ボヤンシー 眼差しの向こうに
劇場公開日 2020年8月7日
解説
カンボジアの貧しい田舎からタイへ出稼ぎにきた少年が体験する過酷な強制労働の体験を、取材に基づく事実にフィクションを織り交ぜて描いた人間ドラマ。オーストラリア人監督ロッド・ラスジェンの長編デビュー作で、全編をクメール語とタイ語で描いた。第69回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門でエキュメニカル審査員賞を受賞。「消えた画 クメール・ルージュの真実」などのドキュメンタリーで知られるカンボジアの映画監督リティ・パンが製作総指揮に参加している。カンボジアの田舎の貧しい家庭で生まれ育った14歳のチャクラは、労働の担い手としか扱われない自分の境遇に納得できず、ひとり家を出る。仕事を斡旋してくれるというブローカーに連れられてタイにやってきたチャクラは、そこで奴隷として漁船に売り払われ、劣悪な環境下での労働を強いられる。陸から遠く離れた海上で助けはなく、船長に歯向かった者や衰弱した者は拷問され、殺され、海に捨てられていく。絶望的な状況下でチャクラの心は摩耗し、人間性は失われ、破壊的な衝動が生まれていく。そして、そんなチャクラは、生きるためにある手段をとる。
2019年製作/93分/G/オーストラリア
原題:Buoyancy
配給:イオンエンターテイメント
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2022年2月24日
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鑑賞方法:VOD
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蟹工船でしょう。何で、団結しないのかなぁ?
気がつくの遅すぎ。もっと早く気付けば、もっと楽に解決出来たのに。まぁ、実話に基づく、フィクションだから、仕方ないけど、小林多喜二の蟹工船のほうが遥かに救われる。こう言ったメッセージ性の強い映画は、救われなければならない。ましてや、平和な故郷を捨てた意義が全く見えてこない。あり得ない決断とあり得ない結末。どんな状況であれ、殺人を重ねた事に代わりはない。他にも解決方法があったろうし、切羽詰まった悲壮感がこの演者にはない。演出が悪いのか?演者が悪いのか?まぁ、どっちも悪いのかも。
大乗仏教と小乗仏教の違いか。団結する日本人の方が良いと初めて思った。
2020年9月19日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館
この映画は世界一豊かな食糧大国オーストラリアの制作陣によるもの。東南アジアの漁業は約20万人の奴隷労働者に支えられている事実を発信する目的に制作されたと思われる。
カンボジアの貧農の次男が主人公。長男ばかりが依怙贔屓される毎日に嫌気がさし、自立の方法を模索するなかで、友達からタイへの密入国を手引きする闇ルートがあることを知らされる。家出してタイで一旗あげて、親たちを見返してやろうと、夜明前にブローカーのワンボックスに乗り込む。地獄の沙汰も金次第で、国境で満足な金が払えないと人身売買ルートに廻され、漁船での過酷な奴隷労働を強いられる。主人公とともに銃をもつ船長たちに一度は抵抗した女房子供持ちの男の最後は下半身と上半身ににロープをかけられ、船を走らせるとロープが締まり、胴体を絞められて殺されるというまるで古代中国の処刑のよう。主人公は船長に船のアクセルを握らされ、処刑執行人にさせられる。もし、歯向かったらお前もこうなるんだぞと、脅しでコントロールするのだ。底引き網にかかる魚は白く変色した小魚やシャコみたいなものばかり。それをドラム缶に詰める。冷凍設備もない木造船。家畜のエサの原料にしかならない。たまに、人間が食べられる大物(サバ、タイなど)が混じっていると、船長に持って行ってご機嫌をとる少年の精一杯のサバイバル術が哀れで仕方ない。船長はいう「大人より素直な子供のほうがいいな。」それを見ているベトナムからの奴隷労働者に恨まれる。奴隷どうしのリンチもある。底引き網には人間の骨も引っ掛かる。拳銃を持っているのは船長だけ。船長の仲間は二人。
終始、主役の少年の眼差しがよかった。
2020年9月10日
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鑑賞方法:映画館
本作最後のクレジットで伝えられる現実に驚愕し、
この映画で描かれた世界は現実であり、今も多くの
人間が辛い状況なんだろうと思います。
本作で描かれる雇われる側の人間の生活は
想像を絶します。えぐいです。
人間がどんどん壊れていきます・・・。
本当なのか?と・・・しかし、きっと本当。
でも、それで回っている世界があるということが
悲しくて切ない。
せめてもの救いは主人公の人間としての強さ。
彼のこれからの明るい未来を願わずにいられない。
それは同じ境遇の多くの人たちに対しても同じく。
2020年8月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
映画の最初からラストに向かって、どんどんと青年が成長し、顔つきが変わっていく演出は見事だ。
撮影期間を必要以上に永くとったのだろうか?
いかにも”居そうな船長”の存在感と演技は人間味があり、実にうまい。
それ以外の演者の演技も申し分なく、監督の演出の素晴らしさが光っていた。
バストショットが多い撮影もTVドキュメンタリー感がでており、迫力と臨場感があった。
ただ、タイ外洋の設定に沿った”抜けるような海原”のカットが幾つか欲しかった。
これはカメラマンが気を利かせて、保険的に撮っておくべきだろう。
また、ストーリー的にもリアルさの意味でも、
船長たちが少年に、もう少し操舵を教えた方が良かったと思う。
女の子は売春婦へ、男の子は奴隷となって、ブローカー達に転売され続け、命の重みはない。
半世紀以上前なら判るが、2000年を過ぎた今日ても、
このような極悪環境で生きている人が、いる事がとてもショックだ。
東南アジア全域にわたる貧富の差という「社会構造」が悪いのだが、
1番悪いのは教育を受けたいない貧困層は自分の手で、貧困さを解決しようとせず
産まれた環境に流されることを”良し”としている事なのだろう。
こんな事を何代繰り返していても、何も変わらない。
しかしそれを自力だけで打破しようとした主人公の行動は建設的で素晴らしい。
また働かされる場所でも、
適応能力があり、辛抱強く、意志の強さも備え”生きる力”は十分だ。
少年が家に帰った後をもう少し、観たい気もするが、
「あと、もうちょっと」のところで終える脚本はすばらしく
最後に少年の流した涙は”何が正解”か、僕たちに答えを教えてくれたような気がした。
現代版「青い鳥」が僕らに教えてくれた事は
運命に逆らわず、不満をもたず、1日1日を精いっぱい生きることが本当の幸せなのだと
そして明日
少年はまた殺虫剤を撒くだろう。
この映画を観たら、昔の映画だが、
本映画とは違った「太陽がいっぱい」を観て、主人公を比べたくなった。
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