ノマドランドのレビュー・感想・評価
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生きる意味を考えさせられた
ドラマとドキュメンタリーが融合したような、それでいて詩的で不思議な作品でした。
神秘的な風景、圧倒的な自然の姿。
紡ぎ出される人々の暮らし。
企業に勤めていても、突然生活基盤を失うことはあり得る時代に生きている現実を突きつけながら。
遊牧民(ノマド)のようにさすらって日々を懸命に生き、楽しみを見つけようとする、主人公ファーンの前向きな姿を観ながら、生きる意味、働く意味などに思いを馳せました。
映画がきっかけで、自分自身の根源と対話する感覚に陥りました。
また、過度に観客の感情を誘導することなく、自然の素晴らしさと厳しさに寄り添うような、抑え目の音楽が心に染みて。
ほとんどの曲が、自然の音(波や風、焚き火、木々の葉の擦れる音など)をかき消すことなく、重なるように流されていたのが印象的でした。
ノマドランドを見て
ノマド生活に憧れる
私はアメリカの荒涼とした大地を自動車で走るのが好きだし、映画に出てきたバットランド国立公園(とWall Drug)が懐かしかったので、むしろノマド生活に対する憧れを強く感じた。季節ごとに、Amazonの仕分け業務や、RV宿泊施設のトイレ掃除など、季節的な仕事はけっこうあるもので、キャンピング・カーに居住しながら、高齢者が自由に生きていけるならそれでいいじゃないかとすら思った。ネバダ州の企業城下町で夫と暮らしていたが、夫とは死別し、リーマン・ショック後に会社が倒産したことで、町がなくなってしまう。60歳にして主人公のファーンはノマド生活を始める。若い頃の企業城下町への定住生活は映画の中であまり描かれていない。だが、会社が大好きで従業員と家族ぐるみの付き合いしていた夫と一緒に暮らしていた幸せな生活であったことが、映画の中で語られる。それはノマド生活と全然違うように思えるのだが、映画を観ているとその延長線にあるようにすら思える。過去の思い出を懐きながら、自由にアメリカを移動するファーンは、やはりそれまでの人生の延長を生きている。フランシス・マクドーマンドが本当に素晴らしいなと思う。他に登場する人たちも実際のノマド生活者であるらしいし、彼女らが実に魅力的であるから、やはりノマド生活に対する憧憬を感じたのだろう。監督は中国系アメリカ人のクロエ・ジャオ。彼女の撮ったアメリカの大地の景色が本当に壮観であり、主人公の心象をうまく象徴していたと思う。アカデミー作品賞はノマドランド、主演女優賞はフランシス・マクドーマンドかな。
感想:物語が様々な人に開かれていることの大切さ + (おまけ)登場人物スワンキーさんが気になった方へ
普段娯楽映画を見慣れていて、こういうタイプの映画を見ない友人にこの映画を勧めるとしたら、私は「映画のメッセージとか考えなくていいから、ただ2時間旅をするような気持ちで味わえばいいよ」と言うと思う。この映画を見た人ならわかると思うが、この映画は私たちに「ノマドになれ」と言うような押しつけがましさは微塵もない。
もちろん、この映画にはリーマンショック以降のノマドの生き方を選んだ人たちのアンチ資本主義的な態度や、アメリカの貧富の格差が映し出されていると思う。でも、その生活の実はネガティブな側面も同時にたくさん描かれているし、ノマドを選ばず定住する人たち、家族を持つ人たちの姿も描かれている。彼らがノマドになった理由は政治的なものだけではなく、もともと彼らの中にあった個人主義的な考えと結びついていたり、過去に囚われて次の人生にすすめない事が原因だったりと、当たり前だが一つの理由ではない。この映画に「この人の生き方が正解です」等というものはないのだ。
「この映画の意図は?」と評論家的な答え合わせをすることよりも、この映画を見ている時間を味わう事、自分がこの映画を見てる間何を感じるかを見つめる事が大切だ。(それは実はヴィム・ベンダース等の過去のロードムービーの伝統にも通じるところがある。)分断の時代、誰もが自分側か敵側かとネット上で争っている時代に、巨悪を凶弾したり、これが正義だと息巻くのではなく、ただそこにある人達の本当の生活をしっかりと静かに見つめる。そのことによってこの映画は主義主張を超えて、多くの人に開かれていると思うのだ。
この映画を見られた方にもう一つおまけとして、伝えたいことがある。(よって見てない人はここからは飛ばしてほしい)
この映画は二人のメインの役者を除いて、全て実在の人物が本人を演じている。では、素人とは思えない忘れられない印象的な演技を見せてくれた、スワンキーさんに起こったあのような大変な出来事も事実?と気になられた方もいらっしゃったのではないだろうか?そこで、英語の関連サイト等で確認してみたところ、実際のスワンキーさんにはあのような病気は無く、健康に今もノマドの生活を続けられているそうだ。あの話は実は彼女の旦那さんに起こった悲劇をもとに彼女が演じていたのだそうだ。彼女はちなみに、フランシスマクド―マンドの事も二度もアカデミー主演女優賞をとった女優とは全く知らず、誰かのホームビデオぐらいの映画に自分が出るのだと思っていたらしい。
わりと普通
現実の一面ではあろう
ノマドランド
see you later
アマゾン勤務
【邂逅と別れ、そして、再会】
自分の言葉の表現力のなさに嫌気がさすことがある。
この映画はそうだ。
重厚な映像や演技が、軽いタッチの上っ面の評価など受け付けない気がする。
そんな作品だ。
エンディングに向かう場面、深く息をしながら、目頭が熱くなるのを感じた。
大切な人を思い出す。
自分の魂と向き合うことになる。
(以下ネタバレ)
事業閉鎖や、金融危機の話題が出る場面がある。
ギグ・エコノミーに搾取されているように見える場面もある。
しかし、彼等は、決して自分の境遇を呪って彷徨っているわけではないのだ。
いや、彼等は、彷徨ってなどいない。
魂の行き着く場所を探し求めているのかもしれないが、しっかり生きているのだ。
そういう意味で、ホームレスやヒッピーではなく、遊牧民になぞらえたノマドという呼び方は合っているかもしれない。
彼等は、喪失感と向き合い、或いは、向き合える時を待ちながら、しっかりと生きているのだ。
邂逅と、さよなら、そして、再会を繰り返しながら。
「さよならは、最後のさよならではないのだ」との言葉は胸を打つ。
いつか、その魂は、大切な人と再び巡り会うことが出来るかもしれない。
それは、いつになるのか、誰にも分からない。
だが、いつの日か、その時が必ず来るのだと祈りたくなる。
それは、自分自身に向けられた祈りでもある気がする。
ナレーションのかわりに流れるピアノ旋律が心に響く
本編を通じて伝わってくるファーンの生き方や考え方に徐々に共鳴し、ノマドという生き方に憧れさえ抱いてしまった。フランシス・マクドーマンドの演技力には圧倒される。実在するノマドの一人を追いかけているドキュメンタリー映画にしか感じない。
ノマド的ライフスタイルのいいところだけを切り取って映像にはしていない。高齢者には過酷な肉体労働、ついて回る病気、金欠、排泄物の処理までも隠すことなく描かれている。
積極的な理由でノマドになった人たちは、ほとんどいない。公的年金だけでは、家賃を払うことすらおぼつかない。ホームを家から大型ワゴン車やキャンピングカーに変えることによって家賃から解放され、経済的な自立が可能となる。その代償として、季節に応じて非正規の職場を何千キロも移動する渡り鳥のような生活が待っている。しかも過酷な肉体労働しかない。
ノマド的ライフスタイルを新しい自立と肯定的に捉えることはさすがに自分にはできない。行きすぎた自由主義経済からこぼれ落ちた人達が、生きる目的を必死で探した結果だと思う。それであっても良き労働者、良き隣人であり、助け合って生活するノマドの生き方には感動すらする。
ただ、橘玲氏が指摘しているようにノマドとして生活できるのは、白人にだけ許された特権であることも見過ごせない。有色人種が禁じられた場所で車中泊をすれば、あっという間に逮捕されてしまうからだ。
いろいろな問題を含んでいるとはいえ、映画としては秀逸で、ナレーションのかわりに流れるピアノ旋律がノマド達の心情を語っているように感じる。
ここに幸あり♪
旅というものの魅力
フランシス・マクドーマンドが凄すぎます
見終わって数時間たちますが、
まだまだ映画の中に入り込んで抜け出せていません。
誰もがきっと、自分の人生や心の内といくらか重ね合わせて、主人公と現実の自分とを行ったり来たりしながら、気がついたら映画の世界にどっぷり浸っていた、
素直にそう思わせてくれた秀作です。
ノマドランド
癒しの旅
定住しない生き方を選択する動機は、ただいろんな場所で生活することが楽しいからなのかもしれないが、この映画に出てくる人々は、あまり楽しそうではない。
逆にいろんな事情を抱えて生きることが苦しそうに見える。
自分は、本作の定住しない生き方は、癒しの旅、もしくは巡礼なのだと思った。
生きていく上で心の傷を負うことは多い。年を取るほどに取り返しのつかないことも増え、静かな絶望の中で生きる人も少なくない。
そうした痛みを抱えながらも、自然の中に身を置き、清浄な水に浸かることで心身が浄化されていく。
また同じような境遇に身を置く人々と交流することで、まるでセラピーのグループワークのように心が解きほぐれていく。
癒しの旅は、自分の内面の闇と対峙する孤独なプロセスなのだ。
そうした巡礼を経ていくことで家族との関係、交流する人々との関係が見直され、人と人が助け合って生きていくことの重要さを再確認する。
フランシス・マクドーマンドの演技が超絶素晴らしい。
この人の佇まいの説得力は尋常じゃない。
それと撮影の美しさと音楽。
とても地味な内容の作品で暗くなりがちな脚本なのだけど、それを格調高い作品に昇華させている。
若干、地味すぎ、暗すぎ感は否めないのだけど、大人の映画ファンを納得させる渋い作品でした。
ハウスレスだ!
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