川っぺりムコリッタのレビュー・感想・評価
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ささやかなシアワセによる新しい繋がり
「かもめ食堂」の荻上直子監督の最新作は、美味しそうな食事と「ささやかなシアワセ」で満たされている。
だからといってノー天気な映画ではなく、「 光あれば影あり」と言われるように、モチーフとなっている「遺骨」が象徴する「死」が、作品に影を投げ掛けている。
北陸の小さな町に訳あって引っ越してきた山田は、職を得たイカの塩辛工場の社長から紹介された川沿いに建つアパート「ハイツムコリッタ」で暮らし始める。
出来るだけ人と関わらずに生きていこうとしている山田だが、隣の部屋に住む島田が毎日のようにやって来て、静かな日々は一転してしまう。
そんな時、子供の頃に自分を捨てた父親の孤独死の知らせが入り、遺骨を引き取ることになる。
このアパートの住人は皆、社会からは少しはみ出した訳あり人たちばかりで、そして貧乏だ。
未亡人の大家の南さんは何かを抱えているようだし、墓石売りの溝口さんは息子を連れて訪問販売しているし、静かにと暮らしたいと思っていた山田だったが、何故か住人たちと関わりを持つようになっている。
友達でも家族でもない関係だが、山田は孤独ではなくなり、新しい「繋がり」を築いていく。
コロナ禍で益々格差が生まれて分断され、無縁社会が広がっていく中、この作品は、そういう風潮に静かに抗うように新しい「繋がり」を我々に提示しているような気がする。
共感するところも多いのだけど
富山ロケだし達者な役者が揃っているので映画館で鑑賞。
大方のロケ地が分かるので、なんで最寄り駅をそこにした?なんてツッコミを入れながら観るのも楽しい(^-^*)
話の方は過去に大きな傷を持った人たちが寄り添いあって生きていく様子を丁寧に描いている。
共感するところも多いのだけど、島田や溝口の過去など明かされないことも多く、想像で補え、と来る。
その割に山田の心情など、セリフでガッツリ説明されてしまう部分もあったりして、そのあたりは若干ちぐはぐな印象は受けてしまう。それをセリフでそこまで言っちゃったら野暮でしょ、って(^-^*)
とはいうものの、見慣れた風景の中を「ほんとにこんな人たちがここで暮らしているのかな」と思ってしまうような丁寧な描写で見せてくれる良い映画だった。
とりあえず。
満島ひかりが大家さんなら俺も入居したいわ(笑)
寂しさと優しさと時の流れ
非現実的な世界でささやかな幸福を謳った
「無縁社会」への処方箋
NHKのドキュメンタリーで、官報に載っている「行旅死亡人」を追跡し、遺骨の引き取り手のない人たちの生前を取材した特集番組「無縁社会」がかつてあった 「無縁社会」はNHKが作った言葉ではあるが、家族がいても自分から関係を閉ざして亡くなっていく人がたくさんいて、市役所の福祉事務所には引き取り手のない遺骨が管理されていることも番組で伝えられていた
山田さんは受け取りを拒否することもできたであろうに、役所からの連絡に応じて遺骨を引き取る
出所後誰とも関係を拒絶して生きていくはずだったのに、ムロさん演じる島田さんのしつこい「押し」によって、他人を受け入れる素地が作られていったのかもしれない
「個人の生活」を大事にしたいと多くの人が思っている反面、ああいった人間関係に憧れを感じることもある 子どもやまわりに迷惑をかけたくない、と思いつつも(「PLAN75」の考え方だろうか)「無縁社会」の中で生きていかなくてはならなかったり、山田を刺そうとした蚊がたたき殺されるように「突然の死」を迎えるかもしれない、という恐怖
煩わしい関係を受け入れたくもなる、という思いは年齢のせいかもしれない
(10月2日 イオンシネマりんくう泉南にて鑑賞)
演出戦略
食べることは生きること、そして幸せを感じること
ふんわり、ほっこりの荻上直子監督作品と思って観ましたが、本作はいささか雰囲気が違います
主要キャラクターが皆、人の死と向き合って生きていて、作品全体通して"死"というキーフレーズがまとわりついています
そして、その対局にある"生"の象徴として描かれるのが「食べる」こと
死にまとわりつかれた人々が生きるために食べる
松山ケンイチさんとムロツヨシさんが白飯をうまそうにかっ食らい、皆で楽しそうにすき焼きを食べ、満島ひかりさんは○○まで・・・
人はいろいろ苦しいことを背負って生きてるけど、"おいしいもの"を食べた時の様にささやかな幸せを感じる瞬間が一番「生きている」と実感できるし、心が満たされる
そして誰もがそんな幸せを感じる権利を持っている、例えどんな人生を送ってきたとしても、失った幸せを取り戻し、やり直す権利を持っている。。。
とても重厚で見応えがある良作です
そして、豪華キャストをチョイ役で贅沢に使っているのも印象的、全員わかるかな?
私は一人だけわからずエンドクレジットで名前を見て後で調べて納得しました
生と死の間
豪華キャストによるほっこりコメディ 宣伝でそんな印象を持ったが、そ...
めぞん三分の二刻
過不足ない人間賛歌
配役の妙
恐怖のイカ星人・・・NOPE!
配給会社が五輪汚職の目玉であるKADOKAWAなので観るのはやめようと思っていたのに、映画に罪はない!しかも北陸(富山)が舞台とあらば、観ざるを得なくなってしまった。そういえば今日9月27日はなんちゃらの国葬の日。人間の生と死にある時間について考えさせられる。ムコリッタとは仏教の時間の単位1/30日(48分)とのことだが、その生と死のわずかな時間の幸せを意味するらしい。などとボーッとしてたら、序盤から中盤にかけてはオカルトだったり、宗教を匂わす展開となっていた。まさかあの・・・
最初から惜しい!社長が「更生」という言葉を使うものだから、山田(松ケン)の過去がわかってしまった。もっと謎めいたものにしたほうが良かったのでは?と疑問符。しかもちょっとウザキャラのムロツヨシの登場となり、ちょっと醒めた目で見てしまった。
主要登場人物の皆が身内の死と向き合っている。故人との付き合い方、弔い方など、形式張ってちゃいけない。親戚などのしがらみもないのだから、遺族の自己満足でいいんだということ。高級仏壇なんて買う必要もないし、遺骨・遺灰をどう扱うかも自由なのだ。16億円かけようが花火で打ち上げようが自由・・・?
そんな中、最も印象に残ったのがアパート管理人である未亡人・満島ひかりが遺骨で身体を撫でるという艶めかしいシーン。骨を食べるより衝撃的だった。
北陸人としては、なぜか暗いイメージしか持てない風景(『ここは退屈迎えにきて』よりも暗い)や富山弁を一切使わないことにも違和感あり。まぁ実際は石川県の方が暗いからね。何たって平均日照時間が全国最下位。グダグダ文句を書き連ねたのもネクラの証し・・・後半は面白かったですよ。
死んだ後、魂はどこに行くんですか?
久しぶりに映画を観ながら何度か嗚咽を堪えた。静かで柔らかい時間が流れているのに、どこかで時折その時間は淀んでいた。それは、息苦しい世間の生きづらさなのか、この先の自分の人生の不安からなのか、なんなのか。
そして画面からは、そんな詰まってしまった流れを押し出してくれるような、なにかが、こちらの気持ちを洗ってくれる。例えば、美味そうな炊き立ての白米であったり、風呂上がりの一杯の牛乳であったり、取れたての野菜であったり。そうか、食は生きていく基本だものな、と気付かされる。
そんな一息をついたところに届いた、父の死亡通知。そこからの展開がまあ、揺さぶられた。それも、しっかりと食でこちらの心を満たしたあとっていう手順の手練れぶりには頭が下がる。しっかりとメッセージを聴く準備ができてから、じゃあ行くよ、って感じで重いものをどんどん投入してくるのだから。いのちの電話、喉ぼとけ、捨てられた家電の山、河原乞食、七の段のおまじない、隣のばあさん、墓石の訪問販売、空、雲、ナメクジ、、、、。意味なさげで意味ありげで。「はい、いのちの電話です」と聞かされた時の衝撃はこちらも同じだった。そして亡夫の遺骨。満島ひかりのあの性交は、稀にみる崇高な性交シーンだった。とても愛にあふれ、尊厳の気高さに圧倒され、僕は涙を流してしまっていた。そして、じんわりとしみこむしみこむ、おまじないような「せつな、たせつな、ろうばく、むこりった」。むこりったとはささやかな幸せという意味もあるらしいが、この映画にはそんなささやかな幸せを得て、生きていることを存分にかみしめている人たちがいる。この舞台が浄土真宗の根強い富山(おくりびとの原作もここ)っていうのもまた意味深い。仏教には「草木国土悉皆成仏」という教えがあるが、いつのまにかその言葉をかみしめていた。
「お弔いなんて、残された者の癒しの儀式。」という。そう、生きている者が勝手にケジメをつけたいだけなのかもしれない。だけど、そのケジメをしないと前に進めない者もいる。曇りがちだった人生を、晴れやかなるものにする準備のように。
と、こうして家でレヴューを書きながら、僕は塩辛でご飯を食べている。たまらなく美味い。生きているって感じている。
(ところで、エンドロールで見つけたが、薬師丸ひろ子はどこにいたんだ?)
役者が良い
「かもめ食堂」から雨後の筍のように"丁寧なライフスタイル"映画がボンボン公開されて、
果たしてこの監督がどれだけ関わってたのかも知らないが、もうお腹いっぱいになって見なくなりましたが、
今回、久々にていねい映画を。
言ってる事は当たり前の事で、描かれているのも割と当たり前の範疇だったのですが、嫌いになれない一本でした。それは、キャストがクセもの揃いだったからかもしれません。
狂気を孕んだ吉岡秀隆!
社長なのにマスクせずイカの上で喋りまくる緒方直人!
この二人は役を入れ替えても面白い作用があったと思う。
松山ケンイチの演技にも、もらい泣き。
江口のりこをたったあれだけのシーンで贅沢使いしてたり。
たま(さよなら人類)ぽい音楽はあからさまであまり好みではないけれど、良い時間を過ごせました。
「川っぺりムコリッタ」って、語感いいなぁ~。
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