「英一の成長の物語」AWAKE レモンブルーさんの映画レビュー(感想・評価)
英一の成長の物語
《 AWAKE 》
目覚める、 起きる、 覚醒。
なんてカッコいいタイトルだろう!
雑然としながらも、新しい何かが生まれようとしてる脳内のような ワクワクするようなエネルギーに満ちているような、そんな空間に佇む 主人公 英一。
もう このポスター に 先ず やられた😝
で、将棋のプロを目指して挫折し、でもコンピュータ将棋を開発するというドラマなんだ…と知る。
将棋の事もコンピュータの事も…ほとんど何も知らない私。大丈夫かな?
でも、皆さんが知らなくても大丈夫だと言ってる!楽しみに待つことにした(笑)
確かに…ルールやプログラミングの事を分かってたら、もう少しドキドキしたり、興奮するかな?と思ったけど…
そこだけじゃなかった!映画の見どころは。
もう 清田英一(吉沢亮さん)、浅川陸(若葉竜也さん)、磯野(落合モトキさん)この3人が本当に素晴らしい!観る前は吉沢亮さん以外の俳優心情 失礼ながら、あまり存じ上げなかった。
でも、若葉さんも落合さんも 本当に 適役で監督さんのキャスティングの目の確かさに感服する!
ストーリー(脚本)も山田監督のオリジナルという。凄くしっかりと構成された脚本だと思う!「?」な所が無い。解りやすい!
それにしても、上映館が少なすぎます!「AWAKE」の公式サイトで調べたら、35館くらいの映画館でしか上映されてません。私も その中の映画館に3時間掛けて観に行きました。観たくても行けない方々がたくさんいらっしゃると思います。DVDを早く出していただくなり、配信とかで皆さんが観られるようにしていただきたい! 是非 観て欲しいです!
【 この先はネタバレを含みつつ感想?を書いて行きます。】
英一は生真面目で 努力家で とにかく負けず嫌いな性格。ただただ 将棋が好き というか、将棋だけは誰にも負けたくない少年だった。
一方、陸は明るくて気さくな天才肌の少年。将棋の指し手の予想で英一に勝った事が切っ掛けで英一は陸に強いライバル心を燃やす。陸も同年代の棋士の中で勝てなかった相手が英一だけだった事で英一を強く意識するようになる。
そして それは20歳になるまで英一と陸の間に ずっと静かに燃え続けた。
この子役さん達が素晴らしい!セリフも多くないのに、英一と陸の心情が伝わる演技!そして、二人ともに大人になった時の雰囲気によく似てて!
とくに英一役の子は声や話し方など違和感がほとんどなかった!
自分では自信があった手を指したのに、陸の天才的な閃きの一手に敗れた事で、英一は将棋をスッパり辞めてしまう。この時の英一の行動は まさに負けず嫌いな性格を表していると思った。
一方、陸は…多分、残念な気持ちだったんだろう…もっと英一と勝負していたかったんだろうな…。
将棋の事でカッとして喧嘩して父に迎えに来てもらった事で、自分の不甲斐なさに嫌気がさす英一…でも、優しいんだ、お父さん。(このシーン座席に横たわる吉沢亮さんが美しすぎて 一瞬 英一が居なくなっちゃった!)(笑)
やりたい事が見つかって「人工知能研究会」のドアを開けて英一が目にした光景!
ああ!ここか!AWAKEのポスターは…
もう 機械と本と色んなものがごった返してるような いかにも一人しか居ない部室な雰囲気。だけど、土鍋や調味料なんかが置いてあって、凄くリアル(笑)?窓から射す光がいい!
磯野の頭の良さが解る早口とジョーク。英一の 何処までも課題に真面目に努力する姿に刺激されて、いつの間にか最強のバディになって行く様を落合モトキさんが、本当に魅力的に演じていて楽しい!表情が豊か(笑)特に、電王戦でAWAKEがピンチになった時に見せた祈るような表情が とても素晴らしかった!
英一は完璧だと思ったプログラミングに唯一見つかった弱点の改良を必死に訴えるが、「大人」の磯野になだめられて…落ち着く。英一は言う。
「アイツ(陸)はきっと指さないよ(AWAKEが負けるような本来棋士が指す手ではない…つまり清々堂々としたやり方とは言えない手を)。僕は…定石に囚われない、人間には考えられないものをAWAKEで作りたかっただけ…、でも この機会を逃したら、一生 アイツと戦う事はないと思ったら 無性にやってみたくなった…アイツにAWAKEの強さを認めさせられたら…」と…。
英一と陸のライバルを超えた何かを感じさせる 胸熱なシーンだった。
陸は陸で、得意ではないコンピュータ将棋で 散々苦戦しながら、もがき、対戦に備え挑む!英一のことは意識してないと答えるが、心の中では…ずっと英一とまた勝負したかったはず!人間棋士として負ける訳にもいかない。でも…どうしたらAIに勝てるのか!?
電王戦のシーンは 緊迫した空気と 英一と陸の熱い想いがビシビシ伝わって来て、知らず知らずのうちに、目に涙が込み上げていた。二人の成長と挫折と復活を長年に渡って見て来た奨励会の先生(本当に良い先生)の気持ちになってしまった。
陸が AWAKEの唯一の弱点に至らせる手を誘導する事が分かった時、英一は…
「AWAKE」は英一に生き甲斐を目覚めさせた事だけじゃなくて…
英一の「真の大人」「真の棋士」への目覚めを意味しているのではないだろうか?
英一は幼い頃、勝負に負けたのが分かっていながら「投了」をせずにいて先生から「相手を尊重するように」と注意されるも負けず嫌いで先生の言葉に「はい」とは言えない子だった。成長するにつれ、表面上は「負けました…」とは言うものの、明らかに 悔しくてイライラするような仕草だった。陸に負けた時も…。やけくそな辞め方。
けれど…陸の棋士としてのプライドを捨てても、AWAKEに勝つ為に研究に研究を重ねて…多分、ネット住民が言うようなカンニングではなく、本当に血が滲むような努力の結果 導き出した手である事を 英一は悟ったのだろう。棋士にとっては「勝つことが全て!」
次第に窮地に落ちて行く中、英一の息遣いが乱れていく…
あれは、悔しさ…というより、陸という天才を 認めざるを得ない程に 陸に感動していたのだと思う…。
素直に相手の強さを「尊重」出来た。英一の透き通った瞳の涙のような光が そう思わせた。
「投了します」と静かな声で負けを認めた英一。感動した!吉沢さんの表情 素晴らしかった!
対戦が終わり、初めてお互いを見つめた二人。英一の表情には、暗さも悔いもなかった。英一は成長していた、人間として。
そして陸は…
言葉も視線も合わさずすれ違った時に陸か言う
「強かったな…」
陸は陸で、英一を讃えていた!対戦後 言いたかったけど、照れ臭くて…すれ違いざまに サラッと。いいヤツじゃん(笑)
英一は その一言で満たされた!良かったね!英一!努力は無駄じゃなかった!
数年後 英一は見違える程 明るい青年(大人)になっていた!
トイレで見掛けた新聞の陸の活躍を 心から笑って喜んでいる。そして、偶然に、慎一郎君を挟んで陸と 将棋の対戦をする…意地も躊躇いもなく自然に…😆
「二人とも立派な棋士です。でも…二人にはもっと自由な場所で対戦させてあげたかった」「将棋は楽しいものですからね」という 先生の言葉通りに…😊
このラストシーンが、あって本当に良かった!二人のこれからの、友情と繋がりを想像すると 本当に嬉しい😊なんか泣けて来る。
「AWAKE」は熱い想いを秘めた二人の成長と青春のドラマだった!そこに少し大人目線の先輩が加わって、少しだけ特殊な世界の青年達のドラマで、派手さは無いんだけど、感動がじわじわと湧いて来るような素敵な映画だった。そして、勝つという意味や負けを認める事の大切さについて考えさせられた。
この映画が初作品という山田監督。素晴らしい映画だった。
映像も落ち着いていて、とにかく人工知能研究会の部室の雰囲気が凄く良い!几帳面な英一の性格を表すようなキチッと整った寝室と、温かさが滲む父の居場所の雰囲気の違いとか、磯野が卒業した後の部室が 英一によってこざっぱり整頓された感じに変わっている所とか、登場人物の衣装にも 美術スタッフさんのこだわりがいっぱい伝わって来た!
そして、セリフに依らずに表情に語らせる映画らしい映画だと思った!そして 音もなく、ただ駒の音だけが響くシーンも役者の表情のアップが多用されていて、今 英一は…陸は…何を考えているかが良く伝わって来た。
将棋の世界の礼儀作法も興味深かった。
相手がAIだろうと「お願いします」と一礼して始めること…,。負けた方が「投了します」と言わないと 相手の勝ちにならない事 (違うかな?)
若葉竜也さんは…この映画で、初めて知りましたが、陸は本来 冗談も言う茶目っ気のある青年であるというキャラを真面目な勝負シーンだけでなく笑顔が素敵な側面も自然に演じられていて、もっと活躍されても良いのに!と思ってました。が、来週辺りから?朝ドラの「おちょやん」に出演されるようで、楽しみになりました。
落合モトキさんは…多分、あちこちで活躍されてるような気がするのですが、…英一の努力と才能を認め、英一の夢に前のめりで応援する先輩の人の良さと頼りがいのある懐の大きさを本当に魅力的に演じていて、素敵な役者さんだと思いました!
そして、英一を演じた吉沢亮さん。今年は「青くて痛くて脆い」も大学生役、しかも他人との距離を置きたいネクラな人物という 同じようなタイプの青年役でしたが、「青くて~」の楓と この英一は似て非なるもの!全く別人でした!吉沢亮さんの役への没入ぶりやこだわりは本当に素晴らしいと改めて思います!吉沢亮さんは英一は今まで演じた役の中でも一番くらいに好きな役だと仰っていて、映画への出演もストーリーの面白さに惹かれてとの事でした!英一の挫折と成長を細やかな演技で感動させていただきました!
その都度、全く違うキャラになりきる吉沢さん。今年は「一度死んでみた」に始まり、「青くて〜」「さくら」そして「AWAKE」と4作品を観る事が出来た事は コロナ一色に染まりそうな一年に、次々に楽しみと喜びと生き甲斐😊も与えていただき、本当にファンとしてありがとうございました!に尽きます!
来年は大河と 「東京リベンジャーズ」で会えるのを楽しみにしています!
本当に「AWAKE」は最高なクリスマスプレゼントでした🎉😊
高速90分は遠いですね。足代・駐車料金だけでもばかにならない、って言うか、映画代より高くつくかもw
マイボス~ってドラマですよね?青葉竜也も出てたんですか?
彼の場合、「軽いお兄ちゃん役が上手かったから」と言うシンプルな理由だと思います。AWAKEで「何でもできるよ俺は!」ってアピールできて良かったですw
レモンブルーさん、コメントありがとうございます。
「投了します」はいい言葉ですね~
コンピュータの限界をも感じる作品でした。
配給会社も大変ですよね。
大手東宝だったら確実に全国公開だけど、弱小会社だと各映画館、シネコンに営業に回らなくちゃいけなかったり・・・で、動員数が見込めそうなら公開するといった仕組みかと思います。
この作品の配給キノフィルムズは最近ハズレがないので期待しています。
こーるどとまとさん こちらにもコメントありがとうございます! 2月下旬から 我が県でも やっと上映されることになりました!また、観られます\(^▽^)/!新たな発見をしたいと思います!それまでに…コ○○が落ち着いてくれるのを 祈ります…。
レモンブルー様、コメントありがとうございました。
こちらのレビューも読ませていただきましたが、とても素晴らしいですね。またあらためて鑑賞すると別の発見があるかも、と思っております。
すみません、1/6に返信いただいてたのを見逃してました。AWAKEの評判が良いのですね。再上映を期待します!私の自宅は映画館の近くなので、徒歩で行けるんですが、そこは鬼映画みたいなお子様向けのが多いんです↷いつもすいてるから感染のリスクは少なくていいんですが、そこも11日から8時までになります。そうなると、会社員が平日の仕事終わりに観るのは不可能ですねえ。土日に密になりそう。
レモンブルーさん、ありがとうございます。千葉県でも今週から1館で上映してました。ちょっと遠くて乗り換えが複雑なので、感染拡大中の今は止めておこうと思いますが、ぜひ観たいです。
うわー、この映画の存在自体を知りませんでした。上映館がほとんど無いんですね。良い映画が映画館で観られないのは悲しいです😢コロナ収束後に再上映してくれないかしら。
私も、対局のシーンはあの手を使うのか、、と、手に汗でした。
人間としてAIに負けて欲しくないと思いつつ、その手を使っては、、、と複雑な心境です。
最後も爽やかで良かったですね。
グレシャムの法則さん 共感とコメントありがとうございます!
自分との訣別ですか…!なるほど!対戦後の表情は吉沢亮さんの解釈に委ねられていたそうです!(キネマ旬報を今日読んで知りました!)英一が過去の自分が抱えていたものから 解放された瞬間と捉えたようです!訣別ですね!
本当に素晴らしい表情、演技だと思いました!
吉沢亮さん。
なんの悪意も他意もなく、言いますが、本当に、〝投了〟が絵になる役者さんだと思いました。『さくら』でも、『青くて…』でもそうでしたが、自分との訣別を演じさせたら、(他も凄いのですが)天下一品ですね。
引き際を知らないトランプさんに、爪の垢でも、と思ってしまいました。
コメントありがとうございます。
面白かったですねー。
自分が将棋の知識を持っていたら、もっともっとハマったんだろうなーと、いう勿体なさというか不甲斐なさを感じました(*_*)
おはようございます。
見逃していました・・。3時間かけて観に行かれたのですか!!
素晴らしい・・。
私は、1.5Hまでですね・・。
では、又。
良いお年を。
NOBUさん 共感 コメントありがとうございますm(__) はい、そうですね!若葉さんはセリフが少ない分、目に心情をたたえて 静かな炎のような演技をなさっているなと思いました。素敵な役者さんですね。
今晩は
私は将棋をテーマにした小説、映画が好きです。近年の映画では「泣き虫しょったんの奇跡」「聖の青春」(原作小説も凄いです。)でしょうか。
今作は、当方が勤める会社と緊密な関係を持つ会社さんが関わっていた事もあり、会社傍のミニシアターで鑑賞しました。
将棋の映画は躍動感が制限される代わりに、役者さんの表情が勝負になると思うのですが、若葉さん(敢えて、吉沢さんではなく)の表情が印象的な良作でしたね。
では、又。