ハニーランド 永遠の谷

劇場公開日:

ハニーランド 永遠の谷

解説

北マケドニアに暮らす自然養蜂家の女性を追ったドキュメンタリー。第92回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞とあわせて国際映画賞(旧・外国語映画賞)にもノミネートされ、長編ドキュメンタリー賞と国際映画賞(外国語映画賞)に同時にノミネートされた初の作品となった。北マケドニアの首都スコピエから20キロほど離れた、電気も水道もない谷で、目が不自由で寝たきりの老母と暮らす自然養蜂家の女性は、持続可能な生活と自然を守るため「半分は自分に、半分は蜂に」を信条に、養蜂を続けていた。そんな彼女が暮らす谷に突然やってきた見知らぬ家族や子どもたちとの交流、病気や自然破壊など、3年の歳月をかけた撮影を通して、人間と自然の存在の美しさや希望を描き出していく。

2019年製作/86分/北マケドニア
原題:Honeyland
配給:オンリー・ハーツ
劇場公開日:2020年6月26日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第92回 アカデミー賞(2020年)

ノミネート

長編ドキュメンタリー賞  
国際長編映画賞  
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(C)2019, Trice Films & Apollo Media

映画レビュー

4.5美しい映像と徹底した客観が意図するもの

2020年11月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

約1世紀におよぶアカデミー賞の歴史上初めてとなる国際長編映画賞(外国語映画賞)と長編ドキュメンタリー映画賞ダブルノミネートの偉業を成し遂げたのも頷ける。

まるで絵画を眺めているかのような息を呑むほどに美しい映像で、想像を絶するほどに厳しく残酷な現実が切り取られていく。カメラの存在をまるで意識していない被写体たちの自然な姿を見ていると、これがドキュメンタリーなのかフィクションなのか、わからなくなってくるのだ。

被写体たちがカメラを意識しないのは、彼らと決して交わろうとしない撮影者の冷徹なまでの客観が生み出した産物だろう。また、ときに美しすぎるとすら感じさせる映像は、現実の過酷さをオブラートするリスクと、逆に際立たせる効能を併せ持っている。

カメラの後ろに立つ人間たちが選んだこのスタンスは、実は鑑賞者である我々の視点を再現したものではないか。“自然と調和して生きる人々”という耳触りのいいフレーズと絵画のごとき映像が重なってできた表面上の美、そして被写体への徹底した客観が意図するのは、過酷な現実を生きる人々を対岸から眺め、それを無関心に消費していく我々への厳しい批評なのではないかと思える。

そう考えると、何とも周到で恐ろしい映画だ。

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オスカーノユクエ

4.0オスカーで「ビッグ・リトル・ファーム」が敗れたネイチャー案件

2020年7月2日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

単純

オスカー案件。外国語映画賞と長編ドキュメンタリー賞の2部門ノミネート。途中で、「本当にドキュメンタリーなの」って思いました。映画の中で起こる事件が、「これ、脚本あるでしょ?」「この人たち、演技してるでしょ?」ってぐらいお見事で。そのほかにも、色んな感情を覚えます。「蜂蜜あんなに食べて、虫歯にならないの?」とか「母娘って、コミュニケーション難しいのね」とか。しかしもっとも大きな感想は、個人的に押していた「ビッグ・リトル・ファーム」がなんでオスカーノミネートを逸したのかが分かったということ。「ハニーランド」に負けたんですね。ネイチャー枠で。両方見て「ハニーランド」>「ビッグ・リトル・ファーム」だって分かっちゃった。悔しいけど、負けました。

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駒井尚文|映画.com編集長

4.0ドキュメンタリーとかどうでもよくなる過酷で圧巻な美

2020年6月29日
PCから投稿

切り立った断崖で、天然の蜂の巣に手を伸ばす冒頭の映像で、時代を超越したとてつもない映像を観ていると自覚させられる。自然と共生する女性のドキュメンタリー、と紹介するのは容易いが、彼女の人生は綺麗事にできるようなものではない。当人が嘆き悲しんでいるわけではないが、逞しさと諦念は背中合わせで、刻みつけられた孤独を羨ましいと言い切れる人は稀ではないか。

そして彼女の新たな隣人となる一家は、明らかに彼女の生活や価値観を脅かす外界からの侵入者として機能している。機能している、という意味では、この家族の役者っぷりがみごとで、ドキュメンタリーなのか劇映画なのか限りなく曖昧にしているが、そもそもドキュメンタリーは作り手の視点から描かれるものなので、むしろ劇映画であっても映画のインパクトが減るわけではまったくない。

どこかにある秘境の、自然と人間の切実な営みに悄然とする。それだけでも料金以上の価値がある。

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村山章

5.0北マケドニアの養蜂家が我々に教えてくれること

2020年6月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

興奮

北マケドニアの荒廃した土地で、養蜂家という職業が成り立っていることに、まず、驚く。さらに、ヨーロッパ最後の自然養蜂家として知られる女性の慎ましい生活に衝撃を受ける。年老いた母親と2人で暮らす家の質素さもさることなから、採った蜜の半分は自分に、残り半分は蜂に返すという、自然の摂理に則った価値観に、思わず心を打たれるのだ。彼女の周辺に現れては消えていく人々との交流と、そこから見えてくる醜く、移ろいやすい社会と比較すると、多くの人々が忘れ去った自然に根ざした生き方の尊さを思い知らされる。何よりも、この凝縮されたエピソードの一つ一つが、3年の歳月と、400時間以上の撮影から拾い集められたものであることに感銘を受ける。改めて、優れたドキュメンタリー映画とは、かくも膨大な労力を費やし、その果てに達成されるものなのだ。

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清藤秀人
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