劇場公開日 2020年10月9日

「今の米国の絶望と希望を語るためのmetaphor」シカゴ7裁判 h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)

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4.0今の米国の絶望と希望を語るためのmetaphor

h.h.atsuさん
2020年10月18日
iPhoneアプリから投稿

米国は摩訶不思議な国だ。いまBLMがクローズアップされているが、たびたび大統領選挙の争点にあがるほど一向に人種問題は進展しない。銃による暗殺で停滞する状況を「改善」しようとする暴力性が強い社会だ。かと思えば、一方でマイノリティや虐げられる人々を命がけで守ろうとするNPOやメディアのなかに間違いなく民主主義の正義は存在する。矛盾撞着した社会構造を持つ国家だ。

また、政権交代にあわせて政治体制は大きく変化するため、昨日までの重要推進政策が今日には問題ある再検討課題にひっくり返る。争点のオバマケアもそのひとつ。

本作の主役である被告7人(もとは8人)も政治の変化に翻弄されていく。原告の検察官も裁判官もある意味で政治の「被害者」だ。まるで今の最高裁判事任官問題と同じ話。

作品の時代の69年の米国と今の米国の姿はさまざまな点で重なってみえる。いやA.Sorkin監督は間違いなくその点を意識して制作しているはず。
69年当時のアメリカは、人種問題とベトナム戦争によって分断された社会であり、今の米国は新自由主義の「経済戦争」下で所得格差で社会は分断され、それとともに人種問題が再燃している。就任下の社会の分断を煽ることで自らの存在価値を維持してきた、ふたりの大統領の存在も象徴的だ。

戦争下での言論の自由はどこまで許されるか。同調圧力と政府におもねる日本のマスメディアのことを考えると他人事には思えない。むしろ69年や今の米国の方が格段に健全な状態だといえる。

本作は秀悦な法廷ドラマとしても十二分に楽しめる。被告7人の思惑や裁判の目指すゴールが異なり出だしから衝突する。
保守的で権威的な判事は、弁護人や被告に敵対的でさまざまな妨害や圧力をかけてくる。
政府も水面下で被告に不利な状況をつくり揺さぶりをかける。被告7人にとって、まさに八方塞がりの状況。

しかし、米国の正義を守るのは、最後は一人ひとりの一市民であり、主義・政党を超えた「アメリカの良心」なのだと思う。今の米国も必ず困難を乗り越えられるPower(回復能力)を持っている。そんなメッセージを強く感じる作品。

こういう作品を観ると、映画で政治や社会のタブーを恐れない米国の姿勢は、日本の映画界もぜひ学んでほしいといつも思わされる。

The whole wold is watching!

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h.h.atsu
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