「自分の拠り所というものが無かった天才ピアニスト」海の上のピアニスト イタリア完全版 ゆり。さんの映画レビュー(感想・評価)
自分の拠り所というものが無かった天才ピアニスト
多分、これは観る度に印象が変わる映画の一つです。
1900年の1月にアメリカ行きの豪華客船の上で拾われ、”1900”と名付けられた男と深く関わったという、トランペット吹きのマックスの告白。
”1900”は天才的なピアノの才能が評判となり、富と名声を手に入れることが可能なのに、戸籍が無いまま海の上で一生を過ごし、朽ち果てた船とともに人生を終えます。
短いインターナショナル版を観た時、色々疑問が湧きました。
なぜ戸籍が無いままだったのか。
ジャズ対決をした時、なぜ最初は勝つ気が無かったのか。
強く心惹かれた少女をなぜ追わなかったのか。
やはり船を降りようと決心したのに、なぜ突然止めたのか。
戦争が始まって客船は病院船となってしまっても、そして廃船となっても、留まったのはなぜか。
今の私が受けた印象は、”1900”には執着というものが無かった、という事です。「なぜ?なぜ?なぜ?…陸の人間は理由を求めすぎる」と彼は言いました。
ジャズ対決でも、相手の実力をすぐに見抜いたのに、2曲目までは相手を勝たせてもいいと思った。
絵の額が落ちて、船を降りる気になったのに、タラップの途中でふと未来を想像し、先が見えなかったからと下船を止めた。マックスには「終わりがない場所では音楽を奏でられない」と語りましたが、投げた帽子が海に落ちずに陸に届いていたら上陸したのではなかったか、と思いました。
”1900”は次々と美しい旋律を作り出し、”神の領域”の演奏技術もありましたが、たまたま音楽の才能を持って生まれただけで、音楽に執着はそれほど無かったのかもしれないと思えたからです。そしてそれは、船上で生まれ、十分な教育も受けられなかった彼には、自身が拠り所とするものが何もなかったからではないかと思うのです。
でも、もっと後に観たらまた違う感想になるかもしれないです。
不思議な味わいのある作品ですが、見どころは音楽シーンで、ジャズ好きにはたまらないと思います。
ゆり。様
レビューに感銘いたしました。
執着が無く拠り所とする知識も無い。
観る度に感想が変わる。
またぼちぼちと噛みしめて拝読させていただきます。
ジャーン❗️新情報❗️
先は長いですが、
本作が『午前十時の映画祭』に
来年3月から2週間かかるそうです。
映画館で観られるとは❗️
一度ご自身でも確かめていただければと
思います。返信は結構ですよ🐱