行き止まりの世界に生まれてのレビュー・感想・評価
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《暴力》のある家庭に生まれて。そうした生い立ち、家庭環境がいかに影...
《暴力》のある家庭に生まれて。そうした生い立ち、家庭環境がいかに影響を与え、暗い影を落とすかについて。誰だって泣く。白人←アジア系→黒人。どうにもこうにもならない最悪な人生、どうしようもない葛藤、山積みな問題。そんな時でもいつだってスケートボードと仲間はそばにいた、スケートボードさえできればよかった、それをしているときだけは。継親への恐怖の記憶、親への複雑な気持ち。貧困層と暴力が多い街、ここから出ていけないのか。事実は小説より奇なりと言うけど、本当にすごくうまく切り取り纏められていて、また当人たちの葛藤しながらもしっかりと考えられた末の言葉選びと魂の叫びに激しく揺り動かされた。10年に渡る嘘偽りのない真実の物語、歳月が積み上げる感動、エモーショナルなカタルシス。合間合間のビルボードの使い方が効果的、音楽も良い。破壊と創造、長年にわたる苦しみと微かな希望。最後は全身から鳥肌が立つ思いだった。本当に素晴らしく感動。人種差別や子育て、親になるということ、今のアメリカをよく映し出している傑作ドキュメンタリー。彼らの人生はまだまだ(これから本当の意味で)続いていくけど、カット。
勝手に関連作『ロード・オブ・ドッグタウン』『ブラインドスポッティング』
今年映画館鑑賞48本目たぶん
Bing Liu監督のおそるべき才能
本ドキュメンタリーの主役3人のひとりである、Bing Liu監督の驚愕のデビュー作。
出だしの印象は、「ニイちゃんたちがスケボで騒ぐ&はしゃぐだけのポップなプライベート記録映画かなあ」と思ったが、とんだ間違いだった。
恐るべくクオリティの高さ、構成の素晴らしさ。日本の「プロ」を自認するドキュメンタリー監督の方々にもぜひ観てもらいたい。
この作品にはいくつかの交差するテーマが内在する。
ひとつは日常の閉塞感から解放され、3人を結びつけるスケートボードの存在。
原題の「Minding the Gap」は「段差に気をつける」という意味。
ヒトは10代の息苦しさから逃れるための「drug」を求めるもの。彼らにとってはそれがスケートボードだったということ。
ふたつめは米国が抱える閉塞感と分断の社会のありのままの姿。イリノイ州のロックフォードは、中西部の15万人程度の小都市。主要産業は自動車関連で、ご多分に漏れず衰退する工業都市のひとつで公共サービスも治安も劣悪。その影響はロックフォードに住む多くの市民の生活に大きく影響を及ぼす。NYやSFのような華やかな都市ではなく、等身大の米国の都市とその生活を生々しく描いている。ニュースメディアのようにフォーカスする対象を勤労者層に求めるのではなく、「無産」の若年層の視点で描いているのが斬新かつ新鮮。
三つめは、深刻な家庭内暴力(DV)だ。
ロックフォードは米国の危険な都市ランキングで8位と都市犯罪も多いが、本作では父親からのDV、夫からのDVがを貫したテーマにおいている。親世代の低所得収入や失業が家庭内暴力に何らかのかたちで影響を及ぼしているといえるし、若者が今の生活に将来性を感じられず、かといって今の生活から容易に抜け出せない閉塞感を感じている。そのDVを受けてきた若者世代が自分たちの家庭でDVを繰り返してしまう負の連鎖。
仲間との生活をカメラを通して、内なる自分と「対話」し、ディストピアな世界から目を逸らさず、悲観的になり過ぎることなく、閉塞した世界から抜け出すきっかけのヒント(感じるヒントは人それぞれ)を淡々と描いている。
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