地獄の黙示録 ファイナル・カットのレビュー・感想・評価
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映像美、音響美、映画の哲学と思想
数年前に池袋グランドシネマのIMAXレーザーGTテクノロジー、26×19メートルの壁というかビルの塊のような大きさのスクリーンで観て以来。
新文芸坐の音響でまた観れて、うれしい。
本バージョンは、コッポラがIMAX上映用に編集し直し、4Kで、音響もかなりリマスターされている。
スクリーン越しにナパーム弾のガソリンの臭いまで漂う、くらいのリアル撮影ならではの生々しさがある。
公開当時の日本では、この作品の音響を実現できる映画館が無く、唯一日比谷の有楽座?だったっけかな、そこでしかヘリコプターの廻旋音を出せないとかで、そういう話題性もあった、らしい。
YouTubeで町山智浩、地獄の黙示録で検索するとそういう裏話が出てくる。
マーティン・シーンが実質的な主役だが、お世辞にも演技があまり上手くはない。
しかしそれが今となっては作品の緊張感というか風格?を保っていることに貢献している、と思う。
デニーロとかホアキン・フェニックスのような性格俳優的な、観る側の役に対する没入感が希薄なため、目立たなくて良い。
また当時、リアルタイムでゴッドファーザーも観ている人にとっては、マーロン・ブランドは何か神格化されるぐらいの存在だったらしい。
カリスマの権化がカーツ大佐と被ることもあり、マーティン・シーンの20分の1にも満たない出演時間、ほぼ演技もしておらず顔のアップの一部しか写っていないにもかかわらず、主役としてエンドロール筆頭で出てくる(ゴリ押しらしいが)。
このIMAXバージョンは、他の方も書かれているがかなり見やすいというか、初見の方にも見やすく編集されていて、オリジナル版やマニア向けとも言える完全なんとか版よりもかなりスッキリした印象を受ける。
音響美と映像美が融合しシンクロし、映画の哲学と思想まで包在した奇跡の作品。
コッポラの執念。
興奮して文章が支離滅裂になっているが、自分としては地獄の黙示録が史上ベストワンだと思っている。
20240106 新文芸坐
狂気の今と未来の狂気
わたし今アラ還を迎えた。
この作品、過去に何度か観ては途中で眠ったりぼんやりと鑑賞。
この年になって、ようやく。
この作品が描く狂気が感じることができた。
サーフィンしたいからナパーム弾で村を焼き討ち。
一般人を無差別殺戮し、生き残りを殺害。
米国はアジア人をナメているのに勝てないジレンマ。
ベトナムより機械化が進んでいた日本に勝ったんだからという奢り
まあ、日本は機械化を自滅したが。
ヨーロッパの敗戦国ドイツのワグナーの音楽を流しながら爆撃する。
我らが世界一だという奢り。
それがまともな世界からあちら側の狂気へ向かっている。
後半、大佐の作り上げた世界。
そこまではわたしの心が追いつかなかった。
戦争による狂気
マーティンシーン扮するウイラード大尉は、マーロンブランド扮する常軌を逸したウォルターEカーツ大佐の暗殺を秘密裡に行う様命じられた。
しかしベトコンとの交戦時にサーフィンをやろうなんて隊長命令もあったなんてね。はたまた隊長のボードを盗むやつもいた。
タイトルからしてもっと戦場物と思っていたがイメージとは異なっていたな。戦争による狂気を示したかったのかな。長かったよ。
改めて見直したい
サイゴンの将校も現場の指揮官も兵隊も、誰も意味を見いだせない戦争。上から下に、強者から弱者に自分の都合が押し付けられていく。
錯乱した兵隊たちの戦場をテンポの良い映像、音楽で一気にみせる前半。他の映画と全く異なる凄い映画だと圧倒される。
川の上流に進むにつれ、精神的に追い詰められ麻薬で正気を失っていく船のクルーたち。同時に主人公の内省的な話が増え、暗殺対象との問答などは理解の範囲を超えてしまった。
この映画において「apocalypse」の意味することと「heart of the darkness」に関する考察
①欧米の批評家の何人かが言っている様に、この映画は前半と後半とがゴロッと違う。前半の、ドアーズの「The End」が流れる中、ジャングルから一瞬にしてオレンジの炎が噴き上がるシーン、ワーグナーの「ワルキューレ(戦死者を選ぶ者の意)の騎行」に載って米軍のヘリ戦隊がベトコンの拠点を攻撃するシーンと、戦争映画の絵としては見事なものである。(中身は無いが。) 特に後者はロバート・デュバルの好演もあってアメリカ軍の傲慢さに胸くそ悪くなるが。②一転、後半は、カーツ殺害を命じられたマーティン・シーンがひたすら川を遡りカーツ殺害に成功するまでを描くが全く前半とは別物のような映画となる。マーロン・ブランド扮するカーツが何故あのような行動に出たのか説明する筈の殺される前の台詞の数々の意味がマーロン・ブランドの台詞回しもあってよく分からない。最後の台詞である『The horror ! The horror !』はその最たるものである。「戦争の狂気」という言葉は何の説明にもなっていない。反則ではあるが、この下りを理解するためにこの後半の元ネタであるジョセフ・コンラッドの『闇の奥』も読んでみた。然し、『闇の奥』自体が難解な小説であることもあり、やはりもうひとつ分からない。ただ「horror」という言葉には「fear(恐れ)」という意味以外に「dismay」「disgust」「loathing」という意味もあるから、単に戦争の表面的な怖さだけでなく優秀な軍人であったのに自分の内なる権力欲・支配欲を暴走させてしまった自戒を含んでいたのかも知れない。何となく本人も死にたいと思っていたようだし。ただ『闇の奥』でカーツ大佐にあたるクルツは病気にかかった結果死んだだけで本人は死ぬ気はなかったから、この当たりはコッポラ独自の解釈かも知れない。③「apocalypse」とは神が黙して語らなかったことを預言者が代わりに語り記録したことを意味する。『Apocalypse Now』とは、この映画の場合「神」が誰を指すのかを解釈するのが難解だが、ベトナム戦争が米国始まって以来の負け戦であったこと、大義のない戦争であったこと、その後米国社会を変質させてしまったこと等当時既に指摘されつつあったことではあるが、コッポラなりにそれを記録しておこうという意志があったのであろうか。④しばらく『闇の奥』のクルツ、この映画のカーツの最後の言葉である「horror, horror」について考えていて自分なりに辿り着いた結論。
オリジナル版を超えるコッポラ監督の芸術家としての情念は感じられず…
最近、1979年の153分劇場版と共に、
こちらも観た記憶のあった
2019年ファイナルカット182分版が
改めてTV放映されたので再鑑賞
(2001年の特別完全版は未鑑賞)。
引き続き1979年版と同じ印象で、
戦場においては人間の神経が
こうも破壊されてしまうかを、
莫大な資金を投じたと思われる戦場シーンで
延々と描いていることに改めて驚愕した。
違いはカンボジアのフランス人入植者との
交流エピソードが加わって
反戦イメージが増した位だったろうか、
それ以外は1979年版とほぼ同じ印象だった。
しかし、既に、散々に戦争の狂気を
見せつけられているので、
このファイナルカット版の追加シーンの
必要性は余り感じ取れなかった。
それにしても映画の世界は厳しい。
ここまで力を入れて撮っていたシーンを
当初の上映時には
バッサリとカットしていたのだから。
このシーンの関係のスタッフと
ここだけにしか登場しないキャストの
気持ちを察するには余りあるが、
逆に言うと、その彼らの救済のための
特別完全版だったりファイナルカット版
なのだとしたら、
それはそれで問題がありそうだ。
昨今、ディレクターズカット版や、
ファイナルカット版と称する作品が
多く見受けられるが、
この作品の場合のその是非はどうだろうか。
私としてはほぼワンエピソードを加えただけ
のこの作品には、
興行上の理由と
スタッフ・キャストに対する配慮にしか
想像出来ず、
コッポラ監督の芸術家としての情念は
感じ取れなかった。
多分、未見の特別完全版でも
同じ印象を持つのではないだろうか。
因みに、
やはりファイナルカット版が話題となった
「ブレード・ランナー」については、
私はオリジナル版が好きだ。
何故なら、
そもそもが主人公もレプリカントかも、
との思わせは大きなテーマからは
蛇足にしか思えず、
私がこの作品で好きなのは、
命の限りあるレプリカントが
己の死の直前に、あえて
死に直面させたまだ寿命のある人間を
助ける、正に、原作の
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
の表題通りに
レプリカントが優しい人間に近づいた瞬間を
感じるからだ。
初鑑賞、マーロンブランドはさすが。
超有名作品だが、初鑑賞。何かに似てるなと感じてたら、以前読んだ「闇の奥」。
調べたらコッポラが参考にしたらしい。
どちらも、超エリートが、魔界の狂気に触れ、次第にそこで崇められる存在になっていた
ところは似てる。そして神秘的で刹那的なところも。
映画では結局ベトナム戦争の狂気を描きたかったんだろうが、小説の舞台は、
コンゴの奥地。そこの野蛮さ、魔界的な恐ろしさを描いていたように思う。
映画では、カーツ大佐の優秀さが強調されてたが、なぜ、現地人の長となったかを
もっとクローズアップした方がよかったように思う。
それにしても、歴史に残る大作であることは感じた。再鑑賞して見たいと思う。
カーツとキルゴアの違い
特別完全版より20分短く、バニーガールのエピソードが削られている。
カーツ役のマーロン・ブランドが帰ってしまったため、最後はどうしようもない。
キルゴア(ロバート・デュバル)の異常性が際立っており、戦争は狂気そのもの、というのがよく分かる。
最初から2時間は、こんな面白い映画はない、という感じだが、最後の1時間はちょっと退屈。
美しく暗い瞳。
ファイナルカット。
最凶最強上官ギルゴアのヘリ急襲をIMAXで見る悦び。その後の甘美な緩慢に耐える初の本作劇場体験。
ウィラードとカーツの美しく暗い瞳。
仏農園の件りは台詞過多で退屈。
「1917命をかけた伝令」の何と小粒なことか。
先進国とそれ以外の差があったらしきあの時代。
饅頭、いやカイユース怖い!
立川シネマシティの「極爆サイレンス上映」とやらで何十年ぶりかに再見。映画の解釈や裏話としては諸説あるようだが(原作も難解なようだし)、はっきり言ってカーツ王国の下りはどうでもいい感じ。個人的にはコッポラは第一騎兵師団のヘリコプター強襲シーンを撮りたかっただけじゃないかとすら思えてくる。少なくともあのシーンが無ければこれほどの名作として歴史に残らなかったのは間違いない。ヒトラー御用達のワグナー(オープンリールテープスタートの瞬間音程が変わるなど芸が細かい。こんなの初演では無かったような…)を背景に編隊を組み直すときのゾクゾクする高揚感。遠くからソプラノの声が迫ってくる時の恐怖感。本当にあった話なのかは知らないが、この部分の演出は天才的だと思う。冒頭に不穏なイメージを醸し出していたヘリの影と音がここではっきり恐怖の象徴と化す。プリティーな「空飛ぶタマゴ」カイユースが悪魔の先導役に見えてこの映画以来見るのが怖くなった。爆音上映のおかげでこれからローター音にも過剰反応しそう。ロバート・デュバルのキルゴア中佐はベトナムの狂気の代表みたいに言われるが、正義のために街を破壊しまくるアベンジャーズと同一線上で、何の事はない一般のアメリカ人気質そのもののようにも見える。
そういえばマーロン・ブランドはあの程度の出演でギャラどれくらい取ったのだろうか……
IMAX版上映を見逃したのでドルビーシネマで鑑賞。 ドルビーシネマ...
IMAX版上映を見逃したのでドルビーシネマで鑑賞。
ドルビーシネマの映像美とドルビーアトモスの音響、素晴らしかった!
映画館で全編を観るのは初めてだったけど
これは映画館で観られてよかった。
ワルキューレの騎行とキルゴア中佐のあのシーン、圧倒的だわ!
あれほどの火力の映像は二度と映画には出来ないだろな。
ハリソン・フォードにびっくりしてたら
若きローレンス・フィッシュバーンに更にびっくり
欺瞞
戦争に大義名分なんて存在しない。
どちらかが正しく、どちらかが間違ってるなんて事もない。
サーフィンするために空爆、
はらわた飛び出るまで戦ったら敵兵にも水をやる、
マシンガンぶっ放して死にそうになったら手をさしのべる、
神と崇められたら人を殺した人が、新たな神として崇められる。
どれもこれも人間の愚かさが描かれている気がする。
お尻が痛かった。。。
ようやく通しで観ることができた。 なるほどこういう映画だったのか。
いろんな狂った人が出てきます。ボートに同乗した若い兵隊達も結構イッテると思ったが
・カーボーイハットでサーフィン命の「将軍」
・主人公のウィラード「少尉」
・ラスボスのカーツ「大佐」
これら偉い人たちの狂い様はその比じゃなかったな。
「人を殺すということ」 「いつでも殺されかねないこと」
この極限の状況下では確かに狂わないとやっていけないのであろうことがよく分かる。
「DolbyCinema」で観る。
後半はすっかり慣れてしまったが、前半のヘリの編隊飛行のところはさすがの迫力。度肝を抜かれた。
「プラトーン」「ランボー」などベトナム戦争の悲惨さを描いた後発作品を多々知っているだけに、正直なところ目新しさはなかった。 でも、これらの映画の土台となったのがこの「地獄の黙示録」なんだよな。リアルタイムで観た人はさぞ衝撃であっただろうと思う。
(リアルタイムで観たかった。当時7歳だったけど。。)
あぽかりぷすなう
ドルビーシネマで鑑賞。
音がデカい!映像がきれい!
映画館で見られてよかったですよ
ストーリーはまあ、あれですよねw
キルゴア中佐とかカーツ大佐とか変な人が出てきます
アマプラで79年公開版、特別完全版とどこが違うのか見比べてみようかな
1980年ベストムービー!⭐️✨
この映画のテーマは、"戦争の狂気"…なんでしょうか?…なんでしょうね(笑)
しかし、この作品から直感的に感じるのは、敵を爆撃する"カタルシス"と未知の世界に放り込まれた"恐怖"…そして、"恍惚"です。
ラストへ向けてだんだんと混沌としていく様は、"危険な匂い"がぷんぷんしますね(笑)
名作です。
*梅田ブルク7"ドルビーシネマ"にて鑑賞…これ以上はないというほどの音響とスクリーンで観られて良かったです。もしこれで料金が安く観られるのなら、この映画館にはもっと通いたいんですが、6ポイント鑑賞とか、そういうサービスがほとんど無くて、つい他の劇場へと足を運びがちです(笑)
*大きなスクリーンで楽しみたい作品です。
紛れもない地獄を見た
DolbyCinemaで鑑賞。
恥ずかしながら初めて観た。
いや、もうとにかく圧倒されっぱなし。
戦場でのシーンでは座席がマジで揺れるくらいの大迫力。ヘリコプターの音や銃弾の音。ナパーム弾、ミサイル…残虐兵器の総力戦とも言える狂気で満ち満ちた戦場描写。没入感出るカメラワークと背筋の凍る悲惨なバイオレンス
負傷兵など兵士の描写はやや劣るが現在でもおそらく1番リアルで規模のデカい戦争映画だと思う。これがCG無しというのが信じられない。コッポラやっぱ凄い…製作費いくらなんだ…
「前半満点だが、後半0点」と語った当時の評論家がいたらしい。
確かに前半はリアルでド迫力の戦場を描かれていて完璧。
それに比べ、後半はフィクション感が出てしまい、戦場の描写も控えめ。
だがその代わりにベトナム戦争が如何に愚かで意味の無い戦争なのかが十二分に伝わってくる。
ただの反戦映画とは違い、祖国の存在や戦う意義をリアルタイムで兵士の目線になって考えさせられる。そこまで深く掘り下げるのがコッポラらしい。
あらすじとしての本題となる王国に着いてからは地味で極限状態に陥った人間の心理を描いていく。正直ここは少し雑だな、と感じた。
何故このような王国を作ったのか?という疑問は残るし(多分観客に委ねている)何より主人公の心理的描写に物足りなさを感じた。
しかし、やはり雰囲気がすごい。
ベトナム戦争特有の狂気が現地住民や家、米軍兵士の狂った考え方(サーフィンのくだりはバカバカしすぎる)を繊細かつ大胆に描いていてまさに「地獄の黙示録」としか例えようのない作品
でした。
追記
別のこれまた評論家が「ストーリー性はあるようでないものである」と語ったらしいが共感してしまった。
ストーリーは? 兵器の光跡、ジャングル、川、ヘリ、 ネタバレ
丸の内ピカデリーで。2020年7月。 元米軍の高官がベトナムでカルト宗教の教祖になり、それを殺した大佐が、新たに教祖になる。 残虐なシーンが苦手なので、、、。
ストーリーも共感できない。
戦争の狂気を描きたいなら、下手にスジを作らず、いろんなシーンで、描いて欲しかった。 しかし 撮影には お金が掛かっているのが 判る。ヘリや戦闘機とばすして、爆発させ、、、。
ワーグナーの曲が、有名だが、いまいち 合っていないような、、、。
キューブリックがクラシック使ったら真似した?
米国が、ベトナムに首を突っ込まざるを得なかった事情などが、現代の我々にはピンとこない。
たぶん 当時は のっぴきならない状況だったかと。
ベトナム戦争から何を学んだのか
1945年7月、連合国はポツダム会議において、「インドシナは北緯16度線を境界とし、北は中華民国、南はイギリス軍が駐留。インドシナの独立は認めない」と決定。当時ベトナムには、日本がフランス植民地軍を退けた後に独立を許可したことに始まる、「ベトナム帝国」が存在していました。1945年8月、帝国首相のチャン・チョン・キムはハノイにて「独立を与えた日本は敗れたが、ベトナムは心を一つにして我々の政権を築こう」と演説。欧米による植民地統治の再開を拒絶します。続いて、ベトミン20万人のデモ隊が日本軍が撤退した後の政府機関を次々に占拠し、ハノイクーデターが成功。その後9月2日に、ホー・チ・ミンが独立宣言を発し、ハノイを首都とする「ベトナム民主共和国」を樹立します。
フランス軍とベトミンの全面戦争勃発は1946年12月。第一次インドシナ戦争。ディエンビエンフーでのフランス軍の敗退、ジュネーブ協定による第一次インドシナ戦争の終結、ジエム政府の樹立(ベトナム共和国=南ベトナム)などを経ますが、そのジュネーブ協定に基づく南北統一選挙が実施されなかったことを不満としたホーチミンが、1959年「第十五号決議」なる、事実上の「ゲリラ戦の開始宣言」を出し、1960年12月「南ベトナム解放戦線」が「ジュネーブ協定を無視したジエム政権とその庇護者であるアメリカの打倒」を掲げて宣戦布告。翌1961年1月、35代大統領に就任したジョン・F・ケネディは同年5月から、特殊作戦部隊600人を派遣すると同時に、物量に任せた軍事物資の支援を開始し「南ベトナム解放戦線」を壊滅させる戦争に本格的に介入。泥沼のベトナム戦争が始まります。
日本も歴史に関わっています。フランス植民地軍を武装解除し独立させたのが日本。1946年に中国共産党が開設した士官学校で、ベトミンに戦闘指揮や、戦闘技術、土木を教えたのが旧陸軍の軍人たちで、その数800人弱。北ベトナム軍は中国共産党から支援される武器を使用しますが、その中には日本軍から鹵獲した小銃もあったとのことです。
そもそも、欧州は「植民地政策の復活」が目的で。アメリカは「共産主義への潮流を止める事」を目的に、この戦争を行った訳です、物凄くザックリ言うと。太平洋戦争で、日本軍が欧州の植民地軍を、いとも簡単に退けた様を見たアジア諸国の人々は、日本軍人や元軍人に士官としての教育を受け武器を入手したことで、自ら戦う事を知る。士気も高い。また、ジエム政権時代の反政府勢力への弾圧(80万人が投獄、9万人が処刑。フランス軍が残したギロチンが使われた。)への報復の機運は、ベトナム全土に渦巻いていたでしょう。
一方で、大義らしい大義の無い戦争のために、インドシナくんだりまで派兵された連合国側の士気は最低。これが戦闘を長引かせたと言われています、真っ向マジに。
米軍のダナン上陸は1965年。大統領はジョンソン。有名なソンミ村虐殺が起こります。ホーチミンルート(物資の支援ルート)を断つために、周辺国とも戦闘を開始します(ラオス&カンボジア)。ジャングルが苦戦の原因と、枯葉作戦が実行されました。
1969年1月、ニクソンが大統領に就任。未だ戦争は続いてましたが、「名誉ある撤退」作戦を開始。キッシンジャーが北ベトナムとの和平交渉を開始します。ところが。中国まで訪問した和平交渉が暗礁に乗り上げたニクソンは、講和条件を有利にするため、停止していた北爆を再開。ハイテク兵器も大量投入。結果的に和平交渉は収束に向かい、1973年1月27日にパリ協定が交わされ停戦。ニクソンは1月29日にベトナム戦争の終結を自国民に宣言し、1961年から始めた軍事介入は、終わりを告げました。
※以上はザックリと簡素化してます。面倒な国々の関与・干渉などはバッサリと割愛。
映画はニクソン政権時代、ベトナム戦争の末期。
自分だけは被弾しないと自信を持つキルゴアは、アメリカの象徴。有名なサーファーの波乗りを目の前で見たいと言う理由から、ビーチ沿いの村を襲う。結果、女子供を含む多くの命が失われ、部下も重症を負うが「俺の部下を助けろ!」と叫ぶ。アメリカ至上主義の象徴じゃね。ワグナーのワルキューレをバックにUH-1の編隊が村を襲うシーンや、F-5A Freedom Fighterの爆撃は、実写の迫力に圧倒されます。
ド・ラン橋で闇に向かって機銃を撃ち続ける兵士。指揮官はどこだと尋ねるウィラードに明確な答えが帰ってこない。そもそも兵士の意識はLSDでぶっ飛んでいる。ドーピングで恐怖を覆い戦争している。統制も正気も失った部隊の姿はアメリカへの批判。
ミラーは恐怖から機銃を乱射し女を殺してしまいます。何ものかへの恐怖に理性を失う姿は、ジャングルを枯らし、北爆を再開させたアメリカへの皮肉。
カーツが王国を築いていたのはカンボジア。歩く先々で、狂気としか思えない殺戮が繰り広げられています。結局、それが「世界」なのだと。
リアリティと言う面では「有り得ない」ところが目に付くため、やはり「叙事詩的」と言うしか無いんでしょうが。にしても、公開当時は若かった俺にとっては衝撃的な作品でした。
"Apocalypse" はギリシャ語源のキリスト教における「黙示」で、「神が人に示すこと」。神ってカーツ?本当の神?この映画の世界観で神?カーツが示したことは「お前が生活する世界も狂ってる。この王国と何が違う。今更、何を言うのだ」
ウィラード役はハーベイ・カイテルが演じる予定だったけど、契約に合意できず、それがハリウッドを干された原因になったとか。あれが、17歳の頃のローレンス・フィッシュバーンだったとか。今、知って驚いてます。
ベトナム戦争からアメリカが学んだことは「兵士はキッチリと鍛え上げてから戦地に送り込む事」。いや、そこじゃ無いでしょ、ってのは別の話で。
午前十時の映画祭で鑑賞。
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4/28 ちょっとだけ追記
現地にとどまり自衛団を形成しているフランス支配層が描かれていました。ベトナム戦争末期に、あんなところで生活できるなんて、少なくともベトナムじゃないよね。カンボジアかラオスかなぁ。にしても。インドシナの植民地では、社会主義思想を背景とした独立戦争が全土を覆う中、居座りつづける心理。新しい世界の潮流を受け容れられない、欧州列強の支配者層の姿は、「それがこの戦争を引き起こしたのだ」と言う事を象徴的に描写してるのだと思う。未亡人とのロマンスは蛇足。
で、ミリオタです。
当時のベトナム戦争で使われていたのは、Patrol Boat, River (PBR)。MK.1とMk.2がありますが、全長が40cmしか違わないので、見分けがつきません。ブリッジやコックピットにはセラミック・アーマー(防弾チョッキなどにも使われる減衰材)が装甲されており、ライフルやマシンガンの銃撃程度なら耐えられます。映画の中では機銃はRearに一つだけ取り付けられています。所謂、M2HB。 Browning .50 caliber machine gunです。第二次世界大戦の頃から使われており、戦闘機の機銃にも使用されたりしてます。
.50 caliber は弾丸のサイズ。12.7mm x 99mm。この99mmは薬莢の長さなので、銃弾の全長はフルメタルなら130mmくらいあります。つまり、めちゃくちゃでかくて威力もあるんです。なんせ重機関銃。相対速度が大きければ飛行機の主翼をぶっ飛ばしたりします。連射すれば、建物の壁を打ち砕いたりできます。何が言いたいかと言うと、この弾を直接ヒトが被弾すると、身体には大穴があいて千切れます、多分。
と、無駄に突っ込んでみた。
そんなシーンが見たかった訳じゃないけど。
と言うか、哀しいシーンだった。
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