「“歌” を通じた『娯楽』としての完成度がとにかく高い。」竜とそばかすの姫 アルさんの映画レビュー(感想・評価)
“歌” を通じた『娯楽』としての完成度がとにかく高い。
何故ここまで批判的な感想が多いのか。余りに高過ぎた期待と、鑑賞者が求めていた物語の質ではなかったからか。一言 “粗” と言っても、探し方と理解への姿勢にもよる。一定のご都合主義は限られた時間内で致し方ない所。決してそこまで酷くなく、寧ろ心地良い起承転結だったと思う。
自身の拙いレビューで、1人でも多くの人が『観てみよう』と思って頂ければ。
現実世界と、仮想世界。理解しているつもりの自分と、内に秘めた未知の自分。匿名という裏の言葉と、心にある本音。そして、自称警察への警鐘とも取れる仮想世界からのUnveil(アンベイル)。 “U” と “AS” を上手く設定に使い、安易に飛び込むネット上の危険を啓蒙している。
この “ベル” が『 “歌” を歌う』という特別感。
【アナと雪の女王】や【グレイテスト・ショーマン】の場面場面で挟まれるミュージカルとは違う。その歌へのフォーカスと演出での魅せ方が、とにかく半端無く素晴らしい。まさに鑑賞者全員が “U” の世界の中でLiveで “ベル” を視聴している感覚は特筆もの。
『50億の中から1人を探す』というこの不可能とも思える奇跡にも批判があるが、『50億の中のたった1人のベル』として歌うという奇跡には誰も突っ込まない。竜に惹かれて追いかける、その自然と気になってしまう意味、『母の死』という重たいエピソードから立ち直る切っ掛け、そして長年出来なかった母の行動への理解。これらをちゃんと考えて受け入れながら楽しんで鑑賞出来るかどうか。
『歌よ、導いて。』
この歌詞に鳥肌が止まらなかった。
全て物語として繋がっていて、悩みつつ、足踏みしつつ勇気を出して進もうとするすずの行動、思わず漏れてしまう嗚咽とも苦悶ともとれる声。
その意味と決意が見える “後半” は必見。一番批判が多い場面でもあるとは思うのだが、、、
子を持つ親の立場で意見させて貰うと、、、
『自らで成長し殻を破こうとしている時に、手を差し伸べるのはナンセンス』。
そして、いつでも一緒に行動するのではなく、、、
『信頼し、ただ信じてひたすら帰りを待つのも、愛情であり、友情である』という事。
ヒロちゃんは本当の親友であり、お父さんとしのぶくんが家の中と外、遠くから見守ってくれている。色々な『愛情』をテーマにしているのがわかる。
個人的にはアニメ映画は余り得意ではなく、斜に構えて観てしまいがち。予告編の歌に惹かれて鑑賞したのだが、『娯楽』としても、『作品』としてもかなりのクオリティだった。観るなら絶対に映画館でのIMAXをオススメ。歌の臨場感で★+0.5。