フィルムに宿る魂
劇場公開日 2020年3月13日
解説
7人組メンズアイドル「B2takes!!(ビートゥーテイクス)」の飯山裕太が主演を務め、「B2takes!!」の楽曲「証 Akashi」をモチーフに描いた恋愛青春映画。東京でカメラマンをしている工藤沙希は、高校時代に所属していた写真部の部室が取り壊しになることを受け、部室を整理するために地元に帰ってくる。写真部の同級生たちが集い、10年前の記憶がよみがえるが、そこにいない同級生の本田日向について、誰も触れようとしなかった。高校時代の日向は、フィルムでの撮影をこよなく愛し、多重露光の撮影方法にみせられて、沙希と2人で多重露光の撮影へ繰り出す日々を送っていた。そんな中で日向と沙希の距離は縮まっていったが……。日向役を飯山が務め、「手裏剣戦隊ニンニンジャー」の矢野優花が沙希を演じた。そのほか元「AKB48」の大和田南那らが共演。
2020年製作/84分/G/日本
配給:キャンター
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2020年3月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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まず、序盤のタクシーの中。
沙希を演じた矢野さんの横顔が美しいんです。だけど、それはとても重たい表情なの。
これが、結構印象に残るんですよね。
それで、いきなりなんですけど、レビューをまとめちゃいます。
私、おっさんなので若い時は、フィルムのカメラだったんです。
ちょっと、フィルムとデジタルの違いを考えてみました。
枚数が限られている、撮り直しができない、その場で出来がわからない。
なので、フィルムの方が一枚に重みが有る。
写真を撮る行為が時間を切り取る行為なら、フィルムの方が瞬間の価値が高い気がするんです。
それで思ったんです、人生ってフィルムの様な物なのかなと。
デジタルの様に削除できない。もっとこうしていればと思っても、次に進むしかない。
だけれども、だからこそ、大切に撮られた時間はいつまでも残ると思うんです。
沙希の人生というフィルムに、日向と過ごした大切な時間は、いつまでも美しく残ると思うの。
ここからは、この映画の好きな所を。
まず、役者さん達が良いと思ったんです。
日向のふわっとした感じが良いの。飯山さんの演技力なのか、素でこういうタイプなのかは分からないけど。
ふわっとしつつ繊細な所を覗かせる、皆から慕われるのが納得できるんです。
そして、矢野さん。
今のパートでは、殆どが重たい表情。高校時代の回想シーンでは、日向と触れ合いだんだんと笑顔が増えていく感じが良いんです。
そんな二人の高校時代、初々しくてもどかしくて、思わずハッピーエンドを願っちゃいましたよ。
それから、脇の三人も良いんです。
人物像が深く掘り下げられているわけでもないんだけど、それぞれに魅力的に映るんです。
彼等が魅力的に映れば映るほど、時間に取り残された感じの沙希が痛々しくて。
そして、ストーリー。
多重露光を使って、皆で山登りをやり遂げたのが、良かったな。
あの時の沙希の表情も良かったな。
それから、その少し前にもう一度、タクシーのシーンが有るんです。
その時に、今度は最初と逆の右側から沙希を撮るの。
なので、スクリーン上でのタクシーの進行方向も、逆の左から右へになるんです。
これ、沙希が前に進み出した事を抽象的に表現したんだと思うんです。勘違いかもしれないけど。
そしてそして、この映画で良いと思ったのが、エンドロール。
主題歌が合うんです。
と、思ったら逆で、曲のイメージで映画を作ったんですね。
それで、何より良かったのが最後からの写真三枚。
一番最後は、みんなで撮った多重露光の写真。
その前二枚が、沙希の写真と日向の写真。
これが、とても美しいの。
これはきっと撮った人が、被写体を好きだからこそ撮れた写真だと思えるの。
伝えられなかった気持ちのこもった写真だと、思えたんですよね。
この映画、私とても好き。
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