劇場公開日 2021年1月22日

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「想像しながら鑑賞するのが楽しい」さんかく窓の外側は夜 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5想像しながら鑑賞するのが楽しい

2021年1月24日
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鑑賞方法:映画館

 終映後に舞台挨拶中継があった。登壇したのは主演の岡田将生、志尊淳、平手友梨奈と森ガキ侑大監督の4人だ。SNSで募った質問に答える形式で、作品の本質に迫るような鋭い質問はなかったが、4人それぞれの人となりが少し知れてよかった。映画では消極的なキャラクターを演じた志尊淳が積極的に場を盛り上げようとしたのには少し驚いた。岡田将生はスマートに答えをこなす。平手友梨奈は思っていたより普通で、森ガキ侑大監督は正直に一生懸命に話す。
 収穫はボツになったシーンの話で、志尊淳と岡田将生がワイヤーに吊られるシーンを1日がかりで撮影したが、どうにも違和感があってボツにしたとのこと。なるほど本作品で空中を飛んで移動するというシーンは確かに変だ。ボツは正解だと思うが、ディレクターズカットでお待ちしておりますと言った司会者の言葉が実現されるのも、ひとつの楽しみではある。

 予告編の印象とは違っていたが、結構面白かった。ホラーでもなくアクションでもなく、謎が続くという点でやっぱりミステリーのジャンルになるのかなと思う。となるとネタバレ厳禁だから迂闊なことは書けない。相沢友子さんの脚本がとてもよく出来ていて、無駄な言葉がないから想像力が膨らむ。次はどうなるのか、あれこれ想像しながら鑑賞するのは楽しい。岡田将生の冷川と志尊淳の三角の関係性が変化していくのもリアルである。平手友梨奈の非浦英莉可の立ち位置もダイナミズムを生じさせる。滝藤賢一の半澤刑事は、多分この人の存在がないと物語に収拾がつかなかったと思う。相変わらず上手な俳優さんである。
 三角が見る幽霊が持つ怨念のストーリーが殆ど紹介されなかったのは、いちいち紹介すると時間が果てしなく伸びるのと、幽霊が主役のドキュメンタリー集みたいになってしまうからだろう。本作品では兎に角、幽霊が見えることで社会的な存在としての自己との折り合いがつかないことに悩む三角と、自意識が目覚める時期を過ごさなかったことで自分の能力に何の悩みも持たない冷川の、それぞれが抱える不均衡が物語を力強く推し進める。
 伏線はほぼ回収されて気持ちよく終わるかと思っていると、最後に不穏なシーンがある。まだ終わっていないのかと思わせるのはホラー映画でよく使われるテクニックで、続編があるかどうかは不明だ。
 和久井映見が演じた三角の母親にもっと存在意義があればよかった。三角の能力がどこから来たのか、母親が知っているのかと思った人も多かっただろう。それにしても北川景子の使い方はとても贅沢で、全編を思い返すと何故か彼女のシーンが一番最初に出てくる。存在感のある女優になったものだ。

耶馬英彦