「人生は 生きてるだけで まるもうけ! 驚くほどに「さんまのまんま」なアニメ映画。」漁港の肉子ちゃん たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
人生は 生きてるだけで まるもうけ! 驚くほどに「さんまのまんま」なアニメ映画。
東北の漁港で暮らす母娘・菊子と喜久子。
この一風変わった母娘の絆を、娘・喜久子の視点から描くホームコメディ・アニメーション。
若かりし頃の菊子の親友・みうの声を演じるのは『名探偵コナン から紅の恋歌』『見えない目撃者』の吉岡里帆。
・吉本興業
・有名芸能人がプロデュース
・タレント〇〇が声優初挑戦
・家族の絆を描くハートウォーミングなストーリー
自分のような偏屈なアニメファンは、このような要素が一つでもあったら「あっ…大丈夫っす…」となってしまうものでして…。
この映画は上記の要素を全てクリアーしており、当然ながら映画館での観賞はスルー。
とはいえ、制作はあの名門「STUDIO4℃」。気になるっちゃ気になる。
ということで、地上波で放送していたものを観賞してみることに。
ちなみに、西加奈子先生の原作小説は未読であります。
結論としては、いや観て良かった!!
ザ・浪花節な、ベタで地味な映画なんだけども、家族愛
が衒いもなくストレートに描かれていて、コレがグッと胸に迫ってくるんです。
「家族の絆再確認映画なんて興味ねーわ」なんて思っていたけど、クライマックスではまんまとボロ泣き😭
やっぱり先入観ってやつは捨てないとダメっすね。
本作はお笑い芸人・明石家さんまが初めて映画のプロデュースを務めたということで話題になった作品。
西加奈子先生の原作小説に甚く感動した明石家さんまが映像化権を取得し、自ら陣頭指揮を取りながら約5年をかけて制作したという正に力作。
有名人がプロデュースしていると聞くと、「どうせ名義貸しみたいなもんでしょ」とか思ってしまうものですが、本作は明石家さんま本人により脚本・演出・セリフなどの監修、声優や歌手のキャスティング、演技や関西弁の指導などが行われている。さんちゃん、本当に仕事熱心ね〜。
そのため、本作は明石家さんまの人となりがハッキリと表れた、想像以上に「さんまのまんま」な映画になっているという印象を受けた。
声優の人選からして、元嫁、友達の娘、可愛がっている後輩芸人、信頼する仕事仲間、ファンであることを公言しているアニメ『鬼滅の刃』の声優陣、という完璧な縁故採用。
作品を私物化していると言えなくもないんだけど、まぁさんまさんがやりたいようにやった結果なんだろう。
脚本も「生きてるだけで丸儲け」的な思想が軸。
さらに娘への無償の愛&血縁以上の絆で結ばれた親子が描かれているという、他人が書いた小説が原作だとは信じられないほど、明石家さんまの自伝のような映画となっていた。
ストーリーは本当に地味。
事件らしい事件は何一つ起こらない。東北の漁港が舞台ということで、もしかして震災を舞台にした映画なのかな?とか思っていたけど全くそんなことはなかった。
主人公は菊子(あだ名は肉子)の娘・喜久子。
タイトルになっているキャラが主人公じゃないという点では、作中でオマージュされまくっていた『となりのトトロ』に通じるものがある。
この喜久子が心身共に成長していく過程を、約100分というランタイムをフルに使って描き出している。
本当に超絶地味なストーリーで、明石家さんまプロデュースでなかったら絶対にアニメ化出来なかっただろう。
実際の話、興味の持続で物語を引っ張るタイプの映画ではないし、原爆が落ちたり隕石が降ってきたり仮想空間の世界に飛び込んだり汎用人型決戦兵器に乗り込んだり異世界で働いたりするような超現実的な出来事も起こらないので、かなり退屈しちゃった🥱
正直なところ、これアニメでやる必要ある?と言いたくなる物語ではある。
当初の企画としては、実写映画かテレビドラマで映像化しよう、ということで動いていたらしい。脚本を担当しているのが大島里美さんというテレビドラマ畑の人なのはその名残りなんだそうです。
とはいえ、さすがSTUDIO4℃が制作しただけあって、アニメーションのクオリティは文句なしに素晴らしい👏
作画監督/キャラクター・デザインはジブリ出身の小西賢一さん。
小西さんはあの狂気的な怪作『かぐや姫の物語』の作画監督を務めたという怪物中の怪物。
そんな天才が作画監督を務めているだけあって、作画レベルは史上最高クラス。
美しい背景美術と相まって、未だかつて観たことのないような幻想的な世界へと観客を誘ってくれます。
キャラクターのデザインも素晴らしかった!喜久子ちゃんは近年稀に見る少女漫画的正統派美少女だったね✨
主人公・喜久子の声優は木村拓哉・工藤静香夫妻の長女、Cocomi。
今回が演技初挑戦ということでかなり不安だったのだが、キャラクターにピッタリとあった声質と演技でかなり良かったです!
フルート奏者である彼女は、関西弁を演じる際、そのイントネーションを音符に変換することで自分のものにしていったのだそう。絶対音感という奴ですか…。うーんさすがサラブレッド。
もう少しドラマ的な盛り上がりが欲しかったが、単調なストーリーだったからこそ、クライマックスにひときわ感動した訳だし、これはこれで良いのかも。
吉本興業製作、明石家さんま企画・プロデュースということで嫌厭している人もいるだろうが、それで観ないのは勿体ない上質なアニメーションでした!
さんちゃん、あなたプロデューサーの才能あるよ!
明石家さんまプロデュース、北野武監督、タモリ脚本とかで一本映画作ったらどうでっか?