「そういう時代の終わり。」ヤクザと家族 The Family はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
そういう時代の終わり。
3つの時間軸の構成が見事だった。ヤクザが大手を振って裏社会を闊歩した昭和から平成。そして令和へ。ヤクザを取り巻く環境もすっかり変わり"反社"となった彼らは徹底的に社会の行き止まりへと追いやられてゆく。
綾野剛が世間知らずの荒くれ者から柴咲組を支えるヤクザ者、そして14年の服役後落ちぶれた社会の爪弾き者という20年間を巧みに演じ分けています。
いつどこで躓いたのか。いつどこで間違えたのか。なぜヤクザだったのか。なるべくしてなったのか。恩と義理、裏切りと妬み、そして人情。まるで絵に描いたようなヤクザ像山本のまるで救いのない人生。その痛みと哀しみ。
でも誰であっても簡単に弾かれたちまち行き場を失う現代。行ったことのない所に住む会ったこともない人から突然攻撃されるような容赦ないこの時代。ヤクザでなくても反社でなくても途方もなく生き辛い。一度そういうレッテルを貼られた人への社会の風当たりはより一層厳しい。細野が言う。5年ループ。5年で済むのだろうか。
彼らにとって生き辛い世の中が普通の人にとっては生きやすい世の中とは限らないというジレンマ。そんな中、惨めに堕ちて死に場所を探した山本の救われない最期に私は納得した。山本を救う理由なんてない。社会がそう言っている。彼自身がそういう生き方を選んだのだから。
キャスティングはさすが。もうみんな強面。そして舘ひろしが渋すぎてしびれました。磯村勇斗も好演!でも今作は市原隼人でしょう!なんか演技力の割りにパッとしなくてなんなら未だにリリイシュシュの衝撃デビューのイメージすらまとわりついてたんですけどこれはハマってました!
一番もがき苦しみ救いを求めて本当の家族を欲したのは他でもない細野だったな。