おろかもの

劇場公開日:

おろかもの

解説

若手監督の登竜門として知られる田辺・弁慶映画祭の2019年(第13回)のコンペティション部門でグランプリを受賞した長編作品。同映画祭ではグランプリのほか、主演の笠松七海と村田唯の俳優賞や観客賞など5冠に輝き、第16回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の長編コンペティション部門でも観客賞を受賞するなど、多数の映画祭で高い評価を得た。結婚を目前に控えた兄・健治の浮気現場を目撃した高校生の洋子は、好奇心に突き動かされて浮気相手の女性・美沙と対峙するが、美沙の独特の柔らかさや強さと脆さにひかれていく。そして衝動的に、洋子は美沙にある共犯関係を持ち掛ける。田辺・弁慶映画祭の受賞作品を特集する「田辺・弁慶映画祭セレクション2020」(20年11月20日~12月10日、東京・テアトル新宿)で上映。

2019年製作/96分/日本
配給:ムービー・アクト・プロジェクト、Cinemago
劇場公開日:2020年11月20日

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(C)2019「おろかもの」制作チーム

映画レビュー

4.0登場人物の掘り下げ方、関係性の展開が秀逸

2020年11月22日
PCから投稿

両親の死以来、支えあって生きてきた兄と妹。そんな兄が結婚することになるものの、どうやら兄には他に浮気相手がいるようだ。本作はまさにその現場写真を妹が望遠レンズでカシャリと激写する場面で幕をあけるが、探偵のように兄を尾行する妹の関心は、いつしか相手側の女性へと向けられていく————こうして文字にするとどこか薄暗さや閉塞感すら感じるかもしれないが、本編から受けるイメージはむしろ真逆だ。素晴らしい人間描写。巧みな関係性の展開。決して押し付けがましくもなく、軽妙さと誠実さとの合間にあるタッチで観客を物語の内部へグッと引き込んでやまない。「結婚」というまさに家族のかたちの変容する過程に着目し、あえて妹のモヤモヤした視座から物事を見つめることで、刻一刻と深度を増す彼女の気づきと発見と洞察が一人一人の人物を実に魅力的に輝かせていくのだ。各々の感情のせめぎ合いをじっくり長回しで収めた場面も見応えがあった。

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牛津厚信

4.0みんな幸せになってほしい

2024年10月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

採点3.8
弁セレだったんですね、これは面白い。
結婚を控えた兄の浮気相手と気がついたら友達の関係になる、そんな奇妙な関係のなかはじまる物語。
序盤はインディー感溢れる感じでしたが、先に進むとすごい引き込まれました。
登場人物の掘り下げも良くて面白かった。
何というか、みんな幸せになってほしい。そんな気持ちなれる作品でした。

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白波

5.0素晴らしい心理描写

2024年8月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

グランプリを受賞するだけに価値のある作品
女性たちの心理描写の実態をとてもよく表現している。
この作品の至る所に出てくるのが「どうしたいの?」という暗黙の質問
その「どうしたいの?」か、自分でも言葉にできないモヤモヤ感をうまく表現している。
物語という性質上、主人公が行動する「動機」が明確でなければならないという暗黙のルールがある。
しかし、実際人間とはその動機に対する抵抗や穏便に済ませたいがための取り繕い、または事なかれ主義的な行動になりがちだ。
そして基本的に多いのが、それを知ったからと言って、どうしていいかわからないものだということだろう。
この作品は登場人物たちの迷いや葛藤や言葉にできない感情に焦点を当て、「どうしたいの?」について描いている稀有な作品だ。
タカギケンジ 主人公ヨウコの兄
浮気癖 結婚を間近に控えながら続けている浮気
兄を尾行するヨウコ
兄の幸せ 新しい家族への脅威 浮気相手ミサへの断罪
ヨウコの頭の中には「言葉にできない」様々なネガティブ要素があったのだろう。
「これ以上好き勝手にさせない」
そんなことを思いつつミサに接触する。
「どうして兄と浮気しているんですか?」
「好きだから 愛しているから」
言い訳するのかと思ったらストレートに答えられ、逆に言葉を失う。
自宅に来て婚約者カホのエプロンを着けるミサの心境を考えるようになるヨウコ。
ヨウコはミサの心理状態を知りたいと思ったのだろう。
大人の女性への興味
特に女子高のヨウコにとって、ミサの心理はとてもミステリアスで興味深かったのだろう。
ミサの気持ちはごく自然で当たり前だと共感する。
次第に打ち解けだすと、ヨウコの中にミサに対する応援の気持ちが芽生えた。
「結婚式、止めてみます?」
ここにも「どうしたいの?」が隠れている。
ミサも自分自身がどうしたいのかなどはっきりわからない。
ケンジが結婚するのを知りながら会い続けている自分自身の気持ちがはっきりしない。
心のどこかでケンジが結婚するとは信じていないのかもしれない。
ヨウコにそう言われたことで、ミサの中に新しい選択肢ができた。
さて、
ヨウコはまだ打ち解けていないカホよりも、ミサを選択するという興味が芽生える。
しかし、ミサと一緒に脅迫文を送りつけても、カホは動じない。
ミサはカホの仕事場に押し掛けたが、やはりカホは動じなかった。
ヨウコの部屋のPC画面 ケンジとミサの密会写真
カホはそれを見てしまう。
「浮気には気づいていたけど、何もしない ケンジだって我慢してきたことがある」というカホに、ヨウコはまた新しい大人の女性の考え方を知る。
脅迫文や店にミサが来ても動じなかったのは、「ケンジが本当に欲しいものを彼女は持っていないと思う」から。
カホの確信的な言葉 頭をよぎるカホとミサの料理の違い
でも、「ミサは悪い人じゃない」
最終的に「ケンジが全部悪い」で一致する。
「憎い時期もあった」 カホの心の変遷
「家族になりたい」 カホの明確なビジョン
カホには「どうしたいのか?」が明確になっているのだ。
この「どうしたいのか?」があやふやなミサやヨウコは、カホの敵ではない。
ヨウコによってどうしたいのか次第にはっきりしてくるミサは「結婚して」と懇願するが、「ゴメン。これで終わりにしよう」と言われてしまう。
しかし、
墓参りでヨウコが兄に対し、「私、兄ちゃんのこと嫌いになりたくないんだよ」と言ってケンジの胸を思いっきり殴るシーンに心が動かされた。
ヨウコの本気 本音 「おろかもの」の兄に対する怒り
このシーンだけでタイトルを表現している。
さて、
ミサは自分の気持ちをようやく理解したとき、ヨウコから「やっぱり結婚式を邪魔するのはやめましょう」と言われる。
「そうやってあんたたちだけで仲良く家族ごっこするつもり?」
「家族ごっこ? そっちこそ恋愛ごっこじゃん」
リベンジポルノ 結婚式を邪魔するためのツール
一人でそれを見るミサ
涙の意味は、あのころが一番幸せだったのと、今はもうそんなものはなくなったと気づいたから。
ヨウコは友人から「どうしたいの?」と尋ねられるが、答えられない。
ミサからのメールで「結婚式には顔を出します」にもどうしていいのかわからない。
そして結婚式に真っ赤なドレスで乗り込んできたミサ
みなの注目を浴びる。
狼狽えるケンジ
しかし、カホはミサの前に立ちふさがった。
その動じない強い意志に圧倒されて動けなくなるミサ
それでも意を決して一歩踏み出すと、ヨウコが手を差し伸べた。
そしてミサを連れ外へと行く。
ドアの前で二人を見るシーンは印象的だ。
笑うヨウコと無表情のミサ
ヨウコは「おろかもの」の兄に多少の罰を与えられた気持ちがあったのだろう。
動じないカホには効果はないが、動揺する兄に対しては十分だった。
外に飛び出して走っているときもミサの表情は硬い。
そして「おなかが減った」という言葉が出た時、ようやく落ち着きを取り戻せたのだろう。
「中華」
この作品で初めて登場したジャンル
それは新しさを意味するのだろう。
今までとは全く違った気分
ヨウコも自分自身どうしていいのかわからないままミサを外に連れ出した。
でも妹が兄の結婚式をボイコットしたことがどこか爽やかな気分になったのだろう。
結局どうしていいかわからないままだったが、ミサも吹っ切れた様子で、争いの種をまいたヨウコ自身もホッとしたのだろう。
すべてが微妙だが、落ち着ける場所にすべてが落ち着いた感覚があった。
この女性たちの微妙な関係と微妙な心理描写が実によく描かれている。
その1点に焦点を絞り込んだ作品
とても素晴らしかった。

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R41

4.0共犯

2022年10月11日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

主人公は高校2年生の女子(笠松七海)、小さい頃、両親をなくし兄との二人暮らしを続けてきた。
兄がいよいよ結婚に踏みきる事になるが、たまたま浮気現場を見てしまう。
主人公と兄嫁と浮気相手の関係がとても興味深い。
みんな、幸せになって欲しい。

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いやよセブン