オールド・ジョイ
劇場公開日:2021年7月17日
解説
長編デビュー作「リバー・オブ・グラス」で高く評価されたケリー・ライカート監督が、ジョナサン・レイモンドの短編小説を基に撮りあげた長編第2作。妊娠中の妻と故郷で暮らすマークのもとに、街に戻って来た旧友カートから電話が掛かってくる。久々に再会した2人は、旧交を温めるべく山奥へキャンプ旅行に出かけるが……。「パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー」のダニエル・ロンドンがマーク、シンガーソングライターのボニー・プリンス・ビリーことウィル・オールダムがカートを演じた。
2006年製作/73分/アメリカ
原題:Old Joy
配給:グッチーズ・フリースクール、シマフィルム
スタッフ・キャスト
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2022年9月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
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ケリーライカート監督の、空が好きだ
音楽はOther Musicに出てきたYo La Tango
ざらっとした街の風景も山もよい。
都会も山も同じ。都会に木を植え山にゴミを持ち込む。
悲しみは使い古した悦び。
政府は繁栄と言わず回復という言葉を使う。
互いに距離感をそれぞれに感じ、お互いに友情というかつてあった古い感情と、自分たちの現実に基づくストレスを感じながら、車で目的の温泉をさがす。
仕事もあり、地域貢献として、妻と生まれてくる子どももいる男マークと、ソレらを何も持たないが束縛されることを嫌う男カートの、たがいにそれぞれフラストレーションがあるなか、秘湯を探して小さな、二日間の旅に出る。
なかなか見つからない目的の温泉
広い山、森の中の、ゴミが投棄されたところにキャンプし夜をあかす。自分の世界観宇宙観物理を直感的に語るカート。危うい毎日をサバイブしているようだが、カートは、マークの車で行こうと言えるし、外に寝るのは慣れてて大丈夫なんだけど君のテントで寝てもいいかな、と言える。マークにリーチアウトすることができる。孤独だがひとりぼっちではない。カートは何も持たない自由があるが何も持たない社会的地位がないことでストレスと大きな不安、物理的な困窮を抱えている。
マークは問題ない人生を送っている、優しい、温厚な男だが夫、父親、コミュニティリーダーをやることに満足感責任感とともにストレスも感じているようだ。
16歳の頃の大昔のようだ、と言う。16歳の頃に戻ることはできない、2人の距離がはなれてしまっている。マークは温泉でカートにマッサージをされ、大きく戸惑いながらも、やがて癒される。ここがターニングポイント、というか、とても微妙で良いシーン。山の中の静寂、水の音、無心の2人の表情。
カートがマークのストレスをわずかに癒し父親になる勇気を与えただろうか、またカートが自分のかすかな存在を魂を込めて確かめるような、ぎりぎり、どきどきするシーンだった。マークはパートナーも居てやがて父親になる、共同体でもポジションがある、社会に居場所があるが孤独だ。
電話をかけ人に会いリーチアウトする。なけなしの小銭を乞われるままに渡す。
彼は自分であり自分は彼である。
人は自分であり他者である。
そんなことを考えた。
仲良しでもない理解しあってもないし親友でもない、みんなひとりぼっち、友情とかなんとかそんなの糞食らえだと思うけどリーチアウトできるということはとても大切。
分離恐怖症。犬のルーシーのことではなくみんなそうだと思う。ルーシーが旅の間ずっとカートに寄り添うのも良い。
冒頭のマークの妻のイライラも、真実をついていて女性は共感すると思う。
とてもよい作品。
2022年8月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
■もうすぐ父親になるマークは、ヒッピーのような生活を続ける旧友・カートから久しぶりに連絡を受ける。それはキャンプへの誘いだった。
妻に一応、行っても良いかと聞くが、妻の答えはツレナイ。
”どうせ、行くんでしょ”
マークは、カートと一緒にゴーストタウンのような町を出て、古い温泉があるという山へ向かう。
◆感想
・これだけの話なのだが、何故か、良い映画であるなあ、と思ってしまう作品である。
旅に出る際に、カーラジオからは、民主党、共和党の政策に対するニュースが流れているが、車が山中に入ると、そんなニュースは、一切流れなくなる。
・道迷いし、途中の山道でキャンプをするシーンで、二人が交わす会話も、なんという事はない。
・翌日、店で朝食を取った後に、二人は漸く古い温泉に到着する。水で適温にし、一人用の古びた湯舟に浸かるマークとカート。マークの指の結婚指輪にフォーカスするキャメラ。
・そして、一泊二日の僅かな旅は終わり、町に戻る二人。カーラジオからは、経済に対する不安を伝えるニュースが流れている・・。
<日々、生きていると様々な柵が、身を纏う。
それは、家族であったり、会社での諸問題であったり、社会に対する茫漠たる不安であったり・・。
だが、時にはそういった柵を忘れ、古き友と旅をし(出来れば、テントを背負った山旅が良い。)身体に纏わりついた垢を落とす事は、必要であると思った作品である。>
2021年11月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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おじさんが二人で山に一泊旅行をして温泉につかって帰ってくるだけ。独身のおじさんは2回大麻でラリって話が止まらなくなる。その話がけっこう面白い。本当に大麻を吸って話しているのを撮っていたのではないだろうか。窮屈な幸福と寂しい自由が対比されている。お風呂につかる前に体を流さないのが気になるのだが、外国の人に日本の習慣を押し付けてもしかたがない。
2021年11月14日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館
ラジオから流れて来る時事は1972年頃と思われ。ウォーターゲートの前後であることは間違い無く。でもですね。その四角いVolvoのエステートワゴンは80年代後半から90年代にかけてのモデルですけど?
これは、どう解釈すれば良いのやら。まぁ、クルマの事は気にするな、って事か。
身重の妻を残し、友人カートとキャンプに出かけるマーク。カートの案内が頼りなく、目的地には辿り着けず不当投棄されたゴミの中で焚き火に当たる2人。マークの友情を失う事を恐れて泣き出すカート。翌日、山中の温泉でマークにマッサージするカート。最初は嫌がっていたが気持ちの良さに身を任せ始めるマーク。帰宅は夜になった2人。独り住まいのカートは、1人夜の街を徘徊する。
Old Joy とは、古びてしまった喜びの事。擦り減った友情にしがみつくカートと、新しい家族と共に過ごす時間を心待ちににするマーク。
暗に対比するドライブを映画にしただけの事でしか無く。
でですよ?
コレが何でまた、こんなに沁みる訳?
良かった。普通に。
ライカールト。と、発音してしまう人は無条件でサカヲタ認定w