劇場公開日 2021年1月29日

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「行くとこあんのか?ケン坊。」ヤクザと家族 The Family 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0行くとこあんのか?ケン坊。

2021年2月2日
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鑑賞方法:映画館

こちらの期待値にしっかり応えてくれた映画。役者が皆、成りきってて。舘ひろしなんて、こうゆう役しかもうできないだろうけど、その役が板についていて美しいとさえ思えた。役にのめり込んじゃった感のある綾野剛は、このあと役がちゃんと抜けるのか?って心配さえしてしまった。

ある知人が、「なんでヤクザは義理だ人情だっていうか知ってるかい?彼らは自分たちにそれが欠けているのを知ってるからこそ、声高に求めるんだよ」と言っていた。そういう意味では、ヤクザには心休まる"家族"がないのだろう。親父や兄貴や舎弟を「家族=身内」として大事することは、廻り回って自分を守ることなんだよなあ。

昨今でいえば、ヤクザ社会のキリキリした空気なら「孤狼の血」のほうが上を行ってた気はする。だけど今どきのヤクザは、暴対法この方、めっきり世知辛くなってしまってて、その世相を見事に描き込んだ今作は、その盛衰と悲哀を映しきったヤクザ映画だった。
ラスト、溜めた末に言う台詞に涙。その言葉こそ、痛みを知る者がかける言葉だよ。

別感想として。
たぶん、NHK「カーネーション」放送当時、NHKらしからぬ叶わぬ恋のストーリーに驚き、胸を焦がした身としては、綾野剛と尾野真千子の二人が同じスクリーンに映っているというだけで、ついつい目が潤んでしまったことを付け加えておかないとね。

栗太郎