Swallow スワロウのレビュー・感想・評価
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Feminist Body Thriller
As far as I know, the first major film about the eating disorder pica. Hunter is a lower class woman with a tormented backstory who finds herself in a wealthy marriage, and upon pregnancy she resorts to consuming inedible objects. As an unsettling psychological study into the intricacies of interpersonal relationships, it's a rich exercise in showing more than telling. Stylish and well-written.
異食症とは
異食症というものがあると本作で初めて知った。御曹司の息子と結婚し、NY郊外の豪邸で専業主婦をしている女性がある日、ビー玉を飲み込みたい衝動に駆られて、本当に飲み込んでみると自分が解放されたような気分になる。彼女はそれから画鋲や乾電池などあらゆるものを飲み込んでしまいたくなる。
主人公の女性が生きる環境は大変に抑圧的だ。夫は一見、彼女を心配しているように見えるが実際には理解していない。一日中家にいるだけの退屈で窮屈な生活のストレスから、彼女の症状がだんだんひどくなっていく。彼女の秘められた欲望には彼女の出生にも関わりがあり、彼女は家から飛び出し自身のルーツに向き合うことになる。
この主人公の場合、抑圧的な環境がある種の精神疾患を引き起こす要因になっているようだが、実際に異食症は極度のストレス状態が引き金も多いらしい。ジェンダー差異による男女の社会的抑圧の重さの違いも浮き彫りしている優れたドラマ。
美しくも狂おしい映画が教えてくれること
クローネンバーグ監督の「クラッシュ」と同様、自分に破滅的なダメージをもたらしかねない危険な癖(へき)を抱えた女性の物語。Swallow(飲み込む)の原題通り、主人公ハンターはガラスや金属などでできた小物を飲み込みたくなる、「異食症」と呼ばれる状態になる。乳児が目についた小さな異物を口にしてしまうのはよく知られるが、妊婦にこの症候が現れることも多いそうだ。
ハンターは飲み込んだ後排泄されたビー玉や画鋲などを便器から拾って洗い、宝飾品のように並べてコレクションする。食べ物(有益な物)を消化すると“汚物”になるのと真逆で、無価値で有害な異物を排泄すると彼女にとって貴重品になる。これがあたかも聖なる儀式のように、美しく描写される(もちろんヘイリー・ベネットの美貌と悦びの表情もそうした印象に貢献している)。
心理学的には、モラハラ夫とその両親という富裕な家に嫁いだブルーカラー出身の女性が、受ける抑圧やストレスから解放されるための代償行動と解釈できよう。だが本作において、ハンターにとっての“真の異物”とは、夫一家そのものなのだ。婚姻関係の成果であり結晶ともいえる「あるもの」の扱いに関する彼女の決断が、そのことを象徴している。
狂気をはらんだ映画に私たちが魅了されてしまうのは、人間はどこかしら不完全な存在で、日常では忘れがちな(あるいは意識しないよう努めている)そうした不都合な真実に気づかせるからではないか。ハンターを監視するために雇われたシリア出身の男が彼女に、「紛争地では銃弾を避けるのに精一杯で心を病む余裕などない」といった趣旨の話をする。地球のどこかでは今も戦争や紛争が続いているのに、別の国では豊かな暮らしを享受したり、のほほんとエンタメを楽しんでいたりする世界もやはり不完全で、狂っているとは言えまいか。そんな狂った世界に対する潜在意識下の不安が、たとえば新型コロナのような不測の異常事態によって表面化し増幅されるのかもしれない。
特殊な癖を題材としながらも、人間と世界の本質を突く普遍性を獲得した異色作だ。
いい作品
夫が1番大事なのものは、夫の親。次にお腹の赤ちゃん。妻である主人公ハンター(以下「私」という。)ではない。
カウンセラーが1番大事なものは、お金。次に依頼者。患者である私ではない。
実の母が1番大事なのものは、多分宗教。次に妹。望まずに孕んだ私ではない。
実の父が1番大事なのものは、今の家族。次に自分。予定外に孕ませた私ではない。
私を大事に出来るのは、私しかいない。
これからは、私のために私が決めて生きる。
私がやりたいことをする。マイペース、ゴーイングマイウェイ。
飲み込んで取り出す。呼吸のように。インプットしてアウトプットする。摂取と排泄。愛を受けて愛を与える。
という素晴らしい話。
異食症というなかなか扱われないテーマが貴重ですが、 疾患そのものよ...
異食症というなかなか扱われないテーマが貴重ですが、
疾患そのものよりも、そこに至る背景や普遍的な人間の歪みを描いていて、
触れ込みのイメージよりは観やすい映画です。
映像の色彩がやや暗めで、ホラー映画のような撮り方になっていますが、
びっくり要素はなく、じわじわ緊張感を生み出す演出が楽しいです。
主役の女優さんがコケティッシュな雰囲気で、どの場面でも絵になっていました。
重いテーマをカラフルな映像で描いた作品
かなり重い。というよりかなりキツいと言うべきか。観ていて正直、胃酸過多になってしまったかと思うほど、胃がもたれた。
でも、完成度は高く良い作品だと思う。テーマも十分考えさせられるものだったし、映像もかなり良い。いたるシーンにおいて常にカラフルさが入っていて、スローな展開なのに目が離せない。重いシーンながらも赤・青・黄・緑・紫等々効果的使われ、観ている方としては結果的に救われたかなという印象。
本作で初めてへイリー・ベネットを意識したが、個人的には相当のカリスマ性を感じた。
本作は誰にでもお薦めとは言い切れないが、かなり印象に残る良作というのは間違いない。
異物食の問題を取り上げた映画ということだったのですが…
その実は「女性の自立」ということを真正面から取り上げた作品だったのですね。彼女がどういう動機で夫と家庭を持つことに決めたかについては、明確な描写はなかったかと思いますが、こういう境遇におかれたなら(それについて彼女にも帰責的な点があったとしても結論として)彼女が異物食に追い込んでしまったととは、容易に合点が行くように思います。
もし、彼女にも経済的に自立して生活できるだけの方途があったら、こういう事態に立ち至ったでしょうか。
そう考えると、この作品も、その本質としては、女性の(経済的な)自立の問題を描いた一本だったのてはないかと思われました。観終わって。評論子には。
居場所がない
富裕層の退廃までいかないが、ぼんやりとした虚無感、こういう設定よく見かけるようになりましたね。反出生主義も近年のブームでしょうか。映像が美しくて、自宅豪邸の静けさはなんかホスピス感があってそれも殺気とチルの裏表の関係が見えてよかった。
異食をするシーンが美しくて、そこばかり頭に残る
2022.80本目
妊婦さんに異食症の症状がでる人が多いことを知って、驚いた!異食をするシーンが不思議と、美しく神聖な儀式のようにみえる。
夫が、見るからに悪い夫という感じはなくて表面的には良い夫に見えるのに、どことなく違和感がある感じがリアルだった。
夫からの解放、というより「妻」からの解放って感じで、しっかりメッセージがあって良かった。
けど、オチやストーリーが弱かった感じはあって、異食をするシーンばかりが頭の中に残った。
小川洋子作「妊娠カレンダー」に通じるテーマ。
ふっくらしたヘイリーベネットもいいな。
金持ちの夫と何不自由なく生活しているように見えるが、満たされない孤独(何か)を抱えている。
それが妊娠を期に、
異物を飲んで排泄する事にハマり、
時に下血、救急車で搬送される。
それでも「スワロウ(飲み込む)」が止められない。
キャッチ意味不明だな。
欲望じゃない。
胎児を「異物」と感じ、
出したいという擬似行為だ。
それは出生の秘密に繋がる。
「ホラー」とあったし、
押し付けがましい姑や周りで「ローズマリーの赤ちゃん」っぽい話かと思った。
けど小川洋子せんせの「妊娠カレンダー」だな。
全ての女性が、
妊娠を望んでいる訳じゃない。
良作
きめ細やかで官能的な印象を受ける洗練された絵作り
整った美しい世界の中だからか、作中の”異物”がより実在感を持って感じられる
痛みを伴って快楽を感じ、自己の不在を埋める。
刹那的な悦びに堕ちていきながら苦悶の中で恍惚の表情を浮かべる主人公に、背徳感と美しさを覚えます。
一見するとメンヘラにイライラするだけのただの「キワモノスリラー映画」のように見えるが、それだけで終わらなかったのは
相方の夫をただのモラハラ野郎として安く描き切らない部分が大きかったと思う
時折見せる夫の良心がドラマとして見応えを確実に増した。
ストーリーとしても、最終的にアイデンティティ肯定の始発点を描くラストになってるのが良い
タイトで洗練された良作
痛みはあるが何故かグロテスクさはない
好きです
なんか勉強になった
知らない症状で調べたら自分も子供の頃やたら氷を食べてたし妹は茹でてないパスタを食べてたのを思い出した
人間って複雑だけど愛が有ればそれで良いのかもしれない
でも自分はシンプルにこれからもdo all things with love精神で行こうと思った
異食症患者はみていて痛ましい
グロ系にかなり耐性はあったが、異物を飲み込むシーンはかなりきつかった。
シーン自体はグロくはないのだが、見ているだけで喉がつまるように感じた。
サスペンスやミステリーカテゴリに分類されていたが、そのような要素はなく
周囲のストレスによって異食症を発症した主人公という感じだった。
まさに魅入るよう
喪失から異食症という病を絡め、自分自身を取り戻す物語。ヘイリー・ベネットの芝居がすごく、まさに魅入るよう。
特に、その表情がすごいですよね。
製作総指揮に彼女がクレジットされているのも、この作品にかける想いがわかります。
家庭内での行き場の無い、鬱屈とした毎日。
限界から抜け出し、そこからルーツを知り、本当の内の声を知る。
良いか悪いかは別にして、すごい前向きな最後を感じました。
できたら劇場で観たかった作品です。
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