Swallow スワロウのレビュー・感想・評価
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主人公が飲み込んだ最大の異物
女性視点でのストレス、主張しないことで自分を担保せざるを得ない悲劇。
男性視点からいえば、貯めたストレスの発散先が家族(特に夫)しかないのは、誰一人幸せにならない構図ですね。男は外に吐き出せる点ずるいかもしれない。
ヘイリーベネットはイコライザー良かったなぁ。
癖からの根深い部分へ
少しずつ雰囲気が変わって行く、ちょっとした会話や態度、映像もそうだがシンプルで無駄がない。
気が付かないフリは出来ないと言わんばかりに、歪みが生じる。そのヒタヒタと迫り来る感じがまるでホラーだなと思った。
すべて集約されたエンドロールの映像もユニークだ。
食べられないものを無理に食べるのはもう止めにしよう!
見ていてこっちがゾッとする作品だ。おはじきから始まり安全ピンやネジと色んな物を食べるシーンはこっちも見ていて辛くなる。
旦那さんそしてそのご両親。自分たちの幸せの価値観を押し付けるのはもう止めにしよう!
奥さんが何を望みそしてなにが幸せなのか考えたことあるのかい?もう他人が決めた幸せな価値観を他人に押し付ける時代は終わりにしよう。人の幸せはそれぞれだ。他人の幸せを見つけてそれを叶えてあげる事が自分の幸せとなる世の中にしよう。ロンリネス。ありがとう。
本当の幸せはなんだろう
恐怖感と言うより不快感。
「その幸せは偽者だ、自分を取り戻し本当の幸せを探せ」とか叫んでる映画、結局答えは一つも出てこなかった。何かすごいこと言ったような、何も言ってないような、Youtubeでよくあるやつじゃないって気がする。
シロガネーゼでもこんなに大変だな、幸せなんて、所詮サンタと同じ作り話なんじゃないと言う虚しさに包まれた。
俺、やっぱりこう言うの向いてない。
シンディ・シャーマンの世界
ハンターの髪型と顔を見て、すぐに写真家のシンディ・シャーマンの作品を思い出した。調べたら、1980年代の写真で、肖像画に入る以前の作品群。お人形のようで、子どものようで、不安の表情だったり、表情がなかったり。色んな小さな物質が散らばって転がって、土まみれの作品もある。
ハンターは普通の髪型になって、人間の顔になった。シリアの介護士の言葉と行動が背中を押してくれて、自分で決めて自分で行動したから。その強さがハンターにあって良かった。
電話での夫からの最後の投げ捨て言葉は、なんじゃらほい!それが本音。ことばは聞こえてくるけれど本心でないことも、人に尋ねておいて人の話をろくに聞かないのも、自分が不安だからと言って約束を守らないのも失礼です。
ゴージャスなインテリアで広い家。でも、居心地いいのは、ベッドの下とかトイレとか、隠れて一人になれる場所。戦争を知っている介護士さんはわかってくれた。
今はないし、私も見たこと聞いたことないけれど、「親の因果が…」という見世物小屋の呼び込みが頭に浮かんだ。
二重三重の意味が込められているのかも。
今年2本目(通算69本目)になります。
お話の内容については多くの方(PROの方含む)が書かれていることと重複しますし、この映画自体がかなりセンシティブな内容を含むこと、またレーティング上もR15に該当しますので、ネタバレありにしようがどうしようが不特定多数が見る中でよろしくないので(興味本位に見るのは偏った理解を促すし(この点では、興味本位で見に行くのはあまりよくない)、日本でも似たような類型の病理に対する理解はまだまだ)、それらは省略します。
他の方が書かれている通りです。
※ R15指定されたのは、グロテスクな表現が多少なりともあることであり、「大人の営み」の表現があることではないと思います(それも一応はありますが、それ「のみ」でいえば、G指定かせいぜいR12指定の範囲)。
あえて言えば、出産・中絶に関する考え方が宗教観・道徳観の違いで根本から日本と違う点があることを理解しないと発言の意図がわかりにくいという点でしょうか。ただ、それとて今とでは色々な映画がありますし、30年前でもあるまいし得ようと思えば色々な情報をすぐに得ることができます。日本の義務教育(便宜上、高校も含む)で習うことでもあり、それらは常識的な範疇に含まれるのでしょう。
さて、個人的に考察したところ。
「飲み込む」という意味の単語は swallow が確かに思い浮かびますが、それだけではありません。中学英語で習う範囲のもっと平易な単語もありますし、この単語自体も「そう日常会話で使うか?」というとそうでもないでしょう(アメリカの病院など、薬を服用する・させるような場所等は除く)。
そこで英和辞典で調べてみますと、主に
・ (何に限らず)飲食物などを服用する ※ 通常は「薬を」服用する、の用法
・ (屈辱・感情などを)抑え込む/我慢する
・ (前に述べたこと・行動を)取り消す ※ 別の言動を取ることを意味する
…という3つの意味が挙げられます(他、名詞用法として「ツバメ」の意味もありますが…さて、ツバメって出てましたっけ?)。
1つめはこの映画のタイトルと内容そのもの。2つめもネタバレにならない範囲。3つめは…。もしこの意味まで含んで「三重に」意味を持たせたのであれば、それはすごいことだろうな…と思いました(詳細はネタバレになるので省略(他の方のレビューにヒントあり)。そこまでの意図があるかは不明。ただ、日本と違い、英語圏では英語は国語のように扱うので、そうあっても何ら不思議でない)。
※ 映画って「ここで終わりかな?」と思っても思わぬどんでん返しがあったり、なかなか終わらなかったり、意外な方向にいったりしますよね。これ以上はネタバレになりそうなのでカット。
なお、「異食症」という語「そのもの」「のみ」を示す語は allotriophagy という語があります(ありますが、日常会話どころかどこで習うのレベルの専門用語でしょうね…)。
とはいえども、日本ではまだ理解の進んでいないこうした類型の患者さんに対する理解にこの映画が一役立てば、とは思いました(なので、R15指定ですが、日本に限らずどこでも理解度は高くはないと思われる現状、表現を緩和して(日本の)GかR12相当に持っていったほうが良かったのかな…とは思ったものの、そこは作者の表現の自由の範疇でしょうし、日本でのみそういう事情をあることをもって全部作り変えることもできないのは明らか)。
減点対象は下記の0.1のみですが、軽微な範囲なので5.0まで切り上げています。
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(減点0.1) 多少の文法ミスが気になりました。どうしてもこうした内容を扱う以上、自身では解決できず、他人の助けを必要とする疾患ですが、動詞 help は原形不定詞を伴う場合は「直接手助けすること」、to不定詞の場合は「間接的に手助けさせること(=自身以外の誰かの力を借りること)」でれっきとした使いわけがあります(ただ、現在はこの違いは英語圏でもあまり意識されない)。
この使い方がバラバラであり(両方使われているが、一貫性がない)理解しにくいのが気になりました(「性質上」、ストーリーの内容にもかなりかかわってくるため。アクション映画の話とは事情が異なる)。
ただ、この問題は他の語法の問題とは違い、日本では「ら抜き表現」に近いほど「使い分けるべきとするが、意図的に意味を理解を妨げない限りどちらでもOK」な扱いで、許容範囲かな、とは思います。
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ななめ上をいきます。
自己否定感が強い主人公が異食症となり、自身の問題と向き合い、他者からの承認を得て前へ踏み出す話。
役どころは、人の顔色伺いHappyを装う主人公、ばりばり宗教右派の母親(声だけ)、レイプ犯の父、モラハラ夫と偽善者な義父母、シリア出身の介護士…彼らのちょっとした言動から背景や心情が見えます。
予告や解説を読んでおけばストーリは想定内なんですが、ところどこぶち込んでくるので”ひぃ!””ひょぇ〜!”となりました。
例えば…
”レイプによって出来た娘が主人公”
”刑務所で袋叩きに合い、人工肛門をつけることになったレイプ男”
”介護士が脱走を手助けするシーン”
”ラストの堕胎シーン”
あたりが”ナナメ上いくなぁ〜”と感じました。
淡々とストーリーは進みますが、行間に観てる側の想像を駆り立てるものがあり、飽きませんでした。
※ネタバレ箇所を少し削り、修正しました。
正しい幸福感
主人公のハンターはビジネスで成功を収めてる旦那を持ち、立派な豪邸に住む。もちろん彼女が外に出て働く必要もなければ表面上は旦那も優しい。ただハンターはどこか幸せでないのは冒頭から伝わる。
旦那の仕事柄上、旦那の家族と関わりが冒頭からあるのだが、その家族からも彼女が一生懸命話していても途中で遮られたり、本人は気に入ってる短い髪型を否定されたり…彼女の存在自体が彼らには大した存在でない事がひしひしと伝わる。もちろんそこには悪意があったり、彼女を虐めてやろうという気持ちもまた無いのは伝わる。シンプルに彼女の存在がはっきりと伝わり、それが返って彼女をさらに苦しませる。
結局そこのわだかまりが妊娠しても尾を引く。旦那も家族も表面上はハンターに優しく接するが、ハンターの心配以上にお腹の中の子がとにかく気になってるのが伝わる。もちろんそれは普通の事なのかもしれないが、元々きちんとした信頼関係がない上だとさらに彼女を傷つける。そこで異食症が爆発する。
この作品はもちろんこの異食症が主となるが、決してあれこれ異物を食べるシーンが沢山ある訳ではない。
孤独や寂しさの気持ち、満たされない欲がMAXに近くなるとそういった衝動に出る。その描写が丁寧に描かれているためとても見入ってしまう。
確固たる描写で彼女が明らかに、意図的に苦しめられる、虐められるような描写が決してあるわけではないが、彼女の寂しさ、満たされない欲は十分伝わり心が痛くなる。
後半ではハンターはレイプの末生まれた事が明かされ、終盤ではその犯人(刑期は終えた)に会いに行き気持ちを伝える。
そこで彼女は本心では望んでなかったお腹の中の子を中絶し、そしてこれから一人で生きていこうとする姿で作品は終わる。
このハンターは顔もカッコよく、そしてお金もあり、決して意地悪とかではない旦那を持っているのだから誰もが羨み本来は幸せであってもおかしくない。
もちろんハンターでなければこの生活でも十分幸せに感じ、ハンターの旦那と一生を暮らしていける者も沢山いるだろう。
決してハンターがおかしい訳でもなく、旦那も特別おかしい訳でもない。ただ人それぞれ幸福感、幸せに繋がる欲というのは違い、その違った欲、幸福感を強要することが返って不幸となり人をダメにしてしまうという描写が非常にうまく描かれておりとても好きな作品であった。
決してドラマ性の高い作品ではなく、異食症含め精神病になってしまうありえそうな過程を淡々と描いていくがそれでも見応えはある。
今は便利な社会にどんどんなるにつれて幸福感を満たされにくくなっていくというのはメディアで何度も目にしたことがある。僕自身もその1人であるが、そのような人は沢山いると思う。
時には人が羨む事、望む事が幸せだと思ってしまう事もあるが、自分自身の幸福感というものを明確にし、それを形にする事が大切なんだという事を改めて感じさせてくれる作品であった。
またその幸福感を形にできない、前に進めないのはハンターの様に過去の大きなトラウマが邪魔をしている場合もある。時には幸せを掴むにはまずトラウマを消し去ることが必要であったりもする。
自分の過去を振り替えながら、そして心と会話しながら楽しめるそんな作品であった。
magenta
会社経営者の義父母とその会社の取締役となった旦那に囲まれて、一見幸せそうな専業主婦が、異食症に陥って行く話。
表面上は優しい旦那と義父母との時間だけど、自分への興味が薄く感じてしまい、寂しさを紛らわす様に氷を噛み砕き、ビー玉を飲み込み、様々なものを口に入れる様になっていくストーリー。
徐々にエスカレートしていくそれは、背徳感かスリルか、それとも自傷の一種か…。
スリラーと言われればそうなのかも知れないけれど、誰しも感じることのあるであろうふとした孤独が、そんな行動に繫がってしまう様は恐ろしいというより哀しい限り。
最期の描写は少しボヤかしたところもあるし、何もなければ過激に感じるところはあるものの、言わんとすることはしっかり伝わって来てとても良かった。
まさに20年代の変態映画+女性の自立映画
2021年元日映画の日で観てきた。きっとヘイリーベネットがたくさん映ってる映画だと思ったらそうだった。但し「あらぬものを何でも飲み込んでしまう妊婦」という恐るべき役どころ。にも関わらず衣装も美術もロケーションも大変おしゃれなのでエレガントなサイコパス風。
というところが前半で、後半は治療と共に金持ちに嫁いできた庶民の出の妊婦がなぜ、というところに話が進む。自傷行為の中でもこれはなかなかのアイデアだな。とりわけ「金持ちに嫁いだ一般人」としてのヘイリーベネットの着せ替えぶりが素晴らしい。『ローズマリーの赤ちゃん』のミアファローを思い出すくらい一回一回がフォトジェニック。パンフは出して欲しかった。
結果、前半エレガントサイコ、後半は自傷行為克服のための「私探し」。更に囚われからの旅立ちというというテーマにまでいく。ただの変態映画ではない、女性の自立に転調させてるあたりが20年代の映画だと思った。
ビー玉も画鋲も土もストレスものみこんでしまう話
予告編を観て物凄く気になっていた作品でした。どうやら“異食症”と呼ばれる、どんなものでも呑み込んでしまう女性というインパクトと「どうしてそんなことするの?」という興味で観に行きました。いや〜不謹慎ながらとんでもなく面白い作品でした。
自分はストレスが溜まったらどうやって解消してるだろうかと考えると、それこそ一人で映画を観に行ったり、カラオケに行ったり、美味しいものを食べたりしてるかなあ。主人公のハンターにはそれが見つけられてなかった。
まず、自分自身に対する肯定感というか、アイデンティティーを示すことができないこと。劇中で明かされる出生までの過程、金持ちの旦那さんを見つけたは良いものの家事を完璧にこなせるわけではないということ、ハンターの結婚していてもどこか孤独な様子が容赦なく描写されていきます。
そして、度重なるモラハラ。結婚することに希望が抱けなくなってしまいますよこんなの見ると。姑のお節介はデフォルメされてないリアリティーを保っているし、夫は「愛している」とは言ってくれるし、愛情表現も頻繁にしてるけど、仕事優先だったり、家族のお節介を止められなかったり、ちょっとのミスで「ファック!」となったり。これも本当に演出が上手くて、ハンターが異食症になってからも、理解しようとはしているし、彼なりに彼女のためを思って行動してるのは伝わってくるのが辛い。「ファック!」と言った後にちゃんと後悔しているのが辛い。つまりお見事。
そして、彼女は花を育ててみたり、カーテンの色を変えてみたりもしたし、夫の同僚のようにハグで寂しさが解消されるかを試してみたりもしたけど、結局氷を飲み込んだ時の気持ち良さをきっかけに、どんどん固形物を呑み込んでしまうんですよね。非常に痛々しいシーンもありました。
この物語をどう片付けるのか途中から不安にもなってきたりもしたのですが、実に見事に着地させたと思いました。ネタバレは避けつつ記録に残しますが、ハンターにとって因縁の相手に会いに行くシーン。「私はあなたとは違う?あなたに答えてほしいの。」つまり、自らのアイデンティティーを取り戻し、さらにとある決断をする、でもその後はあえて描かず想像に任せるという流れでした。ラストカットのハンターは、髪型も表情も全く違っているように見えます。彼女の今後、夫の今後はどうなったんだろうと余韻に浸れる作品でした。
あと、変なところでアップになる演出が面白くて。自分が気付いた変なところのアップは、ドレッシングとか掃除機のコードとか調理に使われた動物の残った眼とか。つまり、何かの付属品のものが多くて。夫にとってのハンターの存在や、ハンターが自分自身を主役と思えないことを暗示しているのかなと思いました。
固形物はもちろんストレスものみこんじゃいけないなと思わされる作品でした。傑作だと思います。
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