日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

闇くじ(デー)について、やっぱりこう思うよね。「公式を買えばいいのに」って。
公式は100円買って一億円当たるようなくじで、夢はデカいが現実味がないんだ。
一方で闇くじのほうは、下二桁だけで70倍という配当らしい。つまり、現実味がありそうなラインで、いわば競馬などのギャンブルに近い。
そして何より、貧しい層の国民に根付きすぎた、一種の娯楽的存在でもある。

今では少なくなったというが、それでもまだまだ広く行われていると想像できる。
なぜならば、例えば日本に出稼ぎにくるベトナム人が、思うように稼げず、孤独感もあり、インターネットを眺めると、闇くじがあり、それを買うらしいのだ。
違法であるが、貧困層ならばみんな知ってる、やってる習慣なのだ。
日本だって昭和の頃は、法的にダメだけどみんなやってたことなんてのはあった。

違法な闇くじを中心に貧困層を描いたこの作品は、闇くじによって落ちていく人々や闇くじの裏で暗躍する悪など、負の側面が表に見える。闇くじの問題性が題材といって差し支えないだろう。
地面を自分の足で走るロムと対をなすように映り込む車やバイク。自転車や線路などもそう。貧困層と中流以上の格差をさりげなく見せる。
闇くじの存在こそがこの格差を生んでいるように見えるのだ。

しかし、見方を変えれば、闇くじが貧困層の心の支えでもあるだろうし、何より、主人公ロムのようなストリートチルドレンが生きていく術にもなっている。
ロムの主な収入源は闇くじの走り屋だ。闇くじがなくなってしまったら、死ぬか盗むかしかなくなる。
スラムのアパートを浄化することや闇くじを取り締まる前に、やることがあるんじゃないかと思えてくる。汚いから捨ててしまうかのようなやり方は、捨てられる「人間」を全く見ていない。

ここまで書いたように内容的に興味深い作品ではあったが、本作の目を見張るところは内容以外のところにあったように思う。それは映像の面白さだ。
ロムを後ろから追う手持ちカメラ。ドキュメンタリー風の画。揺れるカメラアングル。青い空。
これらは映画の娯楽性の創造に大きく寄与している。ベトナムにそんなに詳しくないため、どうしてもストーリーラインがわけわからん感じになることを映像の面白さで観られた部分はあるだろう。

なぜ闇くじを買うのか。闇くじのシステム。なぜ墓の位置がわからん?。番号を占いのような方法で導き出そうとするメンタリティ。他にも色々。
ベトナムの文化や国民性に精通していないとちょっとわからんところがある。

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つとみ

3.5(原題) Ròm

2021年10月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ベトナムの闇くじの予想屋ロムと、闇くじに人生を翻弄される人々の話!
ロムの必死に走る姿が印象的で力強く響く作品!
今でもベトナムでは映画に検閲が入ることやデーと呼ばれる闇くじが労働階級者を苦しめていたこと、経済成長の背景にあるベトナムの闇を見た気がした…私の知らなかったベトナムが沢山詰まっていた…

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AYK68

4.0成れの果て。

2021年10月2日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館
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bloodtrail