「この映画が語りたかったことを考える」竜とそばかすの姫 モロもろきゅうさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画が語りたかったことを考える
結論から言うと、映画館で見てよかったと思える映画だった。
広大なインターネット空間でのライブシーンは、やはり大スクリーンと音響があってこそ映える。
主人公を演じた中村佳穂さんの歌唱力が物語の説得力、推進力となって話を進めていくのだが・・・。
ただ、大方の感想にあるように脚本は結構首を傾げるシーンが多い。どこが悪いとの考察はさんざん語られているだろうから、今回は細田守監督がやりたかったことに寄り添ってみる。
今回の作品でテーマとなっているのは、「家族」と「SNS社会と現実社会の二重性」の2つである。
すずの母親が他人の子供を助けるために亡くなったトラウマを抱えて、アイデンティティが揺らいでいる。トラウマを乗り越えて見ず知らずの竜を助けに行くと言うところが本作におけるすずの成長である。
また、Uでは歌姫として振舞うが、現実では歌うことができない少女だったすず。アバターではなく本人として歌うシーンが印象的だった。
※以下は妄想です
これを語るにあたって大事なキャラクターがジャスティンと父親だったのではないかと私は考える。ジャスティンは正義の名の下に自分の価値観を押し付けるキャラクターである。
劇中では明示されていないが、ジャスティンの正体は恵の父親だと思われる。ベルが尋問されてジャスティンを睨むシーンと、すずが恵をかばい睨むシーンが重なる。
ただ、このテーマを描くにあたってすずの父親がジャスティンであると良かったのかもしれない。
母親を失って男手一人ですずを育てなきゃいけないというプレッシャーから、すずに厳しく当たってしまう。だんだん心の距離が離れていく。
そんな折、竜が現れて一人ぼっちの自分と親近感を覚え心動いていくすず。
ジャスティンは竜を追い詰めるが、すずが竜をかばう。すずは竜を守るために本人として歌唱する。
ジャスティンである父親はこんなに近くにいたのに気づかなかったとすずが立派に育っていることを知って涙する。
竜の存在はマクガフィンであり、なぜ恵が竜になったかを描く必要はないと思った。
おにっち弐号さん
コメントありがとうございます
細田守作品ということで少し穿った目線の方が見られますね。
確かに問題を抱えている部分もあると思いますが、それ以上に幸福な瞬間がある映画でした。
表層的な粗探しをしているのはもったいないと感じます。