ノマドランドのレビュー・感想・評価
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感想:物語が様々な人に開かれていることの大切さ + (おまけ)登場人物スワンキーさんが気になった方へ
普段娯楽映画を見慣れていて、こういうタイプの映画を見ない友人にこの映画を勧めるとしたら、私は「映画のメッセージとか考えなくていいから、ただ2時間旅をするような気持ちで味わえばいいよ」と言うと思う。この映画を見た人ならわかると思うが、この映画は私たちに「ノマドになれ」と言うような押しつけがましさは微塵もない。
もちろん、この映画にはリーマンショック以降のノマドの生き方を選んだ人たちのアンチ資本主義的な態度や、アメリカの貧富の格差が映し出されていると思う。でも、その生活の実はネガティブな側面も同時にたくさん描かれているし、ノマドを選ばず定住する人たち、家族を持つ人たちの姿も描かれている。彼らがノマドになった理由は政治的なものだけではなく、もともと彼らの中にあった個人主義的な考えと結びついていたり、過去に囚われて次の人生にすすめない事が原因だったりと、当たり前だが一つの理由ではない。この映画に「この人の生き方が正解です」等というものはないのだ。
「この映画の意図は?」と評論家的な答え合わせをすることよりも、この映画を見ている時間を味わう事、自分がこの映画を見てる間何を感じるかを見つめる事が大切だ。(それは実はヴィム・ベンダース等の過去のロードムービーの伝統にも通じるところがある。)分断の時代、誰もが自分側か敵側かとネット上で争っている時代に、巨悪を凶弾したり、これが正義だと息巻くのではなく、ただそこにある人達の本当の生活をしっかりと静かに見つめる。そのことによってこの映画は主義主張を超えて、多くの人に開かれていると思うのだ。
この映画を見られた方にもう一つおまけとして、伝えたいことがある。(よって見てない人はここからは飛ばしてほしい)
この映画は二人のメインの役者を除いて、全て実在の人物が本人を演じている。では、素人とは思えない忘れられない印象的な演技を見せてくれた、スワンキーさんに起こったあのような大変な出来事も事実?と気になられた方もいらっしゃったのではないだろうか?そこで、英語の関連サイト等で確認してみたところ、実際のスワンキーさんにはあのような病気は無く、健康に今もノマドの生活を続けられているそうだ。あの話は実は彼女の旦那さんに起こった悲劇をもとに彼女が演じていたのだそうだ。彼女はちなみに、フランシスマクド―マンドの事も二度もアカデミー主演女優賞をとった女優とは全く知らず、誰かのホームビデオぐらいの映画に自分が出るのだと思っていたらしい。
わりと普通
現実の一面ではあろう
ノマドランド
see you later
アマゾン勤務
【邂逅と別れ、そして、再会】
自分の言葉の表現力のなさに嫌気がさすことがある。
この映画はそうだ。
重厚な映像や演技が、軽いタッチの上っ面の評価など受け付けない気がする。
そんな作品だ。
エンディングに向かう場面、深く息をしながら、目頭が熱くなるのを感じた。
大切な人を思い出す。
自分の魂と向き合うことになる。
(以下ネタバレ)
事業閉鎖や、金融危機の話題が出る場面がある。
ギグ・エコノミーに搾取されているように見える場面もある。
しかし、彼等は、決して自分の境遇を呪って彷徨っているわけではないのだ。
いや、彼等は、彷徨ってなどいない。
魂の行き着く場所を探し求めているのかもしれないが、しっかり生きているのだ。
そういう意味で、ホームレスやヒッピーではなく、遊牧民になぞらえたノマドという呼び方は合っているかもしれない。
彼等は、喪失感と向き合い、或いは、向き合える時を待ちながら、しっかりと生きているのだ。
邂逅と、さよなら、そして、再会を繰り返しながら。
「さよならは、最後のさよならではないのだ」との言葉は胸を打つ。
いつか、その魂は、大切な人と再び巡り会うことが出来るかもしれない。
それは、いつになるのか、誰にも分からない。
だが、いつの日か、その時が必ず来るのだと祈りたくなる。
それは、自分自身に向けられた祈りでもある気がする。
ナレーションのかわりに流れるピアノ旋律が心に響く
本編を通じて伝わってくるファーンの生き方や考え方に徐々に共鳴し、ノマドという生き方に憧れさえ抱いてしまった。フランシス・マクドーマンドの演技力には圧倒される。実在するノマドの一人を追いかけているドキュメンタリー映画にしか感じない。
ノマド的ライフスタイルのいいところだけを切り取って映像にはしていない。高齢者には過酷な肉体労働、ついて回る病気、金欠、排泄物の処理までも隠すことなく描かれている。
積極的な理由でノマドになった人たちは、ほとんどいない。公的年金だけでは、家賃を払うことすらおぼつかない。ホームを家から大型ワゴン車やキャンピングカーに変えることによって家賃から解放され、経済的な自立が可能となる。その代償として、季節に応じて非正規の職場を何千キロも移動する渡り鳥のような生活が待っている。しかも過酷な肉体労働しかない。
ノマド的ライフスタイルを新しい自立と肯定的に捉えることはさすがに自分にはできない。行きすぎた自由主義経済からこぼれ落ちた人達が、生きる目的を必死で探した結果だと思う。それであっても良き労働者、良き隣人であり、助け合って生活するノマドの生き方には感動すらする。
ただ、橘玲氏が指摘しているようにノマドとして生活できるのは、白人にだけ許された特権であることも見過ごせない。有色人種が禁じられた場所で車中泊をすれば、あっという間に逮捕されてしまうからだ。
いろいろな問題を含んでいるとはいえ、映画としては秀逸で、ナレーションのかわりに流れるピアノ旋律がノマド達の心情を語っているように感じる。
ここに幸あり♪
旅というものの魅力
フランシス・マクドーマンドが凄すぎます
見終わって数時間たちますが、
まだまだ映画の中に入り込んで抜け出せていません。
誰もがきっと、自分の人生や心の内といくらか重ね合わせて、主人公と現実の自分とを行ったり来たりしながら、気がついたら映画の世界にどっぷり浸っていた、
素直にそう思わせてくれた秀作です。
ノマドランド
癒しの旅
定住しない生き方を選択する動機は、ただいろんな場所で生活することが楽しいからなのかもしれないが、この映画に出てくる人々は、あまり楽しそうではない。
逆にいろんな事情を抱えて生きることが苦しそうに見える。
自分は、本作の定住しない生き方は、癒しの旅、もしくは巡礼なのだと思った。
生きていく上で心の傷を負うことは多い。年を取るほどに取り返しのつかないことも増え、静かな絶望の中で生きる人も少なくない。
そうした痛みを抱えながらも、自然の中に身を置き、清浄な水に浸かることで心身が浄化されていく。
また同じような境遇に身を置く人々と交流することで、まるでセラピーのグループワークのように心が解きほぐれていく。
癒しの旅は、自分の内面の闇と対峙する孤独なプロセスなのだ。
そうした巡礼を経ていくことで家族との関係、交流する人々との関係が見直され、人と人が助け合って生きていくことの重要さを再確認する。
フランシス・マクドーマンドの演技が超絶素晴らしい。
この人の佇まいの説得力は尋常じゃない。
それと撮影の美しさと音楽。
とても地味な内容の作品で暗くなりがちな脚本なのだけど、それを格調高い作品に昇華させている。
若干、地味すぎ、暗すぎ感は否めないのだけど、大人の映画ファンを納得させる渋い作品でした。
ハウスレスだ!
綺麗に共感しちゃダメダメ
これは悩ましい、痛いところグリグリ突いてる
何にも邪魔されないノマドという生きかた、ホームレスではなくハウスレス、っていう世界観
でも結局のところそんなんは自尊心のあやが捻れて表出したに過ぎない、素でみれば自明だけど、みんな実質ホームレス
大半の人のプライドや誇りは慈愛の援助を無遠慮に受けられるほど低くないから、ついつい、"ノマド" やりたくてやってるって化粧しちゃう、そしてそんな認知的な不調和が、もう周りには拾えない感じで噴き出しちゃう
自由を謳歌する気持ちと将来を不安視する気持ちとがあったとして、みんな歳とるからだんだん不安が大きくなるのは当たり前、そうすると、うっかり安らかな自死を願うようになる、ただでさえ社会が付いていけないテーマを、その今のかりそめの先に求めるのか?
Dedicated to the ones who had to depart
エンドロールの最後にこんな文章が出てくる、Have toの構文が入ってるのが大事なんだと思う、心からノマドをありだと評価しているなら、ノマドに何か希望を見ているなら、had toっていう、この二つの単語は入らないはずだよ
妙に刺さりました
若者には退屈な映画かもしれないが・・
内容・質ともに文句のつけようが─
映画って何なんだろうってあまり考えないし、そんな徒労したくないけれど、この作品を見ていると、映画って楽しんだり感情を動かすことももちろんのこと、学びでもあるんだなぁと実感してしまいました。
真似るとか暗記するとか身につけるとかとは違った、学び?感化されるとか、ふるえあがる、何かをしたくなるというもの。
何か突き動かされるような感覚になるような気がしました。
今のアメリカ、アメリカそのもの、のみならず、現代社会の実状、将来、生き方、人生・・・
知ったところでどうこうなるものでもないし、記憶していたところで役に立つかどうか分からないけれど、この作品を見たことによる影響は自分の中で確実にあるような気がしています。
そんな小難しいことなどありつつ、さらに単純に楽しめるし、質の良い映像と音楽で感情が刺激され、感動的な作品でした。
どうしてもスリー・ビルボードと比較してしまいますが、そうすることで一層マクドーマンドの凄さ素晴らしさ魅力が実感できるのではないでしょうか?
広大なアメリカの大地とは対照的に小さな存在として描かれているファーン、しかしながら力強い山々や荒涼とした地平線に決して負けないものがありました。マクドーマンドでなければ成立しなかったかもと思うのは大げさでしょうか─。
少ない台詞、断片的な描き方なのに、内容が非常に分かりやすくて、驚愕してしまいます。説明など皆無なのに、内容がよく分かる。テーマが重いし難しいので、この分かりやすさは実に有り難くて、だからこそ感動してしまいます。
一言でノマドというものを語り尽くせないところもにじみ出ていたし、ホント静寂続きで飽きそうなんだけど、ずっと引きつけられたし、とにかくモンスター級の映画だったという印象です。
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