シカゴ7裁判のレビュー・感想・評価
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アーロン・ソーキン キレッキレ
まず、オープニングシークエンスのキレッキレ具合でノックアウト。
アーロン・ソーキン監督は「ソーシャル・ネットワーク」の脚本家で、あの作品ではオタク調の早口で膨大なセリフでたたみかけるシーンが印象的だったが、本作ではシカゴ7達それぞれがバトンタッチ風に(放送禁止用語全開で)膨大なセリフを繋いでいくオープニングシーンになっていた。なんてアガるオープニングなんだろう。
オープニング後は豪華俳優陣による法廷劇で、本当に法廷しか映らない!笑
ですが、2時間があっという間に感じるほど引き込まれる内容。最高でした。
今の米国の絶望と希望を語るためのmetaphor
米国は摩訶不思議な国だ。いまBLMがクローズアップされているが、たびたび大統領選挙の争点にあがるほど一向に人種問題は進展しない。銃による暗殺で停滞する状況を「改善」しようとする暴力性が強い社会だ。かと思えば、一方でマイノリティや虐げられる人々を命がけで守ろうとするNPOやメディアのなかに間違いなく民主主義の正義は存在する。矛盾撞着した社会構造を持つ国家だ。
また、政権交代にあわせて政治体制は大きく変化するため、昨日までの重要推進政策が今日には問題ある再検討課題にひっくり返る。争点のオバマケアもそのひとつ。
本作の主役である被告7人(もとは8人)も政治の変化に翻弄されていく。原告の検察官も裁判官もある意味で政治の「被害者」だ。まるで今の最高裁判事任官問題と同じ話。
作品の時代の69年の米国と今の米国の姿はさまざまな点で重なってみえる。いやA.Sorkin監督は間違いなくその点を意識して制作しているはず。
69年当時のアメリカは、人種問題とベトナム戦争によって分断された社会であり、今の米国は新自由主義の「経済戦争」下で所得格差で社会は分断され、それとともに人種問題が再燃している。就任下の社会の分断を煽ることで自らの存在価値を維持してきた、ふたりの大統領の存在も象徴的だ。
戦争下での言論の自由はどこまで許されるか。同調圧力と政府におもねる日本のマスメディアのことを考えると他人事には思えない。むしろ69年や今の米国の方が格段に健全な状態だといえる。
本作は秀悦な法廷ドラマとしても十二分に楽しめる。被告7人の思惑や裁判の目指すゴールが異なり出だしから衝突する。
保守的で権威的な判事は、弁護人や被告に敵対的でさまざまな妨害や圧力をかけてくる。
政府も水面下で被告に不利な状況をつくり揺さぶりをかける。被告7人にとって、まさに八方塞がりの状況。
しかし、米国の正義を守るのは、最後は一人ひとりの一市民であり、主義・政党を超えた「アメリカの良心」なのだと思う。今の米国も必ず困難を乗り越えられるPower(回復能力)を持っている。そんなメッセージを強く感じる作品。
こういう作品を観ると、映画で政治や社会のタブーを恐れない米国の姿勢は、日本の映画界もぜひ学んでほしいといつも思わされる。
The whole wold is watching!
【守るべきもの】
ベトナム戦争のアメリカの死者は約5万8千人。
新型コロナの死者数が、この数を超えたと比較して話題になるほど、アメリカにとっては、これからも続く負の遺産だ。
ベトナム戦争は、インドシナ戦争を引き継いで、第二次インドシナ戦争と呼ぶ人もいるが、差し詰め前者が植民地主義の戦争とすれば、ベトナム戦争はイデオロギーの戦争だった。
自由主義と社会主義の戦い。
現在、トランプが大統領選を繰り広げる中で、バイデンを社会主義者と呼んで差別しようとするのは、アメリカ社会の特に白人層に社会主義を毛嫌いする風潮が残っているからに他ならない。
この裁判で、シカゴセブン+1が戦っているのは、検察ではなく、どちらかと言うと裁判官と権力だ。
アメリカでは、最高裁判所の判事を大統領が指名するなど、その政治信条が色濃く出る司法システムになっている。
つまり、それは判決にも結果として出てくるし、陪審員裁判でも、陪審員の白山と黒人の割合によって、被告の判決が大きく変わることは珍しくない。
こうしたものは映画としても描かれている。
ただ、確かに、こうした裁判のプロセスや裁判官には怒りを感じるのだが、この作品では、被告側の心情や態度の移り変わりを描こうとしているところも実は興味深い。
それぞれ異なる政治信条、財政事情、インテリジェンスか無学か。当初は、まとまりが全くなく、相互が理解しようとする気配がないところから始まり、非難を繰り返したり、時には激昂したりしながらも、デモの本来の共通のモチベーションが何だったのかを見出していく。
もし、この作品にメッセージがあるとしたら、それぞれ異なる信条があったとしても、何か見出せる普遍的な価値が必ずあるのではないかということだ。
アメリカで今も行われている、#BlackLivesMatter のムーヴメントにしても、暴徒化し略奪に走る者もいる。
だが、冷静な行動と秩序ある大きな大きな塊となった要求こそが世の中を動かすのだということではないのか。
あの、戦死者の名前を読み上げる場面には、そんなメッセージがあるのではないのかと思う。
これは、ベトナム戦争の合計死者、行方不明者のおおよそのデータだ。
南ベトナム側
死者、約30万人
行方不明者、約150万人
民間死者、約160万人
北ベトナム側
死者、約120万人
行方不明者、約60万人
民間死者、約300万人
この数字の示すところは膨大な死者、行方不明者の数だけではなく、南北のブレイクダウンの差も実は興味深い。
何を感じるかはそれぞれ違うと思う。
ただ、説明は割愛するが、僕は、ベトナム人にとってこれは、イデオロギーの戦いではなく、アイデンティティの戦いであったのではないかと思うのだ。
この後、中国がベトナムに戦争をしかけるが、ベトナムは中国にも勝っている。
最後に、政治が司法に介入しようとする姿は、最近の日本にもあった。
そして、それは世論によって退けられた。
しかし、またゾロ、政権はトライしてくる。
僕達の現在の社会システムで守るべきは一体何なのかも考えさせられる作品だったと思う。
世界が見ている!
THE WORLD IS WATCHING!!
《政治裁判》アーロン・ソーキンがまたも素晴らしい実話モノで、法廷モノを作ってくれた!世界が見てる!流石アーロン・ソーキン、自身の強みを最大限活かしている。豪華役者陣も本当に良い。
7人に自由を!8人いる?タイトルが出るまでの冒頭7分ですっかり引き込まれる。シーンのつなぎ方が天才か。物語の運び方、出来事の見せ方が本当に上手い。平和的抗議デモのはずがいつしか暴動に --- 裁判にかけられた各団体の代表者達。担当するのは堅物で偏った判事。途中助っ人キャラとして出てくるクソ格好良いマイケル・キートン。抜群の安定感でイメージ通りな役柄なエディ・レッドメインはいつまで学生役ができるのか。徐々に彼が主人公である理由が見えてくる、キャラクターや葛藤が浮かび上がってくる。暴動を起こしたのは?胸糞からの胸熱…え、え?からのそういうことだったのか!パワフルでエモーショナルに掴まれる。
アーロン・ソーキン × 法廷モノ =『ア・フュー・グッドメン』はじめ、オスカー受賞『ソーシャルネットワーク』や『モリーズ・ゲーム』(本作同様監督も)などキャラの立った軽妙かつ秀逸なセリフ回しに構成力で言わずと知れた名脚本家アーロン・ソーキンが、言葉の解釈や曖昧さで終盤の山場を持ってくるのが何とも感じ入った。そして一気にトム・ヘイデンに肩入れ・共感してしまう。それさえ説明しなければいけないとはな。暴力描写はじめここでは"60年代"が繰り広げられる。そして今語り直される価値がある。世界が見てる!!!!!!!
One egg is enough. We were chosen!! Our blood. 警官の横暴を皆見ろ、所有代名詞を使わずに曖昧に「彼は最高にイカしたアメリカ愛国者だ」
2020年ベストムービー!⭐️✨
Netflix作品。劇場での限定公開を観た。
とても見応えのある裁判ドラマでした。
当時アメリカで、この様な出来事が実際にあったということは、もちろん知りませんでしたが、当時の時代の雰囲気も伝わって来て、最後まで目の離せない作品でした。
ベトナム以降のアメリカを知っているからこそ、この作品の面白さがあるのではと思いました。
*60年代のアメリカについて多少なりとも知っている方が楽しめるかも知れませんね。ベトナム戦争とか、ヒッピー、公民権運動、ケネディ、ブラック・パンサー、アレン・ギンズバーグ、etc.
怒涛の130分
セリフやキャラクターが面白い。
却下する
事件の知識は無い状態で観賞。
1968年にシカゴで開かれた民主党全国大会会場近隣の公園、及び、周辺で行われた大規模なベトナム戦争抗議デモで暴動が発生し、暴動を主導したとして共謀罪で逮捕、起訴された7人の裁判の話。
事件直後お咎めは無かったが、体制の変化により、罪状を無理やり当て嵌められてというストーリーで、裁判とは名ばかりの、有罪にしたてあげる出来レース。
なんて恐ろしい陰謀ストーリーだよ!
当日何が起きていたかを小出しにみせながら、法廷劇を展開して行くけれど、判事もグルでまともに審理にならない胸クソの悪さ。
被告側も7人全員で1組ではないから、そこでの意見のぶつかり合いもあり、見所たっぷり。
クラークの「出した」は痺れたし、色めき立ったんだけどねー。
絶望からの、最後の有無を言わせぬ抵抗も非常に熱くとても面白く興奮した。
10/16からNetflixで配信されるので 主な出演者と簡単な感...
10/16からNetflixで配信されるので
主な出演者と簡単な感想を。
エディ・レッドメイン
ジョセフ・ゴードン=レヴィット
マーク・ライアンス
サシャ・バロン・コーエン
ケルヴィン・ハリソンJr
アレックス・シャープ
ジェレミー・ストロング
マイケル・キートン
ジョン・キャロル・リンチ
フランク・ランジェラ
ヤーヤ・アブドゥル
上記の他にも、観たことあるぞ!という役者さんが沢山出演していて、役者が揃っています。そして個々の役者さんたちの演技が素晴らしい。
個人的にはサシャ・バロン・コーエン、マーク・ライアンスの演技と人物が好きでした。マーク・ライアンスの放つある言葉は、あの場面にいた者、そして観ているこちらの鬱憤を晴らしてくれる言葉でした。
言葉と言えば、ヤーヤ・アブドゥルの言葉、、かなりずしりときます。
これだけの役者さんたちをまとめているのが、監督、脚本を務めたアーロン・ソーキン。
ソーキンが脚本した、
“ソーシャル・ネットワーク”
“スティーブ・ジョブズ”はどちらも映画館で
観ましたが素晴らしい脚本でした。
懐かしいところで
“ア・フュー・グッドメン”の原作と脚本も
ソーキンだったんですね。さっき知りました。。
権力と法廷、法律と感情、信念と立場。
重厚なテーマの中にウィットに富んだ会話が随所に盛り込まれていて、緩急のある構成が素晴らしい。
個々の人物の見せ方、背景の描写も丁寧に描かれている。
しかし、このお話しはどうやって終わりを向かえるのだろうと思っていましたが、、
見事でした。ここにきてのこの閉め。。
さすがに胸に込み上げる熱いものを閉じ込められずでした。
素晴らしい作品です。
Netflix x アーロンソーキン = 抜群の安定感
どうもNetflixオリジナルには抵抗がある
それは、いろんなジャンルを見ながらも、どこか視聴者の求める最大公約数でスクリプトを引いたような、そんな良く言えば安パイを地で行く、悪く言えば作家性を感じさせないどこかトゲを抜かれた作品が多いような気がしていたから。
で、今回の作品のような既にストーリーにメッセージ性があって、そして意表をつかれるよりは安心してクライマックスに期待できる下地、そしてアーロンさんという鉄板なドラマを撮れる監督の組み合わせは、すこぶる安定感が良いことに気づけた。
さすがにお金もあるから、俳優陣も良い。
たまたま、最近ペンタゴンペーパーズを見てて、自分の中で下地ができてたのもあり、あっという間の2時間強。
やっぱり、12人の怒れる男にはじまるこうした法廷ものは、分かってはいても最後のカタルシスにやられるのです。
それにしてもこのアーロンさんという監督、どこかくたびれた方程式で作品を作りがちだけど、その安心感が何よりも心地いいのです。
一周回ってやっぱりいいやつ。
しかし、家でもいいのに、あえて映画館で見て良かったと思わせてくれるレベルの作品をポンポンつくっちゃうNetflix、すげえわ。
今後もお世話になります笑
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