「【11月12日/良い(11)皮膚(12)の日/アートの価値】」皮膚を売った男 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【11月12日/良い(11)皮膚(12)の日/アートの価値】
ニューズウィークが、11月12日が所謂「良い(11)皮膚(12)の日」で、そのため、この映画の公開日に決まったと伝えていた。
えっ!?マジ!?シリア難民問題を扱うのに、ちょっとふざけすぎじゃないかと考えてしまって、鑑賞を数日ずらした。
しかし、今日(16日)、「皮膚を売った男」を観て、これは、11月12日に観ても良かったと思っている。
それは、この作品は、シリア難民問題を背景にしながらも、アートとは何か、アートの価値とはどんななものなのかを世に問うている気がしたからだ。
良い皮膚の日の公開は皮肉っぽい感じがしたのだ。
そして、数年前に公開された映画「アートのお値段」も思い出された。
ところで、この作品には、実在のティム・ステイナーというモデルがいて、アーティストのデルボアが彼の背中にタトゥーを施し、そのタトゥーは「TIM」というタイトルで、アートコレクターに売却、死後に皮膚をはがすことを条件に売却額の一部をティムは受け取り、更に各地で展示されるデルボア展で「TIM」を展示することで報酬を得たりしている。
(以下ネタバレ)
この「皮膚を売った男」は、これにインスパイアされた作品なのだが、シリア難民という国際問題を背景にしながらも、そのタトゥーに群がるアートディーラーや美術関係者、ジェラシーや孤独、ラブストーリー、そして、ちょっとしたトリックを散りばめて、ストーリーを皮肉たっぷりに展開させているのだ。
映画「アートのお値段」では、無名のアーティストの作品が、アートディーラーの戦術でコレクターに高額な値段で売却され、アートディーラーがいかにも需要と供給がマッチした結果だとドヤ顔で主張したのに対し、若いアーティストは、本当は、自分の死後でも、自分の作品が美術館に展示されるようになることが本望なのだと本音を吐露する場面がある。
実は、この作品の脚本は、デルボアに許可をもらっているらしい。
アーティストは、現在の金余りの世界で、必要以上に高額で作品が取引される状況を理解し、きっと憂いてもいるのではないだろうか。だから、デルボアは二つ返事で、映画にゴーを出したのだ。
「皮膚を売った男」のサムの背中のタトゥーのオークションの価格は、500万ドル(約5億7500万円)だったが、「TIM」の実際の売却額は日本円に換算して約1900万円で、まあ、映画作品として誇張されたんだろうなと笑ってしまった。
この「皮膚を売った男」をご覧になった人は、是非、アートとは何か、アートの価値とはどんなものかを考えて欲しいと思う。
そして、エンディング。
映画の予告で、ISらしい連中が、サムを殺害する場面を何度となく見ていたので、状況はあっと言う間に理解できたが、シリアの一部を占領し、大量のシリア難民をうむきっかけにもなったISも、この作品は何気にバカにしていて、なかなか好感の持てるストーリーだなと思った。
最後になるが、なかなか好転する兆しはないが、シリア問題が良い方向な向かうことを祈りたい。
※ 実は、作品としての「TIM」の画像があるはずと思ってGoogleで検索していたら、この映画はくだらないというブログが、たまたまヒットしてしまって、ちょっと読んでみたら、このブログの方がくだらなかった。
批判には結構ありがちな、人物設定や登場人物の性格にあれやこれやイチャモンを積み重ねていて、実はフレームワークを探るとか、深読みがない、木を見て森を見ずみたいな、暇人にありがちな内容だった。
そうそう「TIM」は、なかなか見応えのあるタトゥーです。