ノマドランドのレビュー・感想・評価
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人生は旅
生き方とは、
ノマドランド、
側からみたら、汚い、イタイ、いい歳して何やってるんだ、
そんな言葉が飛び交いそうだが、本作を見ると、
一人一人が望んで、その生活へと飛び込んでいってるのがわかる。
それぞれの理由があって、その生活をしている。
その理由すらも、この作品を見れば、必要がないような、
そんな気がするのだ。
誰もいない岩山、誰も見ていない朝焼け。
死んでもいいほど美しい卵の殻。
それは、もはや生と死を超えた、
この地球と宇宙と一体になるような感覚かもしれない。
暖かい家庭より、孤独を望むのは、
死した人への愛だったりするしね。
汚いものや、生活のリアルを描きつつも、
それが人間らしさだったり、儚さだったり、
美しく見えるのも、ああいう生活をしているかですかね。
エンドロールでノマドの人々は本名なのもいいよねえ。
それにしても、途中のフライドチキンが美味しそうすぎた!
あと、布団の中で写真を眺める表情の深さよ。
ブロンド美女枠や、アニメオタク枠があるように、
もはや、"フランシスマクドーマンド“という枠組みですな。
唯一無二の女優さんであり、人間であるように思う。
この役、他に誰が出来たよ…。
ただ、アカデミー賞受賞はない気がする。
そういう作品ではなく、彼女のありのままの、
生きる力強さがそのまま役として現れているような、そんな魅力でした。
本当のサヨナラを知るからこそ
ノマドライフのドキュメンタリーのようで、その生活と幾度もの別れを疑似体験したよう。
不可抗力に生まれてしまった「大きな喪失感との向き合いの過程」としての流浪。疲弊感がつのるほどに癒しが遠ざかるような気もしたけれど、大地に癒され時間に癒され、ゆったりと心が解けていくのを見て、やっとホッとすることができた。そのくらい、この旅の終わりがどうなるのかと、身内かのように心配してしまってた。
ハウスレスとしての生き方、ボヘミアン、遊牧民などいろいろな人がいる。そうありたくてそうある人もいれば、今だけ社会と距離を置きたい人もいる。
その誰もが存在していて良いのが地球という大きなマザーシップで、国や行政や企業はそこに間借りしている。そこで「居場所」を失う人たちが一人でも減ると良いなと思いました。”Earthship”という言葉も印象的でした。
タイトルなし
捕らわれない生き方
おんな寅さん西洋版?
かと思ったら、終劇後どーんと心に波がぶつかって弾けたような錯覚がした。
主演女優の心の動きが、大自然の景観と相まって、人生を生きていくことの寂しさや、辛さまた喜びも感じさせてもらいました。
ノマド=放浪者というそうですが、アメリカの高齢・中流階級には結構キャンパー生活をしながら適当に仕事をみつけながら大自然を感じながら孤高の生活をしている人たちがいる。
アメリカ人のそもそもの開拓者へのあこがれが残っているのかもしれません。
日本より遥かに過酷で広く大きなアメリカ大陸で一人で自動車を生活の場としながら生きてゆく主人公。
なぜ彼女をそうさせたのがこの物語の一番の主題でした。
人生の終盤に来ている僕にはとても堪えた秀作でした。
傑作であることは確かだが個人差のあるテイスト
今年の賞レースで独走をする今作。やっと観れました!
クロエ・ジャオ監督の前作、『ザ・ライダー』がグサッと深く胸に刺さった映画だったのでかなり期待して観たんだけど…
うーん。ちょっと肩透かしかも。
洗練された撮影と抑制されたセリフ。
確実に心に残る傑作であるのだが、個人的には物足りなさを感じた。この物足りなさは一言でいえばラスト。
前作『ザ・ライダー』はまさに完璧な幕切れで、自然と涙が溢れるような素晴らしいラストだった。それに対し今作はとてもアッサリと幕を閉じる。
「あれっ?これで終わり?」というのがエンドロールが始まった時に思い浮かんだ言葉。
「過不足の美しさ」は好きだし結末を観客に委ねる余韻の深い映画も好きだ。
しかし過不足の美しさ、がある訳では無いし、余韻がとりわけ深い訳でも無い。
ノマドのドキュメンタリー的な立ち位置で、人生の一部を切り出す作品であるので、あの幕切れで正解なのかもしれない。
泣かせりゃいい、という訳でも無い事も分かってる。
その上でもやはり物足りなさは感じてしまった。もう一パンチ最後に喰らいたかったな…
多分、定年を経験した人ならば刺さると思うし、アメリカ文化の知識もそれなりにあった方が理解が深まると思うので、そこは本当に個人差がある。
クロエ・ジャオ監督は何故だか知らないけど、ありふれた普通のことをエモーショナルに感じさせることが出来る人で、淡々としながらも、ラストへ向けての追い込んでいく構造をしている。
「主人公の目的を探すまでの物語」という、「始まりの終わりを描くような作品」と個人的には解釈していて、その上でのあの決してハッピーエンドとは思えない、どこか鬱蒼としたラストからは「誰しも心の喪失があって、今日も必死に生きている」というメッセージを感じた。
それにしてもクロエ・ジャオは素晴らしい才能だ。
色濃い照明では無く、自然光を用いた奥行きのあるリアルな映像。 無駄に色調を整えることもなく壮大な自然の美しさが光る。
そしてドキュメンタリー調な撮影により登場人物に体温を与え、説得力とシリアスさが増す。だからフランシス・マクドーマンドは言うまでもなく素晴らしい演技なのだが、リアルな素人でも演技が上手に見える。素人が無表情で棒立ちしている姿を撮るだけで「演技上手だな!」と思ってしまう撮り方。
そのような編集、撮影、照明などが見事に調和し、魂を揺さぶる。
アカデミー賞作品賞としては正直うーん、という感じだし『Mank』の方がウケそうな気もするけど、監督賞は是非とも獲って貰いたい。
まだ感じ取れていない部分は沢山あるだろうし、安易に評価はしにくい。また今度、じっくり観てみたい作品です。
節約マニアすぎると痛い
今、そこにある未来
人の生き方なんて 百万通り
それ以上限りなくあるさ だから 世の中と自分を
比べたりしなくていいのだろう
僕らの生きてく姿が どんな形であろうと
生きる歓び 誰もが唄えるハズだろう
仲井戸麗市 「R &R Tonight」
観ている間、退屈でした。でも、その後、考えちゃうんです。
私の人生、映画化できるほど、面白いか?。
人の生涯って、特別ではないものです。でもね、私の人生、私だけのものだし、誰かと交換できるわけもない。そう思うと、特別ですよね、一人一人の人生が。
あとね、ファーン姐さんですが、思ったことはズバズバ言う。でも、他者の人格は否定しない。自分に強い信念があるのに、よそ様の信念に同様の敬意を払う。そんな生き方、憧れちゃう。筋金入りの、日和見主義者の私ですけど。
もうこの季節を 僕らは何度も迎えたけど
君への想いの深さや広さを
まだうまく伝えられない
これからも 君と共にいられるように
それは希望に満ちた祈り
僕らを待っている明日は どんな色だろう
僕らは越えて行ける 明日がどんな色でも
僕らの描いた夢が 明日の色になるから
坂本サトル 「明日の色」
ガラクタみたいな日々を過ごす私ですが、私にとって大切なもの、家族にとって大切なもの、荷台に全部詰め込んで、明日もエンジンスタートする気になりました。格好悪くても、進まなきゃね。
追記
新聞の解説です。本作は、未来だそうです。「ブレード ランナー」や「バック トゥ ザ フューチャー」とは違います。理由はどうあれ、家族をなくす、家をなくす、住み慣れた街をなくす。誰もが起こり得る。(ビンと来ない方は「遺体」をご覧下さい。)そんな時、私達は、選択を迫られる。
みんなと同じように定住する。みんなと同じように生活する。それが当たり前と思うこと自体、過去が照らす幻想だと気づかされる。
情報をアップデートし、選択をバージョンアップする重要性は、バソコンより、ヒトにあるようです。
ルドヴィコ・エイナウディの奏でるピアノの響きが印象的なリアルで逞しくどこまでも優しい人間ドラマ
大企業USジプサム社の工場とともに栄えたネバダ州の街エンパイアは工場の閉鎖とともに見捨てられやがて郵便番号も無くなったゴーストタウン。その街で暮らしていたファーンは夫の死後、売れるものを売り払って手に入れたキャンピングカーで全米各地を転々として働く“ノマド“となった。低賃金の季節労働とキャンプ場での不便な生活は過酷だったが、小さな街で暮らしていたファーンは行く先々で眼前に広がる雄大な自然と、そこで出会う人達との触れ合う中でかつての慎ましやかな生活では得られなかったものを見出していく。
本作は登場人物に実際のノマド達が実名で大量に出てくるのでフィクションとノンフィクションが綯交ぜとなった少々風変わりな構成。見ようによっては主演のフランシス・マクドーマンドが取材して回るルポルタージュにも見えてしまいます。ノマド達が語る言葉には熟成された教訓がぎっしり詰まっていて、狭苦しい国土で心に余裕を持つこともなく暮らす我々の人生観をグラグラと揺すぶってきます。
カメラで捉えられた広大な自然の美しさとノマド達の凛とした逞しさが印象的な作品ですが、それらを包み込むように流れるピアノの音色に『最強のふたり』を観た時と同じような深い安堵を感じましたが、演奏はどちらもルドヴィコ・エイナウディ。胸に染み渡るような残響がドラマをしっかりと際立たせているので、音響がしっかりした環境で本作を鑑賞するのが吉だと思います。
存在を生きる
アメリカの自然は厳しい。どこまでも厳しく、どこまでも美しい。その厳しさ故に人は家を建てて凌ぐのだが、敢えてそれをせず、どんなに厳しくても自由を重んじる人達がいる。どこまでも自由を求めるそうしたノマド達の姿を1年間掛けて描いている。
主要な登場人物二人以外はすべてそうした生活を実際に送っている人たち。スワンキーやリンダメイ達の姿は、人生の最期まで自由を求める彼等の生活と幸福と厳しさを、彼等の考え方を教えてくれる。
フランシス・マクドーマントは彼等の中に入り込み、役を生きる、というかファーンという存在を生きている…
彼等のそうした生活を前提として、クリスマス時期のみに迎え入れるAmazonや収穫期のみに雇用し彼等をキャンプサイトに住まわせるビーツ農場などは彼等を搾取しているように見えるが、むしろ彼等を尊重しているのかもしれない…
素晴らしい撮影による美しい映像と印象的なフォーキーな劇判がこの作品を唯一無二のものにしている。
アカデミー最有力は伊達じゃない。
崖っぷちでも強く生きる姿に惹かれた。
生きる意味を考えさせられた
ドラマとドキュメンタリーが融合したような、それでいて詩的で不思議な作品でした。
神秘的な風景、圧倒的な自然の姿。
紡ぎ出される人々の暮らし。
企業に勤めていても、突然生活基盤を失うことはあり得る時代に生きている現実を突きつけながら。
遊牧民(ノマド)のようにさすらって日々を懸命に生き、楽しみを見つけようとする、主人公ファーンの前向きな姿を観ながら、生きる意味、働く意味などに思いを馳せました。
映画がきっかけで、自分自身の根源と対話する感覚に陥りました。
また、過度に観客の感情を誘導することなく、自然の素晴らしさと厳しさに寄り添うような、抑え目の音楽が心に染みて。
ほとんどの曲が、自然の音(波や風、焚き火、木々の葉の擦れる音など)をかき消すことなく、重なるように流されていたのが印象的でした。
ノマドランドを見て
ノマド生活に憧れる
私はアメリカの荒涼とした大地を自動車で走るのが好きだし、映画に出てきたバットランド国立公園(とWall Drug)が懐かしかったので、むしろノマド生活に対する憧れを強く感じた。季節ごとに、Amazonの仕分け業務や、RV宿泊施設のトイレ掃除など、季節的な仕事はけっこうあるもので、キャンピング・カーに居住しながら、高齢者が自由に生きていけるならそれでいいじゃないかとすら思った。ネバダ州の企業城下町で夫と暮らしていたが、夫とは死別し、リーマン・ショック後に会社が倒産したことで、町がなくなってしまう。60歳にして主人公のファーンはノマド生活を始める。若い頃の企業城下町への定住生活は映画の中であまり描かれていない。だが、会社が大好きで従業員と家族ぐるみの付き合いしていた夫と一緒に暮らしていた幸せな生活であったことが、映画の中で語られる。それはノマド生活と全然違うように思えるのだが、映画を観ているとその延長線にあるようにすら思える。過去の思い出を懐きながら、自由にアメリカを移動するファーンは、やはりそれまでの人生の延長を生きている。フランシス・マクドーマンドが本当に素晴らしいなと思う。他に登場する人たちも実際のノマド生活者であるらしいし、彼女らが実に魅力的であるから、やはりノマド生活に対する憧憬を感じたのだろう。監督は中国系アメリカ人のクロエ・ジャオ。彼女の撮ったアメリカの大地の景色が本当に壮観であり、主人公の心象をうまく象徴していたと思う。アカデミー作品賞はノマドランド、主演女優賞はフランシス・マクドーマンドかな。
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